【労務】従業員から「社会保険に入りたくない。加入させるなら辞めます」と言われたときの対処法
2026年08月31日 12:34
「社会保険の加入要件を満たしていることは分かっています。でも、本人が加入を嫌がるんです」
「社会保険に入れるなら辞めると言われています」「人手不足なので、辞められると困ります。
だから今も未加入のままです」こうした相談を受けることがあります。
会社として、今いる従業員に辞められると困る。その気持ちは理解できます。
しかし、だからといって、法律上加入が必要な従業員を本人の希望に合わせて未加入のままにして
よいわけではありません。
私はむしろ、ここで会社が折れてしまうことの方が、長期的には大きな問題になると考えています。
社会保険は「本人が嫌なら入らなくてよい」制度ではありません
社会保険の加入要件を満たしている場合、本人の希望だけで加入・未加入を自由に選べるものではありません。
「手取りが減るから入りたくない」「配偶者の扶養から外れたくない」「自分は今のままでいい」
本人には本人なりの事情があるかもしれません。しかし、会社には会社として守らなければならない法律が
あります。会社が、「本人も嫌がっているし、会社もその方が助かるから」と未加入を認めてしまえば、会社
自身がリスクを抱えることになります。
「辞められたら困る」が会社の判断基準になっていませんか?
ここが私は一番怖いところだと思っています。
社会保険について、「辞めると言われたから本人の言うとおりにした」という判断を一度してしまう。
すると今後も、「注意したら辞めると言われた」「会社のルールには従いたくないと言われた」
「この仕事はしたくないと言われた」「自分だけ特別扱いしてほしいと言われた」
そんな場面で、会社が従業員の顔色をうかがうようになってしまいます。
会社のルールより、「この人に辞められたら困る」が優先されるようになる。
そうなると、会社としての統制はどんどん弱くなります。
法律上必要なことさえ受け入れられない人に、会社が合わせ続ける必要はありません
社会保険への加入は、会社が気分で作ったルールではありません。法律に基づいて会社が対応しなければ
ならないものです。そのことをきちんと説明したにもかかわらず、「それでも入りたくない」
「加入させるなら辞める」と言われたのであれば、会社が法律を曲げてまで引き留める必要はないと私は考えます。
むしろ、会社が法律に従った当然の対応をしようとしているのに、それを受け入れられないのであれば、
その条件ではこの会社で働けない、と本人が判断することも一つの結果です。
会社として必要な手続きをした結果、本人が自ら退職を選ぶのであれば、無理に引き留める必要はありません。
大切なのは、「辞められると困るから会社が違法な状態を続ける」という関係にしないことです。
法令上必要なことを、自分の手取りや都合を理由に拒み、会社にも違法状態を続けさせようとする人材を、
辞められたら困るからと特別扱いする必要はないと考えます。
会社のルールを守る人が馬鹿を見る職場にしてはいけません
もう一つ考えてほしいことがあります。社会保険にきちんと加入している従業員。
会社のルールを守って働いている従業員。必要な手続きを受け入れ、真面目に勤務している従業員。
そうした人たちから見て、「嫌だと言った人だけ社会保険に入らなくていい」という職場はどう見えるでしょうか。
おそらく、「言った者勝ちなのか」と思うはずです。
真面目にルールを守っている人ほど、不公平感を持ちます。
そして、こうした小さな不公平の積み重ねが、職場の不満や離職につながります。
会社が本当に守らなければならないのは、一人のわがままではありません。
きちんと働いている従業員が、安心して働ける職場のルールです。
「法律を守らない人に合わせる会社」には、同じような人が残ります
人手不足だから、誰でもいいから残ってほしい。その気持ちが強くなると、会社は人を選ばなくなります。
そして、「嫌だと言えば会社が折れる」「辞めると言えば要求が通る」という状態を作ってしまいます。
そうすると、会社のルールをきちんと守る人よりも、自分の都合を会社より優先する人の方が居心地の
よい職場になっていきます。逆に、真面目に働く人ほど、「この会社はおかしい」と感じて辞めていく。
するとさらに人が足りなくなり、「今いる人に辞められたらもっと困る」となって、会社はさらに従業員に
強く言えなくなる。これでは完全な悪循環です。人がいないからルールを曲げる。
ルールを曲げるから、良い人材が定着しない。良い人材が定着しないから、さらに人手不足になる。
この状態で会社が成長するのは難しいでしょう。
社会保険の未加入には金銭的なリスクもあります
もちろん、組織づくりの問題だけではありません。本来社会保険に加入すべき人を未加入のままにしていれば、
後から資格取得を遡って処理しなければならなくなる場合があります。
そうなれば、過去分の社会保険料がまとまって発生する可能性があります。
一人なら何とか払える金額でも、同じ状態の従業員が3人、5人、10人といれば、会社にとって大きな負担に
なります。
さらに本人負担分をどうするのか。退職者がいたらどうするのか。従業員に説明したらトラブルにならないか。
単なる資格取得届一枚の話では済まなくなります。だからこそ、「本人が嫌がったから」という理由で問題を
先送りしないことが重要です。
人手不足の会社ほど、守るべき線を明確にする
人手不足だからルールを緩める。私は逆だと思います。人手不足の会社ほど、「ここだけは会社として必ず守る」
という線を明確にする必要があります。社会保険・労働時間・給与・休暇・服務規律。
会社が守るべきものを守り、そのうえで働きやすい職場を作る。
その方が、長い目で見れば良い人材が残ります。
目の前の一人を引き留めるために会社が法律まで曲げることが、本当に会社のためなのか。
経営者には、一度考えていただきたいと思います。
「社会保険に加入させたら辞める」と言われていませんか?
「本人が嫌がるので社会保険に入れていない」「加入させると辞めると言われている」
「昔からパートは加入させていない」「加入対象かもしれないが、よく分からない」
こうした状態がある会社は、問題が大きくなる前に一度確認してみてください。
秋山社会保険労務士事務所では、社会保険の加入状況だけでなく、雇用契約書、給与計算、労働時間、年次有給
休暇など、会社の労務管理全体を確認する労務健康診断を行っています。
会社が法律を守ることと、従業員を大切にすることは矛盾しません。
むしろ、守るべきルールを守る会社だからこそ、真面目に働く人が安心して長く働ける。
「辞められたら困るから」と違法な状態を放置するのではなく、会社として必要なことをきちんと行う。
その姿勢が、結果として会社を強くしていくのではないでしょうか。
対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問
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