【労務】3か月で課長を外され、半年後にはまた課長。その人事評価制度、本当に大丈夫ですか?
2026年09月08日 08:29
近年、人事評価制度を導入し、3か月ごと、いわゆる四半期ごとに従業員を評価する会社もあります。
評価の機会を増やし、成果を速やかに処遇へ反映すること自体が悪いわけではありません。
しかし、その評価結果によって、
3か月ごとに役職が付いたり外れたりする
頻繁に昇格・降格を繰り返す
そのたびに役職手当が増減する
等級変更に伴って基本給まで上がったり下がったりする
という制度になっている場合は、一度立ち止まって考える必要があります。
人事評価制度は、従業員を頻繁に上げ下げするための制度ではありません。
3か月で課長を外され、半年後にはまた課長?
例えば、
1月 課長へ昇格
4月 評価が下がり課長から降格
10月 評価が上がり再び課長へ昇格
このような人事が繰り返される会社を想像してください。法律上の問題以前に、まず組織としてどうでしょうか。
部下からすれば、「今の上司は誰なのか」「この人の指示に従っていても、3か月後には役職を外されるのではないか」
という状態になりかねません。
役職があまりにも頻繁に変われば、役職そのものの重みが薄れ、指揮命令系統も不安定になります。
さらに、取引先から見ても同じです。
半年前まで課長だった担当者が一般社員になり、その半年後には再び課長になっている。
これが頻繁に繰り返されれば、「この会社の責任者は誰なのか」「この会社の組織体制は安定しているのか」
と思われても不思議ではありません。人事制度は社内だけの問題ではありません。
人事の安定性は、取引先から見た会社の信用にもつながります。
降格と降給は同じ問題ではありません
ここで注意したいのが、「課長という役職を外すこと」と、「基本給そのものを下げること」
は分けて考える必要があるということです。
例えば、課長に対して役職手当3万円を支給すると賃金規程で明確に定めており、適正な人事評価によって
課長職を外れた結果、役職手当がなくなるケース。
一方、「今回の評価はCだから基本給30万円を27万円にします」というケース。
後者になるほど、賃金規程や人事評価制度上の根拠、評価基準、手続、運用の公平性などを慎重に確認する
必要があります。
会社が「人事評価制度だから」という一言だけで、自由に賃金を上げ下げできるわけではありません。
制度を後から変更するなら「不利益変更」の問題も
さらに注意が必要なのが、これまで年1回程度だった評価・昇給制度を、「これからは3か月ごとに評価し、
評価次第では等級や給与を下げます」という制度へ変更する場合です。
従業員にとって賃金が下がりやすくなる制度変更であれば、就業規則の不利益変更が問題となる可能性
があります。労働契約法では、使用者が労働者と合意することなく、就業規則を変更することによって
労働条件を不利益に変更することは原則としてできません。
例外的に変更後の就業規則によることが認められる場合でも、労働者が受ける不利益の程度、変更の必要性、
変更内容の相当性、労使交渉の状況などから合理性が判断されます。
つまり、「就業規則を変更したから大丈夫」ではありません。
また、従業員が形式的に同意したからといって、常に問題がなくなるとも限りません。厚生労働省も、
不利益変更への同意については、労働者の自由な意思に基づくものか慎重に判断されると紹介しています。
対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問
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給与計算と社会保険も複雑になります
人事評価制度を細かくすれば、事務処理も当然細かくなります。
例えば、
役職手当が付いた
役職手当が外れた
基本給が上がった
基本給が下がった
こうした変更は、社会保険上の固定的賃金の変動として、随時改定(月額変更)の対象になるか確認が
必要になるケースがあります。
日本年金機構も、昇給・降給などによって報酬額に大幅な変動があった場合には月額変更届が必要となる
制度を案内しています。
つまり、四半期ごとに昇格・降格、昇給・降給を繰り返す制度は、人事評価だけ作れば終わりではありません。
給与計算、社会保険、辞令、賃金規程、就業規則まで連動して管理する必要があります。
制度を複雑にすればするほど、人事担当者や給与計算担当者の確認事項も増えていきます。
「短期の点数取り」になっていませんか?
もう一つ考えていただきたいのが、従業員側の行動です。3か月ごとの評価で役職も給与も大きく
変わるのであれば、「今期だけ数字を作ればいい」「次の評価で落とされないことを優先しよう」
という意識が強くなる可能性があります。
しかし、本来管理職に求められるのは、3か月間の数字だけではありません。
部下を育成する。顧客との信頼関係を作る。業務を改善する。数年後を見据えて組織を作る。
こうした仕事は、必ずしも3か月単位で成果が見えるものではありません。
短期間の評価を精密にすればするほど、会社が強くなるとは限らないのです。
人事評価制度は「何のためにあるのか」
人事評価制度を作るとき、評価項目や点数表ばかりに目が行きがちです。
しかし、大切なのは制度を作ることそのものではありません。
その制度によって会社をどうしたいのか。従業員を育てたいのか。管理職を育成したいのか。
納得できる給与体系を作りたいのか。会社として長期的に成長したいのか。
そこから逆算して制度を設計する必要があります。3か月で課長にして、3か月後に外し、半年後にはまた課長。
そんな人事を繰り返す制度が、本当に人を育て、組織を強くし、取引先から信用される会社につながっている
でしょうか。人事評価制度は、細かければ細かいほど良いわけではありません。
就業規則、賃金規程、人事評価、給与計算、社会保険、そして会社の組織運営。
これらをバラバラに考えるのではなく、会社全体として整合性の取れた制度になっているかを
確認することが重要です。
人事評価制度や賃金制度を導入・見直しされる際には、制度だけを見るのではなく、実際の労務管理まで
含めて検討することをおすすめします。
秋山社会保険労務士事務所では現在の給与計算が法令や社内規程に沿って適正に行われているかを確認する
「給与計算セカンドオピニオン」を行っています。
また、給与計算だけでなく、労働条件通知書、就業規則、36協定、年次有給休暇管理、社会保険・雇用保険など、
会社全体の労務管理を確認する「労務健康診断」にも対応しています。
対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問
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