【労務】給与計算から会社の労務リスクを発見できる理由
2026年09月27日 09:11
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秋山社会保険労務士事務所
秋山社会保険労務士事務所の給与計算セカンドオピニオン
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給与計算をするとき、私は「今月の給与額が合っているか」だけを見ているわけではありません。
むしろ気になるのは、「先月と比べて、何が変わったのか」です。
先月まで残業が月10時間程度だった社員が、今月いきなり35時間になっている。
毎月のように「差額調整」という項目が出てくる。同じ部署なのに、一人だけ残業時間が突出している。
欠勤した社員の控除額が、他の社員と比べて妙に大きい。
年次有給休暇を取得しているはずなのに、給与データを見ると欠勤扱いになっている。
こうした数字を見つけたとき、「今月はそういう月だったんですね」で済ませるのか。
「なぜこの数字になったんだろう」と一段掘るのか。
ここで、給与計算が単なる事務作業になるか、労務管理になるかが分かれると思っています。
給与計算表には、会社で起きたことが毎月数字になって出てきます
例えば、ある社員の残業時間が、4月 12時間、5月 11時間、6月 13時間、7月 38時間
となっていたとします。
給与計算だけをするなら、38時間分の残業代を計算すれば終わりです。
ただ、私はこういう数字を見ると少し気になります。仕事量が急に増えたのか。
誰かが退職して、その人に仕事が集中したのか。新しい業務を任されたのか。
単純に繁忙期なのか。それとも、今まで残業として上がってこなかった時間が今月から正しく集計されるように
なったのか。「残業38時間」という数字だけでは分かりません。
でも、38時間になった理由を確認するきっかけにはなります。
これを毎月続けていると、給与計算は会社の変化をかなり早い段階で教えてくれます。
「毎月修正している給与計算」は、計算担当者の問題とは限りません
給与計算をしていると、「先月の手当が間違っていたので今月調整してください」
「この人、先月から昇給していました」「この残業時間を追加してください」
「有休だったので欠勤控除を戻してください」といった修正が出る会社があります。
一度や二度なら、どこの会社でもあると思います。
しかし、これが毎月のように発生しているなら、私は給与計算担当者だけの問題とは考えません。
なぜ給与計算まで正しい情報が届かなかったのか。誰が昇給情報を管理しているのか。
有休取得情報はどこから給与担当者に来るのか。勤怠を締めた後に残業時間が追加されるのはなぜなのか。
つまり、給与計算の修正回数そのものが、社内の労務管理フローの弱さを表していることがあります。
ここは、給与計算ソフトを新しくしても解決しません。
情報の流れそのものを直さない限り、毎月誰かが最後に帳尻を合わせることになります。
同じ30万円でも、中身を見ると全然違います
例えば、AさんとBさんの総支給額が、どちらも30万円だったとします。
Aさんは、
基本給27万円
残業代3万円
Bさんは、
基本給23万円
役職手当2万円
調整手当3万円
残業代2万円
総支給額だけ見れば、どちらも30万円です。
でも給与計算をする側から見ると、Bさんの方が確認したいことが増えます。この「調整手当」は何のための手当なのか。
いつから支給しているのか。いつまで支給するのか。昇給したときにも残すのか。役職が変わったらどうするのか。
誰が支給額を決めているのか。こうしたことが整理されないまま、「前月と同じ金額を入れておいて」で何年も給与計算されているケースがあります。
その状態で担当者が退職すると、誰もその給与の根拠を説明できない。
給与計算を見ていると、こうした「会社の中では普通になっているけれど、外から見ると理由が分からない数字」が見つかることがあります。
給与計算は、いろいろな労務情報が最後に集まる場所です
給与額を出すには、給与だけ見ていても計算できません。
出勤日数が必要です。労働時間が必要です。残業時間が必要です。有休、欠勤、遅刻早退の情報も必要です。
基本給や手当の情報も必要です。入社、退職、休職、育児休業などがあれば、それも給与に影響します。
だから給与計算には、会社の労務情報がかなり集まってきます。
実際、労働基準法第108条では事業場ごとに賃金台帳を作成することが定められており、労働基準法施行規則第54条では、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜労働時間数、基本給や各種手当などを労働者ごとに記載することになっています。つまり給与計算の数字は、単なる振込金額ではありません。
その会社で、その月に誰がどのように働き、どのように賃金を支払ったのかを表す記録でもあります。
だから私は給与計算を見るとき、合計金額だけを見るのではなく、その数字ができるまでの流れを見ます。
勤怠データと給与データを突き合わせると、もっと分かります
例えばタイムカード上では残業が25時間ある。ところが給与データでは18時間になっている。
こういうケースがあったとします。ここで重要なのは、「7時間足りません」と即断することではありません。
タイムカードを押した後に私用で残っていたのかもしれませんし、休憩時間が含まれているのかもしれません。
確認しなければ分かりません。
ただ、なぜ7時間違うのかを説明できる状態にはしておく必要があります。
厚生労働省のガイドラインでも、使用者は労働日ごとの始業・終業時刻を確認・記録し、原則としてタイムカード、ICカード、パソコンの使用時間など客観的な記録を基礎に把握することとされています。また、自己申告の労働時間と客観的記録に著しい乖離がある場合には、実態調査を行い必要な補正をすることが示されています。
だから給与計算のときに、「勤怠データではこうなっているのに、給与ではなぜこうなるのか」という視点を持つことには意味があります。
給与計算で怖いのは「大きなミス」だけではありません
給与を10万円間違えれば、普通は誰かが気付きます。本人も気付きますし、給与担当者も慌てます。
私がむしろ怖いと思うのは、毎月数千円、毎月30分、毎月1時間といった小さなズレが、誰にも気付かれず何年も
続くことです。
1回なら小さな金額でも、人数が増える。期間が延びる。退職者から過去分について確認を求められる。
そうなると話は変わってきます。そして厄介なのは、給与計算を担当している人が、「私は前任者からこの方法で教わりました」と言うケースです。
担当者は間違っていないのです。
教えられた方法で、毎月真面目に計算しています。
問題なのは、その計算方法自体を何年間も誰も点検していないことです。
給与計算は「答え合わせ」だけではなく「異常値探し」に使えます
私は、給与計算を確認するときに前月との差を見ることがあります。
残業時間が急に増えていないか。欠勤控除が増えていないか。
毎月発生していなかった手当が突然付いていないか。逆に、今まで付いていた手当がなくなっていないか。
特定の社員だけ毎月修正が発生していないか。一人だけ社会保険料や控除額の動きがおかしくないか。
こうした変化を見るだけでも、「ちょっと確認した方がいいですね」というものが出てきます。
給与計算は毎月あります。ということは、会社の労務管理を毎月点検できる材料も、毎月出てきているということです。
これを単に振込額を作るためだけに使うのは、私はもったいないと思います。
給与計算担当者一人に背負わせないでください
特に気になるのは、「給与のことは○○さんしか分からない」という会社です。
その方が休んだら給与計算が止まる。その方が退職したら計算方法が分からなくなる。
社長に聞いても、「給与の細かいことは任せているから分からない」という状態です。
給与計算担当者が優秀だから回っている会社ほど、逆に属人化していることがあります。
その方が毎月、「あれ、この計算おかしいな」「この手当、何だったかな」「また勤怠が合わないな」
と思いながら、一人で調整しているかもしれません。その状態なら、担当者を責めるのではなく、
会社として給与計算の仕組みを一度外から確認した方がいい。私はそう考えています。
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自社で給与計算を続ける会社でも、第三者チェックには意味があります
弊所では、給与計算そのものを受託するだけではなく、現在の給与計算方法を第三者の立場から確認する給与計算セカンドオピニオンにも対応しています。
給与計算を自社で続けたい会社まで、無理にアウトソーシングする必要はありません。
社内で計算できているのであれば、それは会社の強みでもあります。
ただし、この計算方法を10年間変えていない、前任者からそのまま引き継いでいる、毎月どこかで差額調整が出る。
担当者しか給与計算の中身を分かっていないという状態なら、一度外から確認する意味はあると思います。
給与計算そのものに問題がなければ、それでいいのです。
もし給与計算の外側に問題があれば、そこで初めて対策を考えます。
給与計算の問題なのか。会社全体の問題なのか。
例えば、残業時間の集計方法だけに問題があれば、給与計算セカンドオピニオンで確認できるかもしれません。
一方で、
勤怠管理、雇用契約、給与計算方法、社内ルールまで複数の箇所にズレがあるなら、労務監査で全体を確認した方が早い場合があります。
そして、一度直して終わりではなく、今後も毎月数字を確認してほしいという会社様であれば、月次顧問という方法があります。全部の会社に同じサービスが必要なわけではありません。
まず確認したいのは、御社の給与計算が、単に数字を作っている状態なのか。それとも数字を使って会社の状態まで確認できているのか。賃金台帳を一年分並べてみてください。前月と数字が大きく変わった社員はいませんか。
毎月修正されている項目はありませんか。説明できない手当はありませんか。
一人だけ残業時間が増え続けていませんか。「なんでこの数字になっているんだろう」
というものが一つでもあれば、そこが確認の入口です。
給与計算には、会社の労務管理の結果が毎月数字になって現れます。
給与を払うためだけの資料にするのか。
会社の異変を早く見つける資料として使うのか。
同じ給与計算でも、そこにはかなり大きな差があると考えています。
現在の給与計算方法に少しでも気になる点がある場合は、給与計算セカンドオピニオン、労務監査、月次顧問についてご相談ください。
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