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【労務】退職者からの理不尽な要求、会社はどこまで応じる必要がありますか?

2026年09月05日 09:22

従業員が退職した後、会社との関係が完全に終わるとは限りません。離職票について問い合わせが来る。
源泉徴収票を求められる。退職証明書を求められる。過去の給与について質問される。

こうしたものは珍しい話ではありません。

一方で、退職者からの要求がだんだんエスカレートし、「そこまで会社が対応しなければならないのですか?」

と経営者や担当者が困ってしまうケースもあります。

会社が大切にしなければならないのは、退職者から言われたことを全部断ることでも、全部受け入れることでも

ありません。法律上対応する必要があるものは適正に対応し、根拠のない要求や事実と異なる処理を求められた

場合には、毅然と線を引くことです。

「傷病手当金を受けていたことにしてほしい」と言われたら?

例えば退職後、「退職後も傷病手当金を受けたいので、在職中から傷病手当金を受けていたことにしてください」

「実際には出勤していたけれど、休んでいたことにして証明してください」「給与をもらっていたけれど、もらって

いなかったことにしてください」など、実際の勤務状況や賃金支払いと異なる内容の事業主証明を求められたとし

たらどうでしょうか。当然、会社が事実と異なる証明をすることはできません。

傷病手当金の申請では、事業主が勤務状況や賃金支払い状況などを証明します。会社は、実際の勤怠・賃金台帳等に

基づいて事実を記載する必要があります。

協会けんぽも、傷病手当金について事業主による給与支払いの有無などの証明が必要であることを案内しています。

ただし、ここは注意が必要です。「在職中に実際には傷病手当金を受給していなかった」=退職後の継続給付が絶対に

受けられない、という意味ではありません。

資格喪失時に、実際に傷病手当金を受けている場合だけでなく、受けられる条件を満たしていた場合も継続給付の

対象になり得ます。また、傷病手当金の請求権は原則として各支給対象日の翌日から2年で時効になります。

ですから、会社がするべきことは、退職者の言うとおりに書類を作ることではなく、当時の勤怠・給与・休職状況を

確認して、事実どおりに証明することです。正当な申請には協力する。

しかし、「受けられるように事実を変えてください」という要求には応じない。この線引きが重要です。

7年前、10年前の未払い賃金を突然請求されたら?

退職者から、「昔の残業代を全部払ってください」と突然請求されることもあります。

現在、2020年4月1日以降に支払期日が到来する賃金について、賃金請求権の消滅時効は法律上5年に延長されつつ、

当分の間は3年とされています。残業代などの割増賃金も対象です。ここでも、「退職者から請求されたから全部払わ

なければならない」と考える必要はありません。

反対に、「3年以上前だから全部無視すればいい」と即断するのも危険です。

どの賃金の支払日なのか。本当に時効が完成しているのか。時効の完成猶予や更新に関係する事情がないか。

会社として時効を援用するのか。こうした点を確認したうえで判断する必要があります。

つまり、要求された金額ではなく、法的根拠と客観的な記録を見るということです。

退職から何年も経って「退職証明書を出してください」と言われたら?

退職者から求められる書類には、法律上会社に交付義務があるものもあります。

その一つが労働基準法第22条の退職時の証明です。しかし、いつまでも無期限に請求権が残るわけではありません。

厚生労働省は、退職時の証明の請求権について、退職時から2年の時効と説明しています。退職から2年を経過した

後の請求については、法律上当然に交付を受けられるとは限りません。

もちろん、会社が任意に証明書を作成することまで禁止されているわけではありません。

問題は、「要求された=法律上必ず会社がやらなければならない」ではないということです。

何年前に退職した従業員なのか。何の証明を求めているのか。会社に法的義務があるのか。

記録は残っているのか。まず確認してから対応するべきです。

「私が納得するまで説明してください」にいつまで付き合いますか?

もっと判断が難しいのが、このタイプです。

会社が一度回答した。また質問が来た。再度回答した。今度は違う担当者から説明してほしいと言われた。

さらに、「社長本人から謝罪してください」「私が納得できる回答になるまで対応してください」

「当時の上司をどう処分したか教えてください」「今日中に回答しなければ労基署やSNSに公表します」

と要求がエスカレートする。会社が正当な請求について必要な説明をすることと、相手が納得するまで無期限に

対応を続けることは別問題です。社長や担当者が通常業務を止めて、何時間、何日も退職者対応を続ける。

これは会社にとって立派な経営上の負担です。

重要なのは「正当な要求」と「過剰な要求」を分けることです

ここを間違えてはいけません。未払い賃金が本当にある。社会保険の手続きに誤りがある。

必要な証明書を交付していない。傷病手当金について正当な事業主証明を求められている。

こうしたものまで、「退職者がうるさい」「理不尽な要求だ」と片付けることはできません。

会社に問題があるなら、会社側が是正する必要があります。

一方で、事実と違う証明を求める。時効等により法的義務がない事項を当然の権利のように強要する。
同じ質問や要求を執拗に繰り返す。暴言や威圧的な言動を行う。担当者を長時間拘束する。

こうした要求についてまで、会社が際限なく付き合う必要があるとは限りません。

会社が持つべき姿勢は、「正当な請求には誠実に対応する。しかし、過剰な要求には毅然と対応する」です。

退職者対応にも、カスハラ対策の考え方が使えます

ここで会社に考えていただきたいのが、カスタマーハラスメント対策です。

2026年10月1日から、カスタマーハラスメントを防止するために必要な措置を講じることが事業主の義務になります。

会社には、方針の明確化、相談窓口の整備、事実確認、従業員を一人で対応させない体制などが求められます。

もちろん、元従業員からの要求だから自動的に法律上の「カスタマーハラスメント」に該当するという単純な話

ではありません。しかし、過剰な要求を一人の担当者に抱え込ませない。会社として窓口を一本化する。
対応内容を記録する。どこまで対応するか基準を決める。暴言や威迫などがあれば毅然と対応する。

という考え方は、退職者からの執拗・過剰な要求への対応にも非常に参考になります。

厚生労働省も、カスハラについて、顧客等からの苦情すべてが該当するわけではなく、正当な申入れと社会通念上

許容される範囲を超える言動を区別する考え方を示しています。

まさに退職者対応でも同じです。正当な請求と、理不尽な要求を一緒にしないこと。これが大切です。

退職してから慌てる会社には、平時の労務管理に穴があることも

退職者から要求が来るたびに、「雇用契約書どこやった?」「この残業代の計算どうなってる?」

「当時の勤怠残ってる?」「誰が社会保険の手続きした?」「何でこの金額を控除してるの?」

となるのであれば、退職者以前に会社の労務管理そのものを見直した方がいい状態かもしれません。

書類と記録が適正なら、「当社ではこの契約内容に基づいて、この勤怠記録をもとに、この方法で給与計算しました」

と説明できます。

逆に記録がなければ、退職者から何か言われるたびに会社が右往左往することになります。

理不尽な退職者対応に振り回されないための「労務健康診断」

秋山社会保険労務士事務所では、会社の労務管理状況を確認する労務健康診断を行っています。

雇用契約書、就業規則、労働時間、年次有給休暇、社会保険手続、退職時の対応などを確認し、

「退職者から指摘されたとき、会社としてきちんと説明できる状態になっているか」

という視点から労務リスクを確認します。

トラブルになってから過去の書類を探すのではなく、平時に穴を見つけて修正しておく。

これも立派な企業防衛です。

未払い賃金を請求される前に「給与計算セカンドオピニオン」

退職後のトラブルで特に問題になりやすいのが給与です。

残業代・深夜割増・休日割増・固定残業代・欠勤控除・最低賃金・社会保険料。

「何年もこの計算方法だから大丈夫」とは限りません。

間違った給与計算を3年間続ければ、3年間同じ間違いを積み上げている可能性があります。


秋山社会保険労務士事務所では、現在の給与計算方法に問題がないかを別の視点から確認する給与計算セカンド

オピニオンにも対応しています。退職者から未払い賃金を請求されて初めて計算方法を確認するのではなく、

何も起きていない今のうちに確認しておく。これも企業防衛です。

カスハラ対策・退職者対応のルールも整備しておきませんか?

これから企業には、カスタマーハラスメントへの対応体制整備も求められます。

その機会に、「誰が窓口になるのか」「どのような要求まで対応するのか」「担当者一人で抱え込ませない仕組みに

なっているか」「どの段階で社労士や弁護士などの専門家につなぐのか」といった対応ルールも整理しておくことを

おすすめします。法律上必要なことにはきちんと対応する。
会社に誤りがあれば是正する。しかし、事実と異なる証明や、過剰・執拗な要求にまで振り回されない。

この線引きができる会社にしておくことが大切です。

退職者から理不尽な要求を受けてから慌てるのではなく、問題が起きる前に会社を守る仕組みを作っておきませんか。

労務健康診断、給与計算セカンドオピニオン、就業規則・カスタマーハラスメント対策の整備については、秋山社会

保険労務士事務所までご相談ください。



対応地域:全国対応

主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府

対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問

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