【労務】業務委託契約書があっても安心できません。働き方は従業員になっていませんか?
2026年10月17日 14:58
会社の受付や事務所で、ほかの従業員と同じように働いている人。
会社に確認すると、「この人は従業員ではありません。業務委託です」と言われることがあります。
もちろん、事務業務を外部の事業者やフリーランスへ委託すること自体に問題はありません。
しかし、「業務委託契約書を作っているから、従業員ではない」と考えているのであれば注意が必要です。
契約書の名称が「業務委託契約」であっても、実際の働き方によっては労働基準法上の「労働者」と判断
される可能性があります。
業務委託かどうかは契約書のタイトルだけでは決まりません
業務委託契約を結んでいる。本人も業務委託であることに同意している。
報酬は給与ではなく「外注費」として処理している。毎月本人から請求書を提出してもらっている。
こうした事情があったとしても、それだけで必ず業務委託になるわけではありません。
重要なのは、契約の名称ではなく実際にどのような働き方をしているかです。
労働者に該当するかどうかは、会社からの指揮監督の状況や報酬の性質など、さまざまな事情から総合的に
判断されます。
こんな働き方になっていませんか?
例えば、業務委託契約を結んでいる事務員について、
出勤する曜日や時間を会社が決めている
働く場所を会社が指定している
社長や上司から日常的に業務の指示を受けている
仕事を断ることが事実上難しい
本人以外の人に仕事を代わってもらうことができない
仕事の完成ではなく、勤務した時間や日数に応じて報酬を支払っている
パソコンや机、備品などを会社が用意している
他の従業員とほぼ同じ働き方をしている
といった状況になっていないでしょうか。
もちろん、これらの一つに当てはまっただけで、直ちに労働者になるわけではありません。
例えば、業務の目的を達成するために一定の指示をすることは、業務委託契約でもあり得ます。
大切なのは、働き方全体を見て、会社との間に使用従属関係があるかどうかを確認することです。
「本人も業務委託でいいと言っています」は安心材料になりません
会社から、「本人も業務委託で納得しています」と言われることがあります。
しかし、労働者性は会社と本人が好きに決められるものではありません。
仮に本人が、「私は業務委託です」と認識していたとしても、実際には会社の指揮監督のもとで働いているなど、
労働者としての実態があれば、労働関係法令上の取扱いについて確認が必要になります。
同様に、「契約書があります」「請求書を出してもらっています」「税務上は外注費です」
というだけで判断するのも危険です。
実態が労働者だった場合、問題は契約書だけではありません
ここが会社にとって重要なところです。業務委託として扱っていた人が、実態として労働者に該当する可能性が
ある場合、「では雇用契約書を作り直しましょう」だけでは終わらないことがあります。
労働者名簿
労働者であれば、労働者名簿の作成・整備について確認する必要があります。
賃金台帳
報酬ではなく賃金として扱うことになれば、賃金台帳についても確認が必要です。
労働時間
始業・終業時刻をどのように管理していたのか。
時間外労働や休日労働があったのか。
労働時間の実態を確認しなければなりません。
最低賃金
業務委託報酬としては問題がない金額でも、労働者として時間給換算した場合、最低賃金を下回っていないか
確認が必要になることがあります。
割増賃金
実際には長時間働いていたのであれば、時間外・休日・深夜労働について未払いの割増賃金が発生していない
かも確認する必要があります。
年次有給休暇
労働者として一定の要件を満たしていれば、年次有給休暇についても確認が必要になります。
労災保険・雇用保険・社会保険
働き方や労働時間、報酬額などによっては、労働保険や社会保険の加入についても確認が必要になる
可能性があります。
つまり、「業務委託か従業員か」という問題は、契約書一枚だけの問題ではありません。
給与計算、労働時間、社会保険など、会社の労務管理全体に影響する可能性があります。
数年間その状態が続いていたら?
さらに注意したいのが、長期間同じ働き方をしているケースです。
例えば、「もう5年間、ずっと業務委託として来てもらっています」というケース。
もし働き方を確認した結果、労働者性について問題があるとなれば、現在だけでなく過去の取扱いについても
確認が必要になる可能性があります。
未払い賃金、労働時間、保険関係など、確認範囲が広がれば会社にとって大きな負担になることもあります。
だからこそ、トラブルになってから確認するのではなく、何も起きていない段階で契約と実態が一致しているか
確認することが大切です。
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業務委託を使うこと自体が問題なのではありません
誤解していただきたくないのは、業務委託という働き方そのものが問題なのではないということです。
業務の一部を外部へ委託することは、会社経営では普通に行われています。
問題なのは、本来は雇用に近い働き方をしているにもかかわらず、「業務委託契約書を作ったから大丈夫」と
考えてしまうことです。
契約書と実態が一致しているのであれば問題ありません。
しかし、「従業員と何が違うのか説明できない」「勤務時間も場所も会社が決めている」
「社長が毎日仕事を指示している」「報酬も時給のような形で計算している」という場合には、一度確認して
みてもよいでしょう。
御社の「業務委託」、実態と合っていますか?
労務管理では、書類を整えることも重要です。しかし、それ以上に重要なのは、
書類に書いてあることと、実際の職場で行われていることが一致しているかという点です。
業務委託契約書がきれいに整っていても、実際の働き方が従業員そのものになっていれば、別の問題が
生じる可能性があります。
秋山社会保険労務士事務所では、就業規則や契約書だけでなく、労働時間、給与計算、社会保険など実際の
労務管理状況を確認する労務健康診断を行っています。
「昔から業務委託として処理しているから大丈夫」ではなく、その契約と現在の働き方が本当に一致
しているか、一度確認してみませんか。
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