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【労務】昔からつけている「手当」を廃止したい。来月から支給なしでOKですか?

2026年08月31日 08:05

給与計算や賃金規程を確認していると、ときどき出てくるのが、「何のために払っているのか、会社もよく分かって

いない手当」です。例えば「作業手当」。

賃金規程を見ると、「工場で作業する従業員に作業手当を支給する」と書いてあります。

ところが賃金台帳を確認すると、工場で働く従業員だけではありません。

事務職にもついている。営業職にもついている。工場作業をしていない従業員にも、なぜか毎月一律10,000円の作業

手当がついています。

社長に聞いても、「昔から全員についてるんです」「事務員も営業も工場作業なんかしてません」

「何のためにつけた手当なのか、私も知りません」という状態。

これでは「作業手当」という名前と、実際の支給状況がまったく合っていません。

そこで社長としては、「こんな意味の分からない手当なら廃止したい。来月から支給なしでいいですか?」

となるわけです。気持ちはよく分かります。

しかし、ここで賃金規程から「作業手当」の条文を削除して、翌月の給与から10,000円を引けば終わり、とは限り

ません。

「謎手当の廃止」でも、従業員から見れば賃下げです

例えば、基本給 220,000円・作業手当 10,000円・合計 230,000円を毎月支給していた従業員がいるとします。

会社としては、「何のためか分からない作業手当を整理しただけ」という認識かもしれません。

しかし従業員から見れば、毎月230,000円だった給与が220,000円になる。

年間なら12万円の減額です。つまり、手当の名前が「作業手当」であろうが「調整手当」であろうが、長年毎月支給

してきた賃金をなくせば、労働条件の不利益変更になる可能性が高いわけです。

労働契約法では、使用者が労働者との合意なく就業規則を変更し、労働者に不利益な労働条件へ変更することは原則

としてできません。

例外的に就業規則の変更によって労働条件を変更する場合でも、労働者が受ける不利益の程度、変更の必要性、変更

後の内容の相当性、労働組合等との交渉状況などを踏まえ、変更が合理的なものであることが求められます。

ですから、「賃金規程には工場作業者に支給すると書いてある。事務職や営業職には本来払わなくていいはずだから、

来月からカットします」と単純には考えられません。

「規程と違って払っていたんだから、規程どおりに戻すだけ」でも危ない

ここも注意してください。社長からすると、「そもそも賃金規程には工場作業者に支給すると書いてあるんですよ。

事務員や営業に払っていた方がおかしいんでしょう?」と思うかもしれません。

確かに、賃金規程と実際の給与計算が食い違っている状態は問題です。

しかし、それが10年、20年と続き、事務職や営業職にも毎月当然のように支給されてきたのであれば、

「規程と違っていたから来月からゼロ」で片づけられるとは限りません。

なぜ支給されるようになったのか。採用時にどのような給与として説明していたのか。

雇用契約書にはどう記載されているのか。過去に基本給を抑える代わりとして手当をつけた経緯はないか。

こうした事情まで確認する必要があります。昔の給与担当者が適当につけたのかもしれません。

過去の賃金改定で基本給の代わりにつけたのかもしれません。かつては全従業員が何らかの工場作業をしていたの

かもしれません。経緯によって、対応も変わります。

就業規則の「作業手当」の一行を消せば終わりではありません

謎手当を廃止したいとき、「賃金規程の作業手当の条文を削除してください」というご相談を受けることがあります。

しかし、本当に難しいのは条文を消す作業ではありません。

その変更が法的・実務的に問題なく行えるのかを検討することです。

例えば、手当廃止の必要性はどこにあるのか・従業員はいくら不利益を受けるのか・全額廃止する必要があるのか
・基本給への組込みはできないのか・経過措置を設ける必要はないか・従業員へどのように説明するのか・個別同意を

取るのか・賃金規程をどのように改訂するのかなどを考えなければなりません。

就業規則による不利益変更については、単に「会社に必要だから」というだけではなく、不利益の程度や変更の必要性、内容の相当性、労使との交渉状況など諸事情を総合的に見て合理性が判断されます。

だからこそ、賃金を下げる方向の就業規則改訂は慎重に行う必要があります。

手当をなくす方法は「翌月からゼロ」だけではありません

そもそも会社の目的が、「意味不明な作業手当という項目をなくして、給与体系を分かりやすくしたい」

ということであれば、必ずしも従業員の給与を下げる必要はありません。

例えば、基本給220,000円・作業手当10,000円を、基本給230,000円に整理する方法も考えられます。

これなら「作業手当」という謎の項目はなくなりますが、従業員の月給総額は変わりません。

一方、「人件費そのものを見直したい」「現在の仕事内容を考えると、この手当を支給し続ける合理性がない」

ということであれば、手当の減額や廃止を検討することになります。

その場合は、なおさら慎重な制度設計が必要です。「手当の名称を整理したい」のか、「給与そのものを下げたい

」のか。まず会社の目的を明確にすることが重要です。

手当を廃止すると、給与計算にも影響します

さらに、賃金規程だけ直せば終わりではありません。

作業手当が残業代の算定基礎に入っているなら、手当を変更することで残業単価にも影響します。

固定的に支給されている手当を廃止すれば、社会保険の随時改定、いわゆる月額変更の確認が必要になる場合もあります。手当廃止後の給与額によっては、最低賃金の確認も必要です。

つまり、賃金規程を改訂した。給与ソフトから作業手当を消した。はい終了。

ではありません。就業規則・賃金規程、雇用契約書、給与計算、残業単価、最低賃金、社会保険までつながっています。

昔からの「謎手当」、自己判断で消す前にご相談ください

御社の給与明細にもありませんか?「作業手当なのに事務員にも営業にもついている」

「調整手当だけど、何を調整しているのか誰も知らない」「昔から払っているので、そのままにしている」

「賃金規程と実際の支給対象が違う」こうした手当は、一度整理した方がよいでしょう。

しかし、「意味が分からないから来月から廃止」という進め方はおすすめできません。

毎月支給してきた手当の廃止は、労働条件の不利益変更となる可能性があります。

そして、不利益変更を伴う就業規則・賃金規程の改訂は、単に条文を書き換えるだけの仕事ではありません。

これまでの支給経緯を確認し、従業員の不利益の程度を確認し、会社側の変更の必要性を整理し、変更方法や説明方法

まで考える必要があります。「この手当をなくしたい。でも、どう改訂すればよいのか分からない」

そんなときこそ、社会保険労務士にご相談ください。


秋山社会保険労務士事務所では、現在の賃金規程と実際の給与計算を確認したうえで、手当の整理、就業規則・賃金規程の改訂、雇用契約書の見直し、給与計算まで一連でサポートしています。

昔から続いている謎手当。来月から勝手に消してしまう前に、一度整理してみませんか。




対応地域:全国対応

主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府

対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問

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