【労務】月給を時給換算する方法
2026年09月25日 08:25
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正社員は月給制だから、時給はあまり気にしたことがない、こういう会社は、実際かなりあると思います。
パートさんの時給は最低賃金が上がるたびに確認する。一方で正社員については、月給20万円払っているから
大丈夫だろう。毎年昇給もしているし問題ないだろうと、そのままになっている。
でも、私は給与計算を見るとき、月給者についても一度時間単価に直して確認することがあります。
実際にやってみると、思っていたより時間単価が低い、最低賃金までほとんど余裕がない、役職者より入社した
ばかりの社員の方が時間単価が高い、残業単価の計算に使っている時間数がおかしいということが出てくるからです。
月給制だから時給換算は関係ない、ではありません。むしろ給与計算や賃金設計を点検するなら、かなり基本的な確認
事項です。
月給を時給換算するときは、何時間で割るのか
最低賃金との比較をする場合、月給制の賃金は時間額に換算します。根拠は、最低賃金法施行規則第2条第1項
第3号です。この条文では、月によって定められた賃金について、月給額を月における所定労働時間数で割る
こととされており、月によって所定労働時間数が違う場合には、1年間における1月平均所定労働時間数で割ることと
されています。
厚生労働省も、月給制の場合の最低賃金との比較方法を、月給÷1か月平均所定労働時間≧最低賃金額と案内しています。
つまり、「今月は忙しくて200時間働いたから20万円÷200時間」という計算ではありません。
実際に何時間働いたかではなく、会社で定めている所定労働時間を基準に確認します。
例えば年間休日120日、1日8時間なら?
分かりやすく計算してみます。年間休日が120日なら、年間所定労働日数は245日です。
1日の所定労働時間が8時間なら、245日×8時間=1,960時間これを12か月で割ると、1,960時間÷12か月=
約163.33時間。1か月平均所定労働時間は約163.33時間です。
例えば月給20万円であれば、200,000円÷163.33時間=約1,224円となります。
こうして初めて、この社員の月給を時間額にするといくらなのかが見えてきます。
「うちは173時間で計算しています」その173時間、どこから出ましたか?
実務で私が気になるのはこちらです。給与ソフトを見ると、月平均所定労働時間 173時間と入っている。
そこで、この173時間はどうやって計算しましたか?と聞くと、「昔からそうなっています」
「前の担当者が設定しました」「給与ソフト会社に最初に入れてもらいました」ということがあります。
173時間という数字自体が直ちに間違いという話ではありません。会社によって年間休日も1日の所定労働時間も
違うからです。問題は、その数字の根拠を誰も説明できないことです。
会社カレンダーは変わっていないか。年間休日は増えていないか。就業規則の所定労働時間と合っているか。
雇用契約書と合っているか。給与ソフトの設定を最後に見直したのはいつなのか。
ここまで確認しないと、本当にその時間数でいいのか分かりません。
給与計算というのは怖いもので、一度設定してしまえば翌月も翌々月も同じ計算をしてくれます。
正しい設定なら便利です。でも、設定が間違っていれば、間違った計算を毎月きっちり続けてくれます。
私は給与計算を見るとき、この部分をかなり気にします。
総支給額をそのまま割ればいいわけでもありません
ここもよくある勘違いです。
例えば給与明細が、
基本給 180,000円
職務手当 20,000円
通勤手当 10,000円
時間外手当 20,000円
総支給額 230,000円
だったとします。
「23万円払っているから最低賃金は大丈夫」とは判断できません。最低賃金法第4条第3項や最低賃金法施行規則
第1条などにより、最低賃金との比較から除外される賃金があります。
厚生労働省が示している主なものは、臨時に支払われる賃金賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
時間外割増賃金・休日割増賃金・深夜割増賃金の割増部分・精皆勤手当・通勤手当・家族手当です。
ですから、給与明細の一番下にある「総支給額」を見て、最低賃金以上だなと判断するのは危険です。
何を入れて、何を外して計算するのか。そこまで確認する必要があります。
最低賃金が上がったとき、パートだけ見ていませんか?
最低賃金が改定されると、パートさんの時給を上げないとという話になります。これはもちろん必要です。
ただ、私はそのとき正社員の月給も一緒に確認した方がいいと思っています。
特に、月給が比較的低い社員がいる会社、年間所定労働時間が長い会社、基本給を低めにして手当を多くしている会社
長年、給与体系を見直していない会社は要注意です。正社員であっても最低賃金法は関係します。
「正社員だから月給で払っている。だから最低賃金は大丈夫」ではありません。
月給を時間額に換算して確認して初めて判断できます。
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しかも、この時間数は残業代にも関係します
話は最低賃金だけでは終わりません。月給者の残業代を計算する場合も、1時間当たりの賃金額を出す必要があります。
こちらの根拠は、労働基準法第37条及び労働基準法施行規則第19条です。
労働基準法施行規則第19条第1項第4号では、月給制の賃金について、月によって定められた賃金÷月における所定労働時間数、月によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1月平均所定労働時間数によって1時間当たりの賃金額を計算することとされています。ここで最初の話に戻ります。
給与ソフトに登録されている「月平均所定労働時間」が間違っていたらどうなるでしょうか。
残業単価まで変わってきます。例えば本来160時間で割るべきところを、何となく173時間で割っていた。
そうすると1時間当たりの賃金額は低くなります。残業するたび、その差が積み上がります。
1人だけなら小さな差かもしれません。でも10人、30人、100人。さらにそれを何年も続けたらどうでしょう。
給与計算の間違いは、1回で終わらないことがあります。毎月同じ間違いを繰り返す。
ここが怖いところです。
手当の扱いも、最低賃金と残業単価では同じではありません
もう一つややこしいのが手当です。
例えば、職務手当、役職手当、住宅手当、家族手当、通勤手当、資格手当など、会社によっていろいろな手当があります。「手当だから全部除外」ではありません。逆に、「毎月払っているから全部入れる」でもありません。
最低賃金を確認するときの扱い。残業単価を計算するときの扱い。社会保険の報酬を見るときの扱い。
同じ手当でも確認する制度によって考え方が変わります。
特に残業単価については、労働基準法第37条第5項及び労働基準法施行規則第21条で、算定基礎から除外できる賃金が
定められています。ここを、「昔からこの手当は残業単価に入れていません」で済ませている会社は、一度確認した方がいいと思います。手当の名前だけ見て判断できないケースもあります。
一度、全社員の時間単価を並べてみると面白いです
私は会社の賃金を見るなら、一度全社員を時間単価にして並べてみるのもいいと思っています。
正社員・パート・契約社員・主任・係長・管理職・新人・全部です。
すると、思わぬことが見えてくる場合があります。
例えば、10年勤務している主任と入社1年目の社員の時間単価がほとんど変わらない。
最低賃金の上昇に合わせて新人だけ給与を引き上げ続けた結果、先輩社員との差がなくなっている。
責任の重い役職者より、新しく採用した社員の方が時間単価が高い。
もちろん、それ自体が違法だという話ではありません。
会社が意図してそういう賃金設計をしているなら、それは会社の判断です。
私が気になるのは、会社が知らない間にそうなっているケースです。
採用するたびに初任給を上げる。最低賃金が上がるたびに下の給与だけ上げる。
既存社員は毎年3,000円だけ昇給する。これを何年も続ければ、賃金バランスはかなり変わってきます。
給与計算の数字を少し違う角度から見るだけで、会社の賃金制度そのものが見えてくることがあります。
給与計算は「振込額が合っていたら終わり」ではありません
給与計算というと、勤怠を集計して、残業時間を出して、社会保険料を引いて、所得税を引いて、
銀行振込データを作る。ここまでできれば終わりだと思われがちです。
もちろん毎月の給与を正しく支払うことは大切です。ただ、社労士として給与計算を見るなら、私はそこだけでは足りないと思っています。この残業単価は合っているのか。最低賃金を下回っていないか。月平均所定労働時間は合っているか。給与ソフトの設定は就業規則と一致しているか。支給している手当は賃金規程に書いてあるか。
雇用契約書の内容と実際の給与が合っているか。勤怠の集計方法に問題はないか。ここまで見て、初めて給与計算が会社の労務管理につながります。
「自社で給与計算しているから社労士は必要ない」とは限りません
弊所では、給与計算をすべて外注していただく方法だけでなく、給与計算セカンドオピニオンという形での確認にも対応しています。今の担当者さんが給与計算を続ける。今使っている給与ソフトもそのまま使う。
ただ一度、月平均所定労働時間、残業単価、最低賃金、手当の取扱い、勤怠集計方法、社会保険料、雇用契約書
就業規則・賃金規程などを横断して確認する。こういう使い方です。給与計算を全部外注する必要はありません。
むしろ、「自社で給与計算はできている。でも本当にこれで合っているのか、一度第三者に見てほしい」という会社には相性がいいと思います。
毎月相談できる体制を作りたい会社には月次顧問
給与の問題は、年に1回だけ起きるわけではありません。
昇給する。新しい手当を作る。社員を採用する。固定残業代を見直す。最低賃金が変わる。勤務時間を変更する。
育児短時間勤務の社員が出る。こういうことは年間を通して起きます。
そのたびに、「この給与設定で大丈夫ですか?」「残業単価は変わりますか?」「雇用契約書も直した方がいいですか?」と相談できるのが月次顧問です。問題が起きてから調べるのではなく、給与を変更する前に確認する。
私はその方が会社の時間もお金も使わずに済むケースが多いと思っています。
給与だけでなく会社全体を確認したいなら労務監査
給与計算を見ていると、問題が給与計算だけではないこともあります。勤怠を30分単位で処理している。
手当を支給しているのに賃金規程に書いていない。雇用契約書と実際の勤務時間が違う。
給与ソフトと就業規則の設定が違う。36協定の内容と実際の残業時間が合っていない。
こうなってくると、給与明細だけ直しても十分ではありません。
その場合は、勤怠、給与、雇用契約書、就業規則、賃金規程までまとめて確認する労務監査
という方法があります。会社の労務管理は、一つ一つの書類が別々に存在しているわけではありません。
全部つながっています。
月給を時給換算するだけで、意外と会社の問題が見えてきます
月給を時給に直す。やること自体は難しくありません。
でも大事なのは、その計算結果です。「思っていたより最低賃金に近いな」
「残業単価の計算、これで合っているのか?」「なぜ給与ソフトに173時間と入っているんだ?」
「この手当、残業単価に入れなくて本当にいいのか?」「主任より新人の時間単価の方が高くなっているぞ」
一つでも気になることが出てきたら、給与計算だけの問題ではないかもしれません。
給与計算には、会社の労働時間、賃金制度、就業規則、雇用契約が全部数字になって出てきます。
だからこそ私は、給与計算を単なる事務作業ではなく、労務管理を確認する材料として見ています。
毎月ちゃんと給与が振り込めている。それだけで「うちの給与計算は大丈夫」と判断する前に、一度月給を時間単価に
直してみてください。そこから、思わぬ問題が見つかることがあります。
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