ブログ

【労務】助成金漬けになった会社の末路

2026年09月02日 08:20

社労士をしていると、社長や他士業の先生方から「何か使える助成金ありませんか?」と

聞かれることが多いです。

助成金は、企業の雇用や人材育成、職場環境の改善などを後押ししてくれる非常にありがたい制度です。

会社が本来取り組もうとしていた施策に利用できる助成金があるのであれば、積極的に活用して

よいと思います。

しかし、注意しなければならないことがあります。

それは、「会社がやりたいことに助成金を使う」のではなく、「助成金をもらうために会社の経営や

人事制度を変える」ようになってしまうことです。

助成金が経営判断の中心になってしまうと、会社には少しずつ「助成金をもらった後の負担」が積み

重なっていきます。

「助成金が出るならやる」が始まる

最初は、「ちょうど人を採用する予定だから、利用できる助成金がないか確認してみよう」

という話だったかもしれません。これは何も問題ありません。

しかし、それがいつの間にか、「この人を採用したらいくらもらえますか?」

「この手当を作ったら助成金が出ますか?」「この制度を導入すれば何万円ですか?」というように

変わっていくことがあります。ここまで来ると、経営判断の順番が逆です。

本来は、採用する必要があるから採用する。待遇を改善する必要があるから賃金制度を見直す。

職場環境を改善する必要があるから制度を導入する。

そして、その施策に利用できる助成金があるのであれば活用する。

この順番であるべきです。

助成金は一時金。でも人件費は固定費です

助成金の金額だけを見ると、非常に得をしたように感じます。

例えば100万円の助成金が振り込まれれば、「100万円会社が得をした」と思うかもしれません。

しかし、その助成金を受給するために人を一人採用した場合はどうでしょうか。

会社が負担するのは給与だけではありません。

一定の要件を満たせば、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料の会社負担も発生します。

さらに、採用活動にかかった費用・求人広告費・面接に使った時間・入社手続の事務コスト・

教育担当者の時間・研修費用なども発生します。

助成金が100万円入ったとしても、その人を雇用し続ければ、人件費は毎年発生します。

助成金は一時金でも、人件費は固定費です。

ここを忘れてはいけません。

「この手当、何のためにあるんですか?」

助成金を活用してきた会社の就業規則や賃金規程を見ると、ときどき不思議な手当が並んでいる

ことがあります。

社長に、「この手当は何のために支給しているのですか?」と聞いても、「昔、何かの助成金を

取るために作ったような気がします」ということがあります。

これが、いわゆる「謎の手当」です。

当時は助成金のために作った制度でも、助成金の受給が終わった後まで手当だけが残る。

従業員が増えれば、その支給額も増えていきます。

さらに、その手当が社会保険上の報酬に含まれるものであれば、標準報酬月額にも影響し、

社会保険料の負担が増える可能性があります。

数十万円の助成金を受給するために制度を作った結果、何年間も手当を払い続けている。

これでは、本当に得をしたのか分かりません。

会社のレベルに合わない人材を採用していませんか?

もう一つ危険なのが、助成金欲しさの採用です。

「この人を採用すると助成金が出る」というところから採用を考えてしまうケースです。

しかし、採用で最も大切なのは、その人材が本当に今の会社に必要かどうかです。

例えば、小さな会社なのに、今の業務量では必要のない人材を採用する。

教育できる社員がいないのに経験の浅い人を大量に採用する。

会社の成長段階に対して、オーバースペックな人材を高い給与で採用する。

逆に、本来もっと高い能力が必要な仕事なのに、助成金の対象になるという理由だけで人を採用する。

こうした採用は、会社と人材の双方にとって不幸な結果になることがあります。

会社の規模や業務量、教育体制、売上に合っていない採用をすれば、仕事を与えられない、

教育が追いつかない、既存社員の負担が増える、組織内の役割分担がおかしくなる
採用した本人も仕事に馴染めない、結果として早期退職する。ということにもなりかねません。

退職されれば、それまでに使った求人費、教育費、給与、社会保険料、担当者の時間などが無駄になります。

助成金をもらうための採用が、結果として会社に大きな採用コストを残すことがあるのです。

書類だけ立派な会社になっていませんか?

助成金申請では、就業規則、賃金規程、労働条件通知書、出勤簿、賃金台帳など、さまざまな書類が

関係します。

そのため、助成金を何度も利用している会社では、さまざまな制度が追加されていることがあります。

ところが、実際に会社を確認すると、就業規則には制度があるのに誰も知らない。

賃金規程には手当が大量にある。似たような手当が複数存在する。過去に作った規程がそのまま残っている。

実際の運用と就業規則が一致していない。という状態になっていることがあります。

助成金を取るたびに制度を足していった結果、会社の労務管理そのものが複雑になってしまうのです。

制度は増やせば良いものではありません。

会社の実態に合わせ、社員にも経営者にも分かりやすく運用できることが重要です。

本当に怖いのは「助成金で得をした」という錯覚

助成金として100万円振り込まれた。

確かに会社の銀行口座には100万円増えます。

しかし、その裏で、不要な人材を採用していないでしょうか。給与という固定費が増えていないでしょうか。

社会保険料の負担が増えていないでしょうか。助成金のためだけの謎の手当を作っていないでしょうか。

採用や教育に多額のコストを使っていないでしょうか。

会社に合わない制度を作っていないでしょうか。

こうした費用を合計すると、「助成金をもらったから得をした」とは限りません。

場合によっては、助成金を受給したことをきっかけに、それ以上の固定費を何年間も背負うことになります。

助成金を考えるときは、「いくらもらえるか」だけではなく、「その助成金を利用した結果、会社に最終的に

いくら残るのか」を見る必要があります。

「助成金が1円も出なくてもやりますか?」

助成金を利用する前に、ぜひ一度考えてみてください。

「この助成金が1円も出なかったとしても、この採用、この賃上げ、この制度導入を実施しますか?」

YESなら、その施策は会社にとって本当に必要なものなのでしょう。

そのうえで利用できる助成金があるのであれば、正しく活用すればよいと思います。

しかし、答えがNOなのであれば、一度立ち止まるべきです。

助成金は、会社に不要な制度や人材を抱えさせるためのものではありません。

会社が本来進みたい方向へ進むための後押しとして利用するものです。

助成金は経営の主食ではありません

売上を作る。利益を残す。必要な人材を採用する。従業員が働きやすい職場を作る。

会社の実態に合った賃金制度を作る。これが会社経営の本体です。

助成金は経営の主食ではありません。

会社が本来行う施策を支援してくれる、いわば補助輪のようなものです。

助成金に会社を合わせるのではなく、会社に合う助成金を利用する。

この順番を忘れないことが重要です。

助成金で複雑になった労務管理を一度整理しませんか?

「過去に助成金を利用するたびに就業規則を変更してきた」

「何のために作ったのか分からない手当が残っている」

「就業規則と実際の会社の運用が合っていない」

「制度が増え過ぎて、自社でも内容を把握できていない」

「一度、会社の労務管理を全部点検してほしい」

このような会社も少なくありません。


秋山社会保険労務士事務所では、過去の助成金活用などによって複雑になった就業規則・各種規程の見直し、

賃金制度の整理、労務監査を承っております。

就業規則だけを見るのではなく、雇用契約書・賃金規程・各種手当・労働時間管理
残業代の計算方法・年次有給休暇管理・社会保険の加入状況・実際の会社運用と規程とのズレなどを確認し、

会社の現在の実態に合わせて労務管理を整理していきます。

「助成金を取るために作った会社」から、「本当に運用できる会社のルール」へ。

一度増え過ぎた制度を整理し、シンプルで分かりやすい労務管理に戻したい事業主様は、

秋山社会保険労務士事務所までお気軽にご相談ください。


対応地域:全国対応

主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府

対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問

秋山社会保険労務士事務所

https://akiyamasr55.com

秋山社会保険労務士事務所の給与計算セカンドオピニオン

https://akiyamasr55.com/kyuuyokeisan

秋山社会保険労務士事務所の労務健康診断

https://akiyamasr55.com/roumukansa