【労務】パートが週20時間未満に。雇用保険の資格喪失、忘れていませんか?
2026年08月29日 09:34
パート従業員の勤務時間が少なくなりました。
以前は週20時間以上働いていましたが、勤務日数が減り、週の所定労働時間が20時間未満に。
ところが会社では、「退職したわけではないし、そのままでいいだろう」と、雇用保険の資格喪失手続き
をしないまま数年が経過しました。
そして、その従業員が本当に退職することになりました。
従業員から、「離職票をお願いします」と言われて、会社が離職証明書を作り始めます。
そこで給与台帳や出勤簿を確認すると・・・。
賃金支払基礎日数9日。その前の月は8日。さらに前も10日。しかも労働時間数を確認しても80時間未満の月ばかり。
「あれ?」「基本手当の受給資格を確認するための被保険者期間が全然足りない……」
こんなことが起こり得ます。
週20時間未満になったら、退職していなくても資格喪失になることがあります
雇用保険は、「会社に在籍しているか」だけで加入を判断する制度ではありません。
2026年8月現在、原則として週の所定労働時間が20時間未満になれば、雇用保険の被保険者として
取り扱われなくなり、資格喪失手続きが必要になります。
もちろん、一時的な労働時間の減少など、資格喪失とならないケースもあります。
しかし、「退職していないから雇用保険もそのまま」とは限らないのです。
パート従業員について、
勤務日数を減らした
週5日から週2日に変更した
家庭事情などで大幅に勤務時間を短縮した
契約更新時に所定労働時間を変更した
こうした場合には、社会保険だけでなく、雇用保険の資格がそのままでよいのかも確認する必要があります。
そして数年後、離職票を作る段階で慌てます
資格喪失手続きを忘れていても、普段の給与計算だけを見ていると気付かないことがあります。
給与ソフトには雇用保険加入の設定が残っている。
毎月、給与から雇用保険料を控除する。
会社もそのまま労働保険料を処理する。
その状態で何年も経過してしまう。
ところが、本当に退職して離職票を作ろうとしたとき、過去の勤怠を確認して初めて違和感に気付く。
雇用保険の基本手当は、一般的な離職の場合、原則として離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要です。そして、この「1か月」は単純な在籍月数ではありません。
原則として、賃金支払基礎日数が11日以上ある月または、賃金支払基礎時間数が80時間以上ある月
を1か月として計算します。
つまり、「5年間会社に在籍していたから、雇用保険も5年間ある」とは限らないのです。
「11日ない!もっと遡らないと!」
いざ離職証明書を作ろうとして、
9日。8日。10日。7日。……。11日以上ある月が全然ない。そこで今度は労働時間数を確認する。
ところが、「80時間にも届いていない……」となる。
一般的な離職で基本手当の受給資格を得るには、原則として12か月分の被保険者期間が必要です。
勤務日数も少ない。勤務時間も短い。
そんな月が続いていれば、単純に雇用保険へ加入していた期間が長いからといって、基本手当の受給要件を
満たすとは限りません。そして、ここでさらに重要な問題が出てきます。
そもそも、この人は何年も前に資格喪失させるべきだったのでは?
離職票を作るために何年分もの資料を引っ張り出して、「11日ない」「80時間ない」と確認する。
しかし、その前に考えなければならないことがあります。
「そもそも、この従業員はいつまで雇用保険の被保険者だったのか?」です。
数年前に労働条件を変更し、週の所定労働時間が20時間未満になっていたのであれば、その時点で資格喪失手続きが
必要だった可能性があります。
そうであれば、現在の退職日を起点として離職票を作れば終わり、という単純な話ではありません。
資格喪失日そのものを確認し直す必要が出てきます。昔の雇用契約書。労働条件通知書。
シフト表。出勤簿。タイムカード。賃金台帳。こうした資料を引っ張り出し、「いつから勤務条件が変わったのか」
を確認することになります。
資格喪失の届出をその都度きちんとしていれば必要のなかった作業が、退職時にまとめて発生するわけです。
雇用保険料を控除していたから、基本手当がもらえるわけではありません
ここは従業員にとっても非常に重要です。給与明細を見ると、毎月「雇用保険料」が引かれている。
そうすれば当然、「自分はずっと雇用保険に入っている」と思うでしょう。
さらに退職したら、「雇用保険料を払っていたのだから、基本手当を受給できるだろう」
と思うのも無理はありません。
しかし、給与から雇用保険料を控除していたことと、基本手当の受給要件を満たしていることは同じではありません。
基本手当には、被保険者期間などの受給要件があります。
また、本来もっと前に資格喪失すべきだったのであれば、その後の期間について資格関係そのものを確認し直さなければならない可能性があります。そうなると従業員からすれば、「じゃあ、今まで給与から引かれていた雇用保険料は何だったの?」という話になります。
本来被保険者ではない期間について誤って保険料を処理していたのであれば、会社側では資格関係だけでなく、労働保険料や本人から控除していた雇用保険料についても確認・訂正が必要になることがあります。
少なくとも、「保険料を控除していたから大丈夫」ではありません。
資格取得届だけ見ていませんか?
雇用保険の手続きというと、「新しい人が入ったから資格取得届を出す」ことには比較的意識が向きます。
しかし、在職中の労働条件変更は見落とされがちです。入社当初は週30時間。その後、週25時間。
さらに家庭事情で週15時間。従業員本人はずっと在籍している。
だから会社も、「何も手続きはいらない」と思ってしまう。しかし、雇用保険ではそうとは限りません。
入社時だけ確認するのではなく、雇用契約を変更したときにも加入要件を確認する。これが大切です。
「たかが資格喪失届の出し忘れ」ではありません
資格喪失届を一枚出し忘れただけ。そう考えるかもしれません。しかし、それを何年も放置すると、
会社側では、
過去の労働条件の確認
過去の勤怠記録の確認
過去の賃金台帳の確認
本来の資格喪失日の確認
資格関係の訂正手続き
離職証明書の確認
労働保険料の訂正確認
従業員から控除した雇用保険料の確認
など、大量の確認作業が発生する可能性があります。
一方、従業員側も、「ずっと雇用保険料を払っていたと思っていたのに、想定していた基本手当を受けられない」
という事態になりかねません。
会社にも負担。従業員にも不利益。そして最後には、「会社はちゃんと手続きしてくれていたと思っていた」
という労使間の信頼問題にも発展しかねません。
労務手続きは「入社」と「退職」だけではありません
労務管理で怖いのは、大きなミスだけではありません。
毎月の小さな見落としが、何年後かに大きな問題になることがあります。
雇用保険も同じです。資格取得した。給与から保険料を控除している。それだけで安心してはいけません。
労働条件が変わったときに、その人が現在も加入要件を満たしているのか。ここまで確認して初めて、
適切な資格管理といえます。
退職時になって、「この人、いつから週20時間未満やったん?」「昔のタイムカードどこにある?」
「離職票、どこまで遡ったらええねん……」と慌てる前に、日頃から従業員の労働条件と各種保険の加入状況を
一致させておきましょう。
御社の雇用保険・社会保険の資格管理、大丈夫ですか?
秋山社会保険労務士事務所では、雇用契約書、労働時間、給与計算、社会保険・雇用保険の加入状況などを確認し、実際の勤務状況と会社の労務手続きにズレがないかを点検する**「労務健康診断」**を行っています。
また、「雇用保険料の控除は正しいか」「給与計算と雇用契約の内容が一致しているか」
「社会保険・雇用保険の加入漏れや資格喪失漏れがないか」といった点は、給与計算を見直す中で発見されることも
あります。
退職者が出てから過去数年分を調べ直すのではなく、問題が起こる前に、一度会社の労務管理を点検してみませんか。
対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問
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