【労務】基本給を低くして手当を増やす。本当に会社にメリットありますか?
2026年10月02日 08:39
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求人票を見ると、基本給18万円・職務手当3万円・調整手当2万円・技能手当2万円:月給25万円。
こうした給与体系を見かけることがあります。
会社側からすると、「総額25万円あるから、求人としては悪くないだろう」と思うかもしれません。
しかし、求職者は給与総額だけを見ているわけではありません。
基本給がいくらなのか。そこを見る人も少なくありません。
そして、もう一つ会社側に考えていただきたいことがあります。
基本給を低くして手当を増やしたところで、残業代まで安くなるとは限りません。
「基本給を低くすれば残業単価も下がる」は単純ではありません
会社によっては、「基本給を低く設定して、残りを手当にしておけば残業代も抑えられる」
と考えていることがあります。
しかし、割増賃金の計算では、基本給だけを見ればよいわけではありません。
割増賃金の算定基礎から除外できる賃金は限定されています。
代表的なものとして、
家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金などがあります。
しかも、家族手当や住宅手当などは、「その名前を付ければ自動的に除外できる」わけ
ではありません。実際の支給条件や性質によって判断されます。
つまり、職務手当・調整手当・技能手当・能力手当。
こうした手当を付けたからといって、当然に残業代の算定基礎から外せるわけではありません。
例えば「基本給18万円+手当7万円」なら
例えば、
基本給18万円・職務手当3万円・調整手当2万円・技能手当2万円:合計25万円。
会社が、「基本給は18万円だから、残業単価も18万円を基礎に計算すればいい」
と思っていたとします。
しかし、この職務手当・調整手当・技能手当が割増賃金の算定基礎に入る賃金であれば、
残業代の計算では25万円側を基礎に考える必要があります。
それなら、「基本給を低くしたから会社の残業代負担が減った」とは言えません。
むしろ、給与体系だけが複雑になっている可能性があります。
求職者には「基本給18万円」に見える
一方で、求人を見る側はどうでしょうか。
会社は、「月給25万円です」と考えています。
しかし求職者は内訳を見て、「基本給18万円なのか」と感じるかもしれません。
さらに、「調整手当って何?」「この手当はずっと付くの?」「異動したらなくなるの?」
「昇給するときは基本給が上がるの?」「賞与は基本給ベースなの?」と疑問を持つこともあります。
つまり、会社側は25万円を見せたいのに、求職者には18万円が強く印象に残る。
そのうえ、残業代計算では各種手当まで算定基礎に入る。
これでは、会社側が思っているほどメリットがないかもしれません。
何のために、その手当を付けていますか?
手当そのものが悪いわけではありません。役職に応じた役職手当、特殊な作業に対する手当。
資格や技能に応じた手当、責任や職務内容に応じて意味のある手当を設定することはあります。
問題なのは、給与総額を高く見せるためだけに作られた手当です。
「この調整手当は何のためですか?」と聞いたとき、「昔からあります」
「採用するときに金額を合わせるためです」「前の担当者が作りました」という状態になっていないでしょうか。
その手当、本当に必要でしょうか。
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手当を増やすほど給与計算も複雑になります
給与項目が増えれば、残業代の算定基礎に入るのか、最低賃金の計算に入るのか。
欠勤したときに減額するのか、休職中も支払うのか、賞与算定の対象にするのか。
昇給するときにどの項目を上げるのか。
一つ一つ判断が必要になります。
その結果、担当者によって計算方法が違う。昔の給与担当者しか根拠を知らない。
何年も誤った残業単価で給与計算していた。そんな問題につながることもあります。
給与体系は、複雑にすれば立派になるわけではありません。
説明できること、計算できること、運用できること。
こちらの方が重要です。
最低賃金でも総支給額だけ見てはいけません
最低賃金の確認でも、給与総額だけを見て判断することはできません。
例えば、厚生労働省の計算例でも、職務手当は最低賃金の対象となる賃金に含める一方、
通勤手当や時間外手当などは除外して確認しています。つまり、「月給25万円だから最低賃金は
余裕で超えている」と思っていても、
賃金の中身を見なければ正しい判断はできません。
給与項目が増えれば増えるほど、最低賃金の確認も、割増賃金の計算も、給与規程の管理も複雑になります。
基本給を低くする前に考えてください
採用のために給与総額を高く見せたい。残業代を少しでも抑えたい。その気持ちは分かります。
しかし、基本給を低くして、職務手当・調整手当・技能手当・能力手当と給与を細かく分けても、
それらの手当が割増賃金の算定基礎に入るのであれば、残業代を抑える効果はほとんどありません。
一方で、求職者からは基本給が低く見える。給与体系は複雑になる。
計算ミスのリスクも上がる。では、何のためにその賃金体系にしているのでしょうか。
シンプルな給与体系も立派な賃金戦略です
給与体系は、手当をたくさん付ければよいわけではありません。
その仕事に対して、会社はいくらの価値を付けるのか。
その金額を基本給として分かりやすく示す。必要な手当だけを追加する。
その方が、求職者にも分かりやすく、社員にも説明しやすく、給与計算も管理しやすくなります。
求職者には基本給を低く見られ、残業代の算定基礎からも外せない。
そんな手当を増やす前に、今の給与体系そのものを一度見直してみてはいかがでしょうか。
秋山社会保険労務士事務所では、給与体系・賃金規程・最低賃金・固定残業代・給与計算など、
実際の運用まで踏まえた賃金設計のご相談を承っております。
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