【労務】何もしていない時間は無給? 手待ち時間を休憩扱いする会社の落とし穴
2026年07月28日 08:22
「お客さんが来るまで、何もしていない」
「荷物が届くまで、車の中で待っているだけ」
「電話が鳴った時だけ対応してもらっている」
このような時間について、会社が「実際には仕事をしていないのだから、無給や休憩扱いでよい」と
考えているケースがあります。
しかし、何もしていないように見える時間であっても、会社の指示があればすぐに仕事へ対応し
なければならないのであれば、原則として労働時間に該当します。
このような時間を「手待ち時間」といいます。
手待ち時間を安易に無給や休憩扱いにすると、未払い賃金や残業代、休憩不足などの問題に
つながるため注意が必要です。
何もしていない時間でも労働時間になる
労働時間に該当するかどうかは、従業員が実際に手を動かしていたかだけで決まるものでは
ありません。
重要なのは、その時間に従業員が会社の指揮命令下に置かれていたかどうかです。
例えば、従業員が椅子に座ってスマートフォンを見ていたとしても、
お客さんが来ればすぐに接客しなければならない
電話が鳴れば対応しなければならない
荷物が到着すれば直ちに積込みを始めなければならない
会社から呼ばれればすぐに業務へ戻らなければならない
指定された場所から自由に離れられない
という状態であれば、自由に過ごせる休憩時間とはいえません。
厚生労働省も、労働者が労働から離れることを保障されていない待機時間などの手待ち時間は、
休憩時間には含まれないと説明しています。
「暇だったから休憩」は通用しません
飲食店、小売店、美容室などでは、お客さんが少ない時間帯に従業員が店内で待機している
ことがあります。
その時間に来客がなかったとしても、お客さんが来ればすぐに対応しなければならないのであれば、
原則として労働時間です。
「今日は暇だった」「ほとんど接客していなかった」「売上がなかった」
という事情は、その時間を無給にできる理由にはなりません。
会社が従業員を店舗に配置し、来客に備えて待機させている以上、その待機自体が会社のために
行われているからです。
労働局も、お客さんの少ない時間帯であっても、来客時に対応しなければならない時間は、
休憩ではなく労働時間になると案内しています。
昼休みの電話番も手待ち時間になる
よく問題になるのが、昼休み中の電話番や来客対応です。
会社としては、
「電話はほとんど鳴らない」
「昼食を取りながら対応できる」
「電話が鳴った時だけ仕事をすればよい」
と考えるかもしれません。
しかし、電話が鳴れば対応しなければならない状態では、従業員は完全に仕事から解放されていません。
厚生労働省は、昼休み中の電話や来客対応は業務に該当し、その時間は勤務時間に含まれるとしています。
昼当番によって休憩を取れなかった場合には、会社は別の時間に休憩を与えなければなりません。
「電話が鳴った数分だけ労働時間にすればよい」とは限りません。
電話に備えて、その場で待機することを命じられているのであれば、待機時間全体が手待ち時間と
判断される可能性があります。
荷待ち時間も労働時間になることがある
運送業では、荷物の積込みや荷下ろしが始まるまで、長時間待機することがあります。
車内で休んでいるように見えても、
その場から離れてはいけない
荷主から指示があればすぐに対応する
出発時刻や積込み時刻に備えて待機する
車両の管理を続けなければならない
という状態であれば、労働時間に該当する可能性があります。
厚生労働省の労働条件サイトでも、使用者の指示があれば直ちに業務へ対応する必要があり、
労働から離れることが保障されていない荷待ち時間は、労働時間に該当すると説明されています。
手待ち時間と休憩時間は何が違うのか
休憩時間とは、単に作業をしていない時間ではありません。
従業員が労働から完全に離れ、自由に利用できることが保障されている時間です。
例えば、
電話や来客対応をする必要がない
呼び出されることを前提としていない
自由に外出できる
食事や私用を自由に済ませられる
指定された場所で待機する必要がない
という状態であれば、休憩時間として認められやすくなります。
一方で、会社が就業規則やシフト表に「休憩」と記載していても、実際には電話対応や来客対応を
させているのであれば、名称だけで休憩時間になるわけではありません。
労働時間か休憩時間かは、会社が付けた名前ではなく、実際の働き方によって判断されます。
手待ち時間を休憩扱いするリスク
本来は労働時間である手待ち時間を休憩として処理すると、会社には次のようなリスクがあります。
1.賃金の未払い
手待ち時間は労働時間であるため、その時間に対する賃金の支払いが必要です。
「実際の作業をしていなかった」という理由だけで、無給にすることはできません。
2.未払い残業代
手待ち時間を労働時間に加えると、1日8時間または1週40時間を超えている場合があります。
その結果、本来支払うべき時間外労働の割増賃金が不足している可能性があります。
3.休憩を与えていないことになる
手待ち時間を休憩として記録していても、従業員が労働から解放されていなければ、法律上の休憩を
与えたことにならない可能性があります。
労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩を、
労働時間の途中に与える必要があります。
4.勤怠記録と実態が合わなくなる
勤怠記録上は1時間休憩となっていても、実際には電話番や来客対応をしていた場合、記録と実際の
労働時間にずれが生じます。
労働基準監督署の調査や、退職した従業員から残業代を請求された時に、会社が説明に困ることになります。
手待ち時間を減らす工夫も必要です
手待ち時間が労働時間だからといって、そのまま放置すればよいわけではありません。
会社としては、
電話当番を交代制にし、別の時間に休憩を与える
繁閑に合わせてシフトを見直す
待機中に行う業務を明確にする
荷待ち時間を正確に記録する
特定の従業員だけが対応する状態を見直す
休憩時間中は業務対応を求めない体制を作る
など、勤務体制を整える必要があります。
手待ち時間を勤怠から消すのではなく、手待ち時間そのものを減らす工夫が重要です。
まとめ
何もしていないように見える時間でも、会社の指示があればすぐに業務へ対応しなければならないのであれば、
原則として手待ち時間に該当します。
大切なのは、従業員が忙しかったかどうかではありません。
その時間に、仕事から完全に解放されていたかどうかです。
「お客さんが来なかったから無給」
「電話が鳴らなかったから休憩」
「車内で待っていただけだから労働時間ではない」
このような判断は、未払い賃金や残業代、休憩不足の問題につながる可能性があります。
しかし、手待ち時間の問題は、会社自身では気づきにくいものです。
勤怠表上は休憩になっていても、実際には電話番や来客対応をしている。
休憩時間として処理しているものの、従業員は職場から離れられない。
荷待ち時間や待機時間が、労働時間から除外されている。
こうした運用は、現場では当たり前になっていることが多く、問題が表面化するまで見過ごされがちです。
そこで有効なのが、労務監査です。
労務監査では、就業規則や雇用契約書を確認するだけではなく、勤怠記録、休憩時間の運用、
残業代の計算方法、実際の勤務状況などを確認し、会社の労務管理に潜むリスクを洗い出します。
従業員から未払い残業代を請求されてから見直すのではなく、トラブルが起こる前に問題点を把握し、
改善することが大切です。
「休憩時間の扱いに自信がない」「実際の勤務状況と勤怠記録が合っているか不安」
「未払い残業代のリスクがないか確認したい」
このような会社は、一度、労務監査を受けてみてはいかがでしょうか。
当事務所では、労働時間、休憩、残業代、雇用契約書、就業規則などを確認し、会社ごとの労務リスクと
改善点をご提案しています。
問題が起きる前に、会社の労務管理を点検しておくことが、従業員と会社の双方を守ることにつながります。
対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問