【労務】専門業務型裁量労働制、本当に必要ですか? タイムカードを見ると毎日9時~18時ですが…
2026年09月01日 16:00
専門業務型裁量労働制を導入している会社の勤怠を確認すると、毎日ほぼ9時出勤、18時退勤。
そんなケースがあります。
もちろん、タイムカードが毎日9時~18時だからというだけで、直ちに専門業務型裁量労働制が
認められないという話ではありません。
本人が自分で時間配分を決めた結果、たまたま同じような時間帯に働いていることもあるでしょう。
しかし、そこで一度考えていただきたいことがあります。
その会社、本当に専門業務型裁量労働制にする必要がありますか?
専門業務型裁量労働制は「専門職だから使う制度」ではありません
専門業務型裁量労働制は、対象となる専門的な業務について、業務遂行の手段や時間配分などを大幅に
労働者本人の裁量に委ねることを前提とした制度です。
厚生労働省も、「時間配分の決定」には始業・終業時刻の決定が含まれ、使用者が始業または終業時刻の
どちらか一方でも具体的に指示する業務は対象にならないとしています。
つまり、「9時までには必ず出勤してください」「18時までは勤務してください」
「9時を過ぎれば遅刻です」「18時より前に帰るなら上司の許可が必要です」という運用をしているので
あれば、本当に時間配分を本人の裁量に委ねているのかを確認する必要があります。
タイムカードが毎日9時~18時なら、「なぜそうなっているのか」を見てください
大切なのは、タイムカードの数字そのものではありません。
本人が自由に始業・終業時刻を決めた結果として9時~18時になっているのか。
それとも会社が事実上、「9時から18時で働いてください」と管理しているのか。
ここは全く違います。
さらに、始業・終業時刻を直接指定していなくても、過大な業務量や無理な納期設定によって、本人が時間配分を
自由に決められない状態になっている場合も問題になります。
厚生労働省も、業務量が過大であったり、期限設定が不適切だったりすることで、時間配分についての裁量が
事実上失われることがあると注意を促しています。
そもそも専門業務型裁量労働制にする必要がありますか?
ここが一番考えていただきたいところです。
専門業務型裁量労働制の対象となる仕事だからといって、必ずこの制度を使わなければならないわけでは
ありません。
普通の労働時間制度で働いても何の問題もありません。
毎日ほぼ9時に出勤する。18時頃に退勤する。
会社としても、その時間帯に勤務してもらいたい。会議の時間も決まっている。
仕事の進め方についても、上司からある程度指示をしている。
そこまで通常の勤務に近いのであれば、「なぜ専門業務型裁量労働制を使っているのか?」
を一度考えてみてもよいのではないでしょうか。
昔、「専門職だから裁量労働制にしておこう」「この職種なら裁量労働制が使える」
という理由で導入して、そのまま何年も制度だけ残っている会社もあります。
しかし、会社の働き方は変わります。制度を導入した当時と、現在の勤務実態が同じとは限りません。
普通に労働時間を管理した方が、給与計算も分かりやすくありませんか?
専門業務型裁量労働制だから高度な労務管理というわけではありません。
実態が通常勤務に近いのであれば、実際の始業・終業時刻を把握して、実労働時間をもとに給与計算する。
その方が、会社にとっても従業員にとっても分かりやすいケースがあります。
通常の労働時間制度であれば、何時から働いたのか。何時まで働いたのか。
何時間が所定労働時間なのか。何時間が時間外労働なのか。その時間に対していくら賃金を支払ったのか。
という関係が明確になります。勤怠記録と給与計算を一直線につなげやすい。
これは給与計算を正確に行ううえでも大きなメリットです。
制度を複雑にすると、労務トラブルの種が増えることもあります
専門業務型裁量労働制を導入していれば、実際の労働時間にかかわらず、原則として労使協定で定めた時間を
労働したものとみなします。
しかし、その前提となる制度要件を満たしていなければ、「そもそも裁量労働制として扱える働き方だったのか」
という問題が出てきます。
後になって、「会社から始業時刻を指定されていた」「仕事量が多すぎて裁量なんてなかった」
「実際には普通の固定時間勤務だった」という話になれば、労働時間や割増賃金を巡るトラブルにつながる可能性が
あります。
だったら最初から、普通に労働時間を把握して、実労働時間に基づいて給与計算する。
その方が、労務トラブルのリスクを低くできる会社もあるはずです。
複雑な制度を使うことが目的ではありません。
会社の実際の働き方に合った制度を選び、正確に勤怠管理・給与計算できることの方が大切です。
「みなし労働時間だから勤怠管理しなくていい」ではありません
専門業務型裁量労働制を導入していても、実際の勤務状況を何も把握しなくてよいわけではありません。
会社には労働者の勤務状況を把握し、健康・福祉確保措置などを講じることが求められます。
ですから、「みなし8時間だから、勤怠も毎日8時間で入れておけばいい」という制度ではありません。
むしろ実際の勤怠を確認した結果、全員が毎日ほぼ9時~18時。
そこから早く帰るには許可が必要。遅く来れば遅刻扱い。
そんな運用なら、「それ、本当に裁量労働制ですか?」と一度立ち止まって確認した方がよいでしょう。
2024年4月から本人同意も必要になっています
2024年4月以降、専門業務型裁量労働制を導入・継続する場合には、労働者本人の同意を得ることや、
同意を撤回する手続きを定めることなどが必要になっています。
また、同意しなかったことを理由として不利益な取扱いをしてはならないことも労使協定に定める
必要があります。
昔から制度を使っている会社ほど、「昔作った労使協定のままになっていないか」も確認しておきたいところです。
必要なのは「制度を使うこと」ではなく「会社に合った制度を使うこと」
専門業務型裁量労働制を適正に使っている会社まで、制度をやめる必要はありません。
専門性が高く、仕事の進め方や時間配分を本人に大きく委ねているのであれば、制度が働き方に合っている場合も
あります。
しかし、実態は毎日9時~18時。会社もその時間帯で働いてほしい。
上司から具体的な指示もある。という会社まで、無理に専門業務型裁量労働制を維持する必要があるでしょうか。
通常の労働時間制度に戻し、実労働時間を正確に把握する。その時間をもとに給与計算する。
その方が管理がシンプルになり、給与計算も正確になり、将来の労務トラブルを防ぎやすくなる場合があります。
専門業務型裁量労働制、本当に今の会社に必要ですか?
制度を導入したこと自体がゴールではありません。
会社の働き方が変われば、労働時間制度も見直す必要があります。
秋山社会保険労務士事務所では、現在の勤怠管理、給与計算、就業規則、労使協定などを確認し、
労務上の問題がないかを点検する「労務健康診断」を行っています。
制度上は裁量労働制。でもタイムカードを見ると毎日9時~18時。
そんな会社は、「適正に運用できているか」だけではなく「そもそも専門業務型裁量労働制を使い続ける必要が
あるのか」から考えてみてはいかがでしょうか。
複雑な制度を無理に維持するより、普通に勤怠管理をして、正確に給与計算を行う。
その方が会社にとって分かりやすく、労務トラブルの予防にもつながることがあります。
問題が起こってから対応するのではなく、問題が起こる前に予防線を張る。
それも社会保険労務士の大切な仕事だと考えています。
対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問
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