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【労務】月60時間超の残業が出た月に給与計算で確認すること

2026年10月05日 08:38

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給与計算をしていて、ある社員さんの時間外労働が「60時間を超えている」と分かった。

このとき、真っ先に確認するのは「50%の割増賃金になっているか」ではありません。

もちろん、給与計算としては重要です。しかし、社会保険労務士としてこの数字を見ると、まず気になるのは

別のところです。なぜ、この社員さんは月60時間を超えるまで働いているのか。

ここです。

月60時間を超える時間外労働は、単なる給与計算上の特殊処理ではありません。

長時間労働が発生しているという、会社の労務管理上のサインです。

忙しい月だったから、本人が仕事を抱え込むタイプだから、毎年この時期は仕方がない・・・。

厚生労働省は、月60時間を超える時間外労働について割増率を50%以上としている趣旨を、長時間労働の抑制と

労働者の健康確保という観点から説明しています。

つまり、60時間を超えたら給与計算だけを見るのではなく、会社の労働時間管理そのものを見る。

ここから始める必要があります。

「今月だけ60時間」なのかを見る

まず確認したいのは、その社員の過去数か月の残業時間です。

今月だけ突発的に60時間を超えたのか。

それとも、45時間・52時間・58時間・63時間というように、徐々に増えているのか。

ここで意味が変わります。

1か月だけ突出した数字なのか、それとも長時間労働が常態化し始めているのか。

給与計算を毎月やっている会社なら、本来ここに気付けるはずです。

逆に言えば、給与計算を「支給額を確定するだけの作業」にしていると、このサインを見落とします。

私は給与計算を見るとき、金額だけではなく時間数の動きも見ます。

給与明細を完成させることより、その数字から何が起きているかを見ることの方が重要な場合があります。

月60時間超なら、36協定を横に置く

次に見るのが36協定です。

時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間です。

臨時的な特別の事情があり、特別条項付き36協定を締結している場合でも、時間外労働は年720時間以内、

時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満、複数月平均80時間以内などの上限があります。

また、月45時間を超えて時間外労働をさせることができるのは年6か月までです。

ここで重要なのは、「60時間分の残業代を払ったから問題ない」ではないということです。

割増賃金の支払いと、36協定の管理は別物です。

給与計算は正しい。しかし36協定上は問題がある。これは普通に起こり得ます。

しかも給与担当者が36協定を見ておらず、労務担当者も毎月の残業実績を見ていなければ、誰も異常に気付かない

まま進むことがあります。

私はこの状態をかなり危ないと考えます。

「誰が60時間を超えたか」も見る

もう一つ大事なのが、社員ごとの差です。

例えば社員10人のうち、9人は残業10〜20時間。1人だけ65時間。

この場合、「会社全体として平均すると大したことない」ではありません。

むしろ、なぜその人に仕事が集中しているのかを見る必要があります。担当業務が属人化している、

その人しか分からない仕事がある、管理職が仕事量を把握していない、人員配置が合っていない。

欠員の穴埋めを一人でしている、こうした問題が数字の裏に隠れていることがあります。

月60時間超という数字は、給与計算の問題ではなく、組織運営の問題を映していることがあります。

健康確保の視点を外してはいけない

長時間労働を見るとき、賃金と36協定だけでは足りません。

労働安全衛生法上、一定の要件を満たす長時間労働者については、医師による面接指導など健康確保の

仕組みがあります。労働時間の状況・本人からの申出・疲労の蓄積状況・会社の制度・業種や働き方

などを確認する必要があります。

ここまで見て、初めて給与計算を見る

長時間労働の状況を確認したうえで、給与計算に戻ります。

ここで初めて、月60時間を超える法定時間外労働について、正しく50%以上の割増賃金が計算されているか

を確認します。

中小企業についても2023年4月1日から、1か月60時間を超える時間外労働について50%以上の割増率が適用

されています。ただし、ここにも落とし穴があります。

勤怠システムに表示されている「残業時間」を、そのまま60時間判定に使ってよいとは限りません。

会社の所定労働時間を超えた時間と、法定時間外労働は同じとは限らないからです。

さらに、法定休日労働・深夜労働・変形労働時間制・フレックスタイム制・固定残業代

こうした制度が絡むと、確認するポイントは増えます。

この記事では、あえて具体的な計算方法までは全部書きません。

会社ごとに労働時間制度、賃金規程、給与ソフトの設定が違うからです。

月60時間超が出たときに、私は「給与計算の問題」だけとは考えない

月60時間を超える社員が出た。ここで確認したいのは、割増率だけではありません。

その人の残業時間の推移・他の社員との偏り・36協定・特別条項の適用状況・年間の時間外労働。

休日労働を含めた時間管理・健康確保・勤怠システムの設定・給与ソフトの設定・固定残業代。

就業規則や賃金規程これらは全部つながっています。

だから私は、月60時間超という数字を、単なる給与計算データではなく「会社の労務管理を点検するきっかけ」

として見ます。


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給与計算は「金額を出す仕事」だけではありません

給与計算には、会社の情報がかなり詰まっています。残業時間が増えた、欠勤が増えた、休日出勤が増えた。

特定の社員だけ残業が多い、手当が毎月変動している、有給休暇が取れていない、給与計算を毎月きちんと見ていれば、会社の異変に早く気付けることがあります。

だから私は、給与計算を単なる事務作業として扱うのはもったいないと思っています。

数字を作るだけなら給与ソフトでもできます。

その数字を見て、「何かおかしくないか」と判断するところに、人が関与する意味があります。

秋山社会保険労務士事務所では給与計算セカンドオピニオンを行っています

現在の給与計算担当者を変える必要はありません。

税理士事務所や給与計算会社に委託していても構いません。

そのうえで、現在の給与計算と労働時間管理が本当に合っているのか第三者の視点から確認することができます。

特に、月45時間を超える社員がいる、月60時間超が発生したことがある。固定残業代を採用している。

休日出勤や深夜勤務が多いという会社は、一度点検しておいた方がいいかもしれません。

「うちの60時間超の計算、本当に合っていますか」という相談でも構いません。

しかし、実際に確認すると、問題は60時間超の割増計算ではなく、その前の労働時間管理にあったということも

あります。

秋山社会保険労務士事務所では、給与計算セカンドオピニオン、労務監査、月次顧問を通じて、給与明細の数字

だけではなく、その数字が生まれるまでの労務管理まで確認します。

月60時間を超えた。その数字を見て、「残業代はいくら増える?」だけで終わらせるのか。

それとも、「なぜ60時間を超えたのか。この会社の管理は大丈夫か」まで確認するのか。

給与計算の価値は、そこに出ます。


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