【労務】町工場の社長、仕事中にケガをしても労災保険は使えない?
2026年08月04日 08:20
尼崎、西淀川、住之江、西成、東大阪などの町工場では、社長自身が現場に入って働いている
ことも珍しくありません。
溶接をする。
プレス機や工作機械を操作する。
フォークリフトで材料を運ぶ。
製品の積込みや配送をする。
従業員と同じように働いているため、社長自身も当然、労災保険の対象になると思っている方がいます。
しかし、社長や役員は原則として「労働者」ではないため、通常の労災保険では補償されません。
従業員が労災に入っていても、社長は別です
会社が労災保険に加入していれば、従業員が仕事中や通勤中にケガをした場合は、原則として労災保険の
対象になります。
一方で、中小企業の社長や役員は、従業員と同じ現場で同じ作業をしていたとしても、自動的に労災保険の
対象になるわけではありません。
たとえば、社長が次のような作業中にケガをした場合です。
プレス機や工作機械による負傷
溶接作業中のやけど
フォークリフト作業中の事故
荷物の積込み中の転倒や腰痛
工場内での転落事故
配送中の交通事故
社長が加入できる「中小事業主等の特別加入」
そこで設けられているのが、労災保険の特別加入制度です。
中小事業主等の特別加入は、本来は労災保険の対象にならない中小企業の事業主、役員、家族従事者などが、
一定の要件を満たすことで労災保険に加入できる制度です。
中小企業では、社長や役員が経営だけをしているとは限りません。
従業員と一緒に製造、加工、運搬、配送などを行っているのであれば、万一に備えて特別加入を検討する
必要があります。
なお、中小事業主等が特別加入するためには、労働保険事務を労働保険事務組合へ委託することが要件となります。
労働保険事務組合へ委託するメリット
労働保険事務組合へ委託するメリットは、社長や役員が労災保険へ特別加入できることだけではありません。
労働保険料の申告や納付などの事務を委託できるため、会社の事務負担を軽減できます。
さらに大きなメリットが、労働保険料を3回に分けて納付できることです。
通常、労働保険料を延納するには、継続事業の場合、概算保険料が40万円以上であることが必要です。
労災保険または雇用保険のどちらか一方だけが成立している事業では、概算保険料が20万円以上であることが
必要になります。
しかし、労働保険事務組合に事務を委託している事業主は、概算保険料の金額にかかわらず、
原則として3回に分けて納付できます。
従業員数が少なく、労働保険料が40万円未満の会社であっても、事務組合へ委託することで延納が可能です。
一度に保険料を納付する負担を分散できるため、資金繰りの面でもメリットがあります。
事故が起きてから加入することはできません
「社長がケガをしたので、今から特別加入したい」
残念ながら、事故が発生した後にさかのぼって特別加入することはできません。
特別加入は、加入が承認された後に発生した事故が対象です。
現場作業をしている社長や役員がいる会社では、何も起きていない今のうちに加入を検討する必要があります。
特別加入すれば、すべての事故が補償されるとは限りません
特別加入をしていれば、どのような作業中の事故でも必ず補償されるわけではありません。
特別加入の申請時には、社長や役員が実際に行う業務内容を届け出ます。
そのため、届け出た業務内容と事故発生時の作業内容が大きく異なる場合には、労災保険給付の対象に
ならない可能性があります。
加入手続の際には、社長が現場で行っている作業を正確に確認し、実態に合った内容で手続することが重要です。
町工場の社長こそ、本人の補償を確認しましょう
会社では従業員の労災対策や安全管理を行っていても、社長本人の補償が抜けていることがあります。
社長が長期間働けなくなれば、治療費や休業中の生活費だけでなく、会社の経営そのものにも大きな
影響が出ます。
特に次のような社長や役員は、一度加入状況を確認しておきましょう。
従業員と一緒に工場内で作業している
溶接や機械加工をしている
プレス機や工作機械を操作している
フォークリフトを運転している
荷物の積込みや配送をしている
家族が現場作業を手伝っている
特別加入と労働保険料の延納をまとめて支援します
秋山社会保険労務士事務所では、労働保険事務組合を通じて、中小事業主等の労災保険特別加入に
対応しています。
特別加入の手続だけでなく、実際の作業内容の確認、労働保険事務の委託、年度更新、労働保険料の
延納についてもまとめてご相談いただけます。