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社会保険の月額変更届の手続きを忘れていませんか?

2026年07月23日 08:42

社員の基本給を上げた。

役職手当を新たに支給した。

時給を大幅に変更した。

給与計算は新しい金額で処理している。

ところが、社会保険の「月額変更届」は提出していなかった――。

この届出漏れ、意外と少なくありません。

「算定基礎届を毎年出しているから大丈夫」

そう思っている会社もありますが、給与が大きく変わった場合は、次の算定基礎届まで待たずに

月額変更届が必要になることがあります。

放置すると、後日になって社会保険料をまとめて支払うことになり、会社だけでなく社員にも

大きな負担が生じます。

月額変更届とは?

健康保険料と厚生年金保険料は、毎月の給与額そのものではなく、「標準報酬月額」を基に計算されます。

基本給や固定的な手当などが変わり、一定の要件に該当した場合には、標準報酬月額を途中で見直さなけ

ればなりません。

この手続を「随時改定」といい、その際に提出するのが月額変更届です。

原則として、次の3つの条件をすべて満たした場合に対象となります。

・基本給や固定手当など、固定的賃金に変動があった
・変動後3か月間の報酬の平均により、標準報酬月額が2等級以上変わった
・3か月すべての支払基礎日数が一定日数以上ある

該当した場合は、給与が変わった月から数えて4か月目から、標準報酬月額が改定されます。

届出を忘れると、保険料がまとめて請求される

例えば、4月に昇給し、7月から標準報酬月額を変更しなければならなかった社員がいたとします。

しかし、会社が月額変更届を提出せず、以前の低い標準報酬月額のまま保険料を納め続けていた。

その後、年金事務所の調査や事務確認で届出漏れが判明すれば、本来変更すべきだった月まで

さかのぼって処理される可能性があります。(MAX2年遡及)

すると会社には、過去の社会保険料の差額がまとめて請求されます。

毎月なら数千円、数万円の差でも、複数月、複数人分が積み重なると、決して小さな金額ではありません。

社員負担分を、あとからどうするのか

社会保険料は、会社と社員がそれぞれ負担します。

届出漏れによって追加の保険料が発生した場合、会社負担分だけでなく、社員負担分も発生します。

そこで問題になるのが、

「社員負担分を、過去の給与にさかのぼって本人から回収するのか」

という点です。

会社のミスで数か月分の保険料を一度に給与から控除すれば、社員の手取りが突然大きく減ってしまいます。

社員からすれば、「会社の手続ミスなのに、なぜ今になってまとめて引かれるのか」

と不満を持つのは当然です。

説明もなく一方的に多額を控除すれば、給与計算への不信感や労使トラブルにつながります。

一括控除が難しければ、会社が一時的に立て替え、本人と話し合って分割で精算する対応が必要になる

こともあります。

つまり、月額変更届を忘れたことで、会社は追加保険料だけでなく、社員への説明や精算という余計な

業務まで背負うことになります。

給料が下がった場合の届出漏れも危険

昇給時だけ注意すればよいわけではありません。

降給によって月額変更の対象となっていたにもかかわらず、届出を忘れていた場合、社員は本来より

高い社会保険料を払い続けることになります。

後から社員が、「給料は下がっているのに、なぜ社会保険料は高いままだったのか」

と気付けば、会社の給与計算や社会保険手続そのものへの信用を失います。

特に、役職を外れた、勤務時間が短くなった、固定手当が廃止されたといったケースは見落とされやすい

ため注意が必要です。

将来の年金額や給付にも影響する

標準報酬月額は、毎月の社会保険料を計算するだけの数字ではありません。

厚生年金の標準報酬月額は、将来受け取る老齢厚生年金などの計算にも使用されます。

また、健康保険の傷病手当金や出産手当金も、原則として標準報酬月額を基に支給額が計算されます。

届出漏れによって標準報酬月額が実態より低い状態になっていれば、社員が病気や出産で休んだ際の

給付額に影響する可能性があります。

単なる事務手続のミスでは済まないことがあるのです。

算定基礎届を出していれば大丈夫、ではない

月額変更届の漏れで多いのが、

「毎年7月に算定基礎届を出しているから、そのときに直ると思っていた」

という誤解です。

算定基礎届は、原則として4月、5月、6月の給与を基に、9月からの標準報酬月額を決定する手続です。

一方、月額変更届は、昇給や降給などによって給与が大きく変わったときに、その都度行う手続です。

算定基礎届を提出していても、それ以前に月額変更が必要だった事実まで消えるわけではありません。

「年に1回だけ確認すればよい」という手続ではないのです。

特に漏れやすい給与変更

次のような変更があった場合は、月額変更届の対象にならないか確認が必要です。

・基本給を昇給または降給した
・時給や日給を変更した
・役職手当を新設、増額、減額または廃止した
・住宅手当や家族手当などの固定手当を変更した
・給与体系を時給制から月給制へ変更した
・所定労働時間や所定労働日数を変更した
・固定的に支給する手当を新たに追加した
・通勤手当の支給方法や金額を変更した

「残業代が増えただけだから関係ない」と決めつけるのも危険です。

残業代そのものは非固定的賃金ですが、その前提となる基本給、時給、所定労働時間などが変わっていれば、

月額変更の確認が必要になることがあります。

給料を変更したら、3か月後にもう一度確認する

月額変更届を防ぐためには、給与を変更した時点で記録を残し、3か月後に対象になるか確認する

仕組みが必要です。

ところが実際には、

「昇給処理をした人」「給与計算をする人」「社会保険手続をする人」が別々になっており、

情報が伝わっていない会社もあります。

社長が口頭で昇給を決め、給与担当者だけが金額を変更し、社会保険担当者には何も伝わっていなかった。

このような会社では、月額変更届が簡単に漏れます。

給与変更を行ったら、

・誰の給与を変更したのか
・何月支給分から変更したのか
・何の項目を変更したのか
・3か月後に誰が月額変更を確認するのか

まで管理する必要があります。

「知らなかった」では、追加保険料はなくならない

月額変更届は、毎月提出する書類ではありません。

そのため、担当者が制度を理解していなければ、何年も提出せずに給与計算を続けてしまうことがあります。

しかし、

「届出が必要だと知らなかった」

「算定基礎届で直ると思っていた」

「前任者から引継ぎを受けていなかった」

という事情があっても、本来納めるべきだった社会保険料の差額がなくなるわけではありません。

後からまとめて発覚するほど、会社と社員の負担は大きくなります。

社会保険手続は、提出書類を作ることよりも、

どのタイミングで、どの届出が必要になるかを見逃さないことの方が重要です。

秋山社会保険労務士事務所では、給与変更後の月額変更届の確認、社会保険料のチェック、給与計算と

社会保険手続の一括管理に対応しています。

最近、昇給、降給、手当の新設や廃止を行った会社は、月額変更届が漏れていないか、一度確認して

みてはいかがでしょうか。



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