【労務】炎上してからでは遅い。SNS時代の就業規則に入れておきたい条文
2026年08月09日 08:39
Instagram、X、TikTok、YouTubeなど、誰もが気軽に情報を発信できる時代になりました。
従業員が個人でSNSを利用すること自体は、決して珍しいことではありません。
しかし、何気なく投稿した写真や動画、短いコメントがきっかけとなり、会社名や勤務先が特定され、
会社全体が批判を受けることがあります。
問題が発生してから、会社が従業員に対して、
「そんな投稿をしてはいけないのは常識だ」「会社に迷惑をかけたのだから処分する」
と言っても、就業規則に具体的なルールが定められていなければ、対応が難しくなる可能性があります。
SNS時代の今だからこそ、就業規則の服務規律や懲戒規定を見直しておく必要があります。
SNSの投稿から会社が特定されることがある
従業員が会社名を直接書いていなくても、次のような情報から勤務先が特定されることがあります。
制服や名札が写っている
社用車の社名やナンバーが写っている
店舗や事業所の内装が写っている
顧客や利用者の姿が写り込んでいる
勤務場所や仕事内容について詳しく書いている
同僚や上司に関する情報を書いている
過去の投稿から居住地域や勤務先を推測できる
本人は匿名で投稿しているつもりでも、複数の情報を組み合わせることで、本人や勤務先が
特定されることがあります。
一度投稿された情報は、本人が削除しても、スクリーンショットや転載によって残り続ける
可能性があります。
就業規則に「秘密を漏らしてはならない」だけでは不十分
古い就業規則では、服務規律として、
「会社の秘密を漏らしてはならない」とだけ定めているケースがあります。
もちろん、秘密保持に関する規定は重要です。
しかし、SNS上のトラブルは、会社の機密情報を投稿した場合だけではありません。
例えば、次のような行為も問題になります。
勤務中に店内や事業所内で動画を撮影する
顧客や利用者を無断で撮影する
同僚の写真や個人情報を投稿する
会社や上司、同僚、取引先を誹謗中傷する
社内資料やパソコン画面を写真に撮って投稿する
給与明細や社内連絡の画面を公開する
制服姿で不適切な動画を投稿する
会社の信用を傷つける内容を発信する
他人の投稿を転載、共有または拡散する
SNSへの投稿だけでなく、撮影、録音、転載、共有、拡散まで含めて規定することが重要です。
就業規則に入れておきたいSNS利用のルール
SNSに関する規定を作成するときは、単に「SNSを禁止する」と定めるのではなく、会社にどのような
損害を与える行為を禁止するのかを具体的にしておく必要があります。
例えば、次のような事項が考えられます。
1.会社や関係者の信用を傷つける投稿の禁止
会社、役員、従業員、顧客、取引先などを誹謗中傷したり、名誉や信用を傷つけたりする投稿を禁止します。
ただし、従業員による正当な相談、申告、公益通報などまで一律に禁止するような規定は適切ではありません。
2.秘密情報や個人情報の投稿禁止
業務上知り得た会社の秘密、顧客情報、従業員情報、取引情報などをSNSに投稿することを禁止します。
個人データの漏えいが発生し、本人の権利利益を害するおそれがある場合には、個人情報保護委員会への
報告や本人への通知が必要になることもあります。
3.勤務中の私的な撮影・投稿の禁止
勤務時間中に、会社の許可なく写真や動画を撮影したり、SNSへ投稿したりする行為を禁止します。
特に飲食店、介護施設、医療機関、保育施設などでは、顧客や利用者の姿、氏名、健康状態などが
映り込まないよう、厳格なルールが必要です。
4.無断撮影・録音の禁止
会社の施設内、顧客先、取引先などにおいて、業務上必要な場合を除き、許可なく撮影または録音
することを禁止します。
写真や動画を投稿しなくても、無断撮影そのものがトラブルにつながることがあります。
5.会社を代表するような発信の禁止
個人のSNSアカウントであるにもかかわらず、会社の公式見解であるかのような発言をすることを
禁止します。
プロフィール欄に勤務先を掲載している場合や、業務内容について継続的に発信している場合には、
個人の意見と会社の見解が混同される可能性があります。
6.退職後の秘密保持
SNSに関するルールは、在職中だけの問題ではありません。
退職後に、顧客情報、社内資料、営業上の情報などを投稿される可能性もあります。
そのため、退職後も秘密保持義務が続くことを明確にしておくことが重要です。
厚生労働省の資料でも、秘密保持義務を就業規則に定めることは、会社の姿勢を明確にし、従業員へ
注意を促す意味があるとされています。
SNSで問題を起こしたら、必ず懲戒処分にできるのか
SNSに関する禁止事項を定めたからといって、問題が発生すれば、必ず重い懲戒処分ができるわけ
ではありません。
実際の処分を検討するときは、次のような事情を確認する必要があります。
投稿の内容
情報が拡散された範囲
会社や関係者に生じた損害
従業員の故意または過失の程度
投稿後の削除や謝罪の有無
過去に同様の注意や処分を受けているか
就業規則の内容と周知状況
他の事例との処分のバランス
感情的に処分を決定すると、処分の有効性をめぐって、別の労務トラブルが発生する可能性があります。
SNSトラブルが発生したときは、投稿内容や拡散状況などの証拠を保存し、事実確認を行ったうえで慎重に
対応する必要があります。
古い就業規則ではSNS時代に対応できません
厚生労働省の関連機関も、古く曖昧な服務規律や懲戒規定では、SNSや情報管理などの現代的な問題に
対応できない場合があると注意を促しています。
就業規則を何年も見直していない会社では、SNSだけでなく、次のような新しい働き方やリスクに
対応できていない可能性があります。
テレワーク
副業・兼業
私物スマートフォンの業務利用
クラウドサービスの利用
生成AIへの社内情報の入力
オンライン会議の録音・録画
電子データの持ち出し
「今まで問題が起きなかったから大丈夫」ではありません。
問題が起きていない今だからこそ、ルールを整備しておく必要があります。
まとめ
SNSへの投稿は、個人の問題だけでは終わりません。
従業員の何気ない写真や動画、短いコメントによって、会社の信用が低下し、顧客や取引先との関係に
影響を与えることがあります。
炎上してから就業規則を見直しても、すでに失われた信用や流出した情報を完全に元へ戻すことはできません。
SNSに関する規定がない
秘密保持の規定が抽象的
無断撮影について定めていない
退職後の情報発信について定めていない
懲戒規定が何年も前のまま
就業規則を従業員に周知していない
このような会社は、一度就業規則の内容を確認してみることをおすすめします。
秋山社会保険労務士事務所では、会社の業種、従業員構成、実際の働き方を確認したうえで、SNSや
情報管理に対応した就業規則の作成・見直しを行っています。
就業規則が現在の働き方に合っているか不安な場合は、お気軽にご相談ください。
対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問