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【労務】社員ごとの「1時間の値段」を並べてみる

2026年10月02日 08:41

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社員ごとの「1時間の値段」を並べてみると、会社の賃金設計の歪みが見えてくる

「Aさんは月給28万円、Bさんは月給25万円だから、Aさんのほうが給料は高い」

給与を月額だけで見ていると、そう見えます。

ところが、社員ごとに「1時間あたりいくら払っているのか」まで計算して横に並べてみると、まったく違う

景色が見えることがあります。

私は給与計算や賃金規程を確認するとき、月給額だけを見ることはあまりありません。

所定労働時間、各種手当、固定残業代、残業単価まで確認して、結局、この社員の1時間はいくらなのかを見ます。

これを社員全員分並べると、会社の賃金制度の歪みがかなり見えてきます。

月給だけ比べても、社員の「1時間の値段」は分からない

たとえば、次の2人がいるとします。

Aさん
月給28万円
月平均所定労働時間170時間

Bさん
月給25万円
月平均所定労働時間150時間

単純に月給だけを見ると、Aさんのほうが3万円高い。

しかし、単純な時間単価に直すと、

Aさん
280,000円 ÷ 170時間 = 約1,647円

Bさん
250,000円 ÷ 150時間 = 約1,667円

となります。

月給はAさんのほうが高いのに、1時間あたりではBさんのほうが高くなります。

もちろん、これ自体が問題というわけではありません。

職務、責任、能力、経験、勤務条件が違えば、時間単価が違うことは当然あります。

問題は、会社がその違いを把握しているかです。意図して差をつけているのか。

それとも、昇給や手当の追加を何年も繰り返した結果、誰も説明できない賃金体系になっているのか。

ここは大きな違いです。

正社員より短時間正社員の時間単価が高くなっていないか

実務で特に確認しておきたいのが、正社員、短時間正社員、パートなど雇用区分が複数ある会社です。

たとえば、

正社員
月給260,000円
月平均所定労働時間170時間
時間単価 約1,529円

短時間正社員
月給220,000円
月平均所定労働時間130時間
時間単価 約1,692円

となっていたとします。

短時間正社員の時間単価のほうが約160円高くなっています。

これも直ちに違法という話ではありません。

しかし、仕事内容も責任もほぼ同じで、会社として「短時間だから月給を少し下げただけ」という認識だったのであれば、一度立ち止まって確認したほうがいいでしょう。

経営者からすると、「月給22万円だから正社員より安い」と思っていたのに、時間単価で見ると逆転している。

こういうことは実際に起こります。私は、月給表を見るだけでは賃金制度を確認したことにならないと考えています。

「基本給」だけを割っても意味がない場合がある

もう一つ注意したいのが手当です。

基本給だけを所定労働時間で割って、うちの社員の時間単価はこれくらいと考えてしまうケースがあります。

しかし、残業代を計算する際の1時間あたりの賃金は、原則として所定労働時間に対して支払われる賃金を基礎に

計算します。

月給制の場合について、「月の所定賃金額 ÷ 1か月の平均所定労働時間数」によって1時間あたりの賃金額を算出する

考えます。

そして、割増賃金の基礎から除外できるものは、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に

支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金など、法令上限定されています。

「○○手当という名前だから除外できる」というものではなく、実際の支給内容で判断されます。

ここを間違えていると、「社員の1時間の値段」を経営上読み違えるだけでなく、残業単価そのものを間違えている可能性まで出てきます。


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社員別の1時間単価を並べると、こんなことが見えてくる

私なら、給与データを確認するときに社員ごとに少なくとも次の項目を並べます。

月給・基本給・各種手当・月平均所定労働時間・通常の時間単価・割増賃金計算の基礎となる時間単価
固定残業代・固定残業時間・実際の残業時間これだけでも、かなりのことが分かります。

たとえば、後から入社した社員の時間単価が既存社員を大きく上回っている。

昇給した社員の残業単価が変わっていない。

同じ仕事をしている社員なのに時間単価に大きな差がある。

短時間勤務者の時間単価が想定以上に高くなっている。

役職手当を付けた結果、残業単価も大きく上昇している。

手当を残業単価から除外しているが、本当に除外できる手当なのか怪しい。

こういったものが横並びにすると見えてきます。

給与明細を社員ごとに1枚ずつ見ていても、なかなか気づきません。

「比較する」ことで初めて見える問題です。

給与制度は、長く運用するほど継ぎはぎになりやすい

中小企業では、最初から精緻な賃金制度を作って給与を決めている会社ばかりではありません。

採用するときに、

「この人は経験者だから少し高めにしよう」

「応募が来ないから月給を2万円上げよう」

「辞められたら困るから手当を付けよう」

「最低賃金が上がったからパートだけ上げよう」

「役職者になったから役職手当を付けよう」

こうして一つずつ対応していきます、それ自体は珍しいことではありません。

ただ、これを5年、10年と続けていくと、なぜこの人の給料はこの金額なのかを説明できなくなることがあります。

さらに月給だけで管理していると、時間単価の逆転や残業単価のズレにも気づきにくくなります。

社員が増えてきた会社ほど、一度全員の「1時間の値段」を横並びにする価値があります。

高い社員を探すためにやるのではない

ここは誤解してほしくありません。

社員ごとの1時間単価を出す目的は、「誰の給料が高すぎるか」を探すことではありません。

見るべきなのは、「その金額になっている理由を会社が説明できるか」です。

仕事内容が違う・責任が違う・経験が違う・資格が違う・成果が違う・勤務条件が違う。

こうした合理的な理由があって賃金差が生じているなら、それは賃金設計です。

逆に、昔からこの金額だから、前任者が決めたから、採用時に何となく決めたから、手当を追加していった結果こう

なったという状態であれば、それは賃金設計というより賃金の積み重ねです。

この違いは、会社が大きくなるほど効いてきます。

給与計算を「振込額を出す作業」で終わらせない

給与計算というと、勤怠を集計して、残業代を計算して、社会保険料や税金を控除して、振込額を出す仕事

だと思われがちです。

もちろん、それも重要です。

しかし、毎月給与データを扱っていると、会社の労務管理の状態が数字になって見えてきます。

社員ごとの時間単価。

残業時間。

手当の付け方。

固定残業代。

昇給。

最低賃金。

雇用区分ごとの賃金差。

これらを横につないで見ると、

「給与計算は合っているけれど、賃金制度がおかしい」

という会社もあります。

逆に、「賃金規程にはきれいなことが書いてあるけれど、実際の給与計算と合っていない」

という会社もあります。

だから、給与計算と就業規則、賃金規程、雇用契約書は別々に見るべきものではありません。

全部つながっています。

一度、社員全員の「1時間の値段」を並べてみてください

経営者や給与担当者の方に、一度やってみてほしいことがあります。

社員一覧を作り、月給・所定労働時間・各種手当・時間単価・残業単価を横に並べてみてください。

そして、「なぜこの金額なのか説明できるか」を一人ずつ確認してみてください。

10人程度の会社でも、意外な数字が出てくることがあります。

給与計算は毎月間違えずにできている。

それでも、給与計算の「土台」が正しいとは限りません。


秋山社会保険労務士事務所では、給与計算そのものの受託だけでなく、現在行われている給与計算や賃金設計について、

残業単価は合っているか・手当の扱いは正しいか・所定労働時間の設定は適切か・雇用区分ごとの時間単価に不自然な

逆転がないか・給与計算と賃金規程・雇用契約書が一致しているかといったところまで確認しています。

「給与ソフトから数字は出ているから大丈夫」ではなく、その数字が、正しいルールから出ているか。

ここまで確認したい会社には、給与計算セカンドオピニオンや労務監査という形で対応しています。

毎月何十万円、何百万円と支払っている人件費です。

まず一度、社員ごとの「1時間の値段」を並べてみてください。

そこには、給与明細を1枚ずつ眺めているだけでは見えなかった会社の課題が出てくるかもしれません。


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