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【労務】給与計算を一度丸ごと健康診断してみませんか? ― 毎月正しく支払っている「つもり」が、会社のリスクになっているかもしれません

2026年10月24日 06:32

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毎月、決まった日に従業員へ給与を支払っている。

給与計算ソフトも導入しているし、担当者も長年同じ人が対応している。

これまで従業員から大きな苦情もなく、税務署や労働基準監督署から指摘を受けたこともない。

だから、うちの給与計算は問題ない。そう考えている経営者の方も多いのではないでしょうか。

しかし、ここで一つ質問させてください。

社長、御社の給与計算が正しいということを、誰が、いつ、どのように確認しましたか?

給与計算ソフトが計算しているから正しいのでしょうか。

担当者が長年処理しているから正しいのでしょうか。

それとも、従業員から何も言われていないから正しいのでしょうか。

実は、これらはどれも給与計算が正しいことの証明にはなりません。

給与計算で本当に怖いのは、間違っていても毎月問題なく給与が振り込まれ、会社が普通に動いてしまうことです。

今回は、経営者の皆様に向けて、給与計算を一度丸ごと点検する「給与計算の健康診断」についてお話しします。

給与計算ソフトが正しくても、給与計算が正しいとは限りません

給与計算ソフトは非常に便利です。

勤怠データを取り込み、基本給や手当を設定すれば、残業代、社会保険料、所得税などを計算してくれます。

しかし、給与計算ソフトには決定的な弱点があります。

設定された条件が間違っていれば、間違った条件のまま正確に計算し続けることです。

例えば、次のようなケースです。

  • 残業単価の計算に、本来含めるべき手当が含まれていない

  • 1か月平均所定労働時間数が実際の年間休日数と合っていない

  • 固定残業代の設定が雇用契約書や賃金規程と一致していない

  • 社会保険料の控除額が改定後の標準報酬月額に対応していない

  • 課税・非課税の区分が誤って設定されている

  • 年次有給休暇を取得した日の賃金計算方法が適切でない

これらの設定に誤りがあったとしても、給与計算ソフトが自動的にすべて発見してくれるわけではありません。

仮に5年前から設定を間違えていれば、その間ずっと同じ誤りを繰り返している可能性があります。

担当者が毎月きちんと計算し、社長が給与総額を確認して承認していても、計算の前提条件まで確認していなければ、

誤りを見つけられないことがあります。

つまり、「給与計算を毎月実施していること」と「給与計算が法令や社内規程に従って正しく行われていること」は、

まったく別の話なのです。

残業代が毎月1人3,000円ずつ不足していたら、どうなるでしょうか

少し具体的な話をしましょう。

例えば、従業員30人の会社で、残業代の計算方法に誤りがあり、全員について毎月平均3,000円の不足が生じていたとします。

仮定の試算:30人全員に同額の不足が3年間継続した場合

毎月の不足額

9万円

年間の不足額

108万円

3年間の累計不足額

324万円

3,000円 × 30人 × 36か月。単純計算による例示であり、実際の未払額や請求可能期間を示すものではありません。

月額3,000円であれば、給与総額から見ても小さな金額かもしれません。

しかし、それが全従業員に発生し、何年間も積み重なればどうでしょうか。

従業員から未払残業代を請求されて初めて気づくようなことになれば、過去の勤怠記録や給与計算をさかのぼって

確認し、差額を計算する必要が出てきます。

場合によっては、遅延損害金などの問題も生じます。

また、労働基準監督署の調査で指摘される可能性もあります。

経営者として考えていただきたいのは、324万円という金額だけではありません。

会社が把握していない債務が、毎月少しずつ積み上がっているかもしれないということです。

給与計算の健康診断は、こうした潜在的なリスクを早期に把握するためのものでもあります。

本当に点検すべきなのは、給与明細の数字だけではありません

給与計算の点検というと、給与明細を見て、基本給や残業代の数字が合っているか確認する作業を想像されるかも

しれません。しかし、私が重要だと考えているのは、その数字が出来上がるまでの過程です。

例えば、残業代一つを確認するにしても、勤怠記録 → 労働時間の集計 → 割増賃金の算定基礎 → 時間単価 →

割増率 → 支給額という流れを確認する必要があります。

給与明細の残業代が30,000円だったとしても、その30,000円が本当に正しいかどうかは、給与明細だけでは判断

できません。

① 勤怠管理と給与計算が一致していますか?

タイムカードや勤怠システムには、毎日の出勤時刻と退勤時刻が記録されています。

では、その時間がどのように給与へ反映されているのでしょうか。

例えば、出勤時刻が8時53分なのに、毎日9時から勤務したこととして処理していないでしょうか。

残業時間を毎日15分単位で切り捨てていないでしょうか。

法令上、労働時間は原則として実際の時間に基づいて把握・計算する必要があります。一定の月単位の端数処理は

認められていますが、日々の労働時間を一律に切り捨ててよいわけではありません。

また、有給休暇を申請・承認した日に出退勤打刻が残っていた場合、それを確認せず、そのまま有給休暇として

処理していないでしょうか。

勤怠上の不整合を放置すると、給与計算上の誤りだけでなく、労働時間管理そのものの問題にもつながります。

② 残業代の時間単価は、正しく計算されていますか?

例えば、ある従業員に基本給25万円、役職手当3万円が支払われているとします。

残業代の計算で、基本給25万円だけを使っていないでしょうか。

役職手当は、原則として割増賃金の算定基礎に含まれます。

また、住宅手当や家族手当などについても、名称だけで一律に除外できるわけではありません。実際の支給条件に

よって判断する必要があります。


さらに、年間休日や所定労働時間を変更したにもかかわらず、給与計算ソフトの月平均所定労働時間数を何年も

変更していない会社も注意が必要です。

月給額が正しくても、割る時間数が間違っていれば、残業単価は間違います。

③ 固定残業代は、雇用契約書と給与明細で整合していますか?

固定残業代を導入している会社では、特に慎重な確認が必要です。

例えば、雇用契約書には「固定残業代として30時間分を支給」と記載しているものの、実際の支給額が所定の

計算方法と合っていないケースです。

また、固定残業代を超える割増賃金が発生しているにもかかわらず、差額を支払っていない場合も問題になります。

固定残業代は、給与明細に金額を載せているだけで適切な制度になるわけではありません。

労働契約上の定め、通常の賃金との区分、対象となる時間外労働等、実際の支給額などを総合的に確認する必要が

あります。


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④ 社会保険料・所得税の控除は正しいですか?

給与計算では、支給額だけでなく控除額にも注意が必要です。

例えば、

  • 定時決定や随時改定による標準報酬月額の変更

  • 健康保険料率・介護保険料率などの変更

  • 40歳・65歳到達に伴う介護保険料の取扱い


こうした項目は、従業員の状況や制度の改定に応じて適切に反映する必要があります。

もし控除額に誤りがあれば、会社と従業員の間で精算が必要になることもあります。

給与計算の間違いは、必ずしも支給不足だけとは限りません。

払い過ぎも、控除し過ぎも、経営上の管理リスクです。

担当者が優秀でも、会社の給与計算が正しいとは限りません

ここは、経営者の皆様に特に考えていただきたい部分です。

給与計算の誤りが見つかったとき、担当者の能力不足だと考えてしまうことがあります。

しかし、私は必ずしもそうだとは思いません。

給与計算担当者は、毎月の締切に追われながら、勤怠集計、入退社情報の反映、各種手当の確認、控除処理、

振込データ作成など、多くの業務を処理しています。

その中で、過去から引き継がれた給与計算方法が法令に適合しているか、就業規則と給与ソフトの設定が一致

しているかまで、毎月確認することは容易ではありません。

特に注意したいのが、次のような会社です。

「給与計算は、勤続15年のベテラン社員に全部任せている」

この状況自体が悪いわけではありません。

問題なのは、その担当者以外、誰も計算方法を説明できない状態になっていることです。

担当者が退職したらどうなるでしょうか。

急に長期休職することになったらどうなるでしょうか。

誤った設定を長年引き継いでいた場合、誰が気づくのでしょうか。

給与計算を特定の担当者の経験と記憶だけに依存させることは、会社にとって大きな業務継続リスクになります。

給与計算の健康診断は、担当者の仕事ぶりを批判するためのものではありません。

会社として給与計算の正確性を検証できる仕組みがあるか、確認するためのものです。

社長、給与計算の健康診断を始めるなら、まずこの5つを確認してください

私は、経営者の皆様に、まず次の5点を自社の給与担当者へ確認していただきたいと考えています。

経営者向け・給与計算セルフチェック

当社の残業単価は、どの賃金項目を使って計算していますか?

月平均所定労働時間数は何時間で、その根拠は何ですか?

勤怠の端数処理は、どのような方法で行っていますか?

給与ソフトの設定と最新の賃金規程は一致していますか?

給与担当者以外の人が、計算内容を検証できますか?

確認できた項目

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確認できない項目がある場合は、そこから点検を始めましょう。未確認というだけで、直ちに計算が誤っているわけではありません。

この5つに、担当者が資料を示しながら説明できるでしょうか。

もし明確に説明できない項目があれば、それは給与計算の点検を始めるきっかけになります。

経営者自身が給与計算の細かい計算式をすべて理解する必要はありません。

しかし、会社が毎月従業員へ支払っている給与について、その計算根拠を説明できる体制にしておくことは、経営管理の一つです。

給与計算の健康診断は、経費削減にもつながる可能性があります

給与計算の健康診断というと、未払残業代などの法令違反を発見するためのものと思われがちです。

もちろん、それは重要な目的です。

しかし、点検する意味はそれだけではありません。

例えば、本来支給条件を満たさなくなった手当が、見直されずに支給され続けているかもしれません。

社会保険料の控除設定に誤りがあり、精算を要する状態になっているかもしれません。

また、給与計算担当者が毎月何時間も手作業で集計している業務について、勤怠システムや給与ソフトの設定を見直すことで、作業時間を削減できる可能性もあります。

給与計算の健康診断は、間違い探しだけではなく、

「適正に払えているか」「無駄な処理をしていないか」「将来も安定して運用できるか」

という3つの観点から見直す機会にもなるのです。

健康診断で異常がなければ、それでいいのです

従業員には毎年健康診断を受けてもらっている会社が多いと思います。

健康診断は、病気が見つかることを期待して受けるものではありません。

異常がなければ、それで安心できます。

もし異常が見つかれば、早期に対応することができます。

私は、給与計算についても同じだと考えています。

給与計算の健康診断をした結果、何も問題がなければ、それは会社にとって大きな安心材料になります。

反対に、何らかの問題が見つかった場合でも、従業員から指摘を受けたり、労働基準監督署の調査を受けたりする前に、自社で改善に着手できます。

「今まで何も問題が起きていないから大丈夫」ではなく、「実際に点検して問題がないことを確認したから大丈夫」。

この違いは、経営者にとって非常に大きいのではないでしょうか。

秋山社会保険労務士事務所では、給与計算のセカンドオピニオン・労務健康診断のご相談を承っています

給与計算を現在の担当者や委託先に任せている場合でも、第三者の視点で計算方法や運用状況を確認することには意味があります。

秋山社会保険労務士事務所では、給与計算の実務経験を踏まえ、給与計算のセカンドオピニオンや労務管理全般の点検についてご相談を承っています。

例えば、

  • 現在の給与計算方法が正しいか、一度専門家に確認してもらいたい

  • 給与計算ソフトの設定に間違いがないか不安がある

  • 給与計算担当者の負担や属人化を解消したい

  • 固定残業代や各種手当の計算方法を見直したい

  • 社内の給与計算を外部に委託すべきか検討している

  • 就業規則や賃金規程と実際の給与計算が一致しているか確認したい

最後に、経営者の皆様へ

給与計算は、会社の中で毎月必ず発生する業務です。

そして、一度計算方法を間違えると、その誤りが翌月も、その次の月も繰り返される可能性があります。

従業員が10人であっても、30人であっても、100人であっても、給与計算の正確性は会社の信頼に直結します。

考えてみてください。

毎月何百万円、何千万円という給与を支払っているのに、その計算方法が正しいかどうかを、何年間も外部の

専門家に確認してもらったことがない。

これは、決して珍しい話ではありません。

しかし、会社の決算は税理士に確認してもらい、従業員の身体は健康診断で確認しているのであれば、給与計算に

ついても、一度くらい専門家の点検を受けてみてもよいのではないでしょうか。

従業員から未払賃金を指摘されてから調査するのと、何も起きていない段階で自社から点検するのとでは、

経営判断の選択肢も変わってきます。

給与計算を一度丸ごと健康診断してみませんか?

今の給与計算が正しいと確認できれば、それは安心につながります。

もし改善点が見つかれば、会社の将来のリスクを減らすきっかけになります。


対応地域:全国対応

主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府

対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問

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