【労務】社長!自分の会社の「月平均所定労働時間」を分かっていますか?
2026年07月30日 08:17
給与計算ソフトに、毎月同じ数字が設定されている。
前任の担当者から引き継いだ数字を、そのまま使っている。
しかし、その数字が何を根拠に計算されたものなのか、社内の誰も説明できない。
そんな会社は、決して珍しくありません。
給与計算では、「月平均所定労働時間」という数字が重要になります。
この数字を間違えると、残業代だけでなく、最低賃金の確認や固定残業代の設定など、
給与計算のさまざまな部分に影響する可能性があります。
月平均所定労働時間とは?
月平均所定労働時間とは、会社が定めた年間の所定労働時間を、12か月で割って算出した時間数です。
例えば、次のような会社を考えてみます。
1日の所定労働時間:8時間
年間所定労働日数:240日
この場合の年間所定労働時間は、
8時間 × 240日 = 1,920時間
となります。
これを12か月で割ると、
1,920時間 ÷ 12か月 = 160時間
この会社の月平均所定労働時間は、160時間となります。
ただし、実際の計算では、会社の年間休日、所定休日、1日の所定労働時間などを正確に確認
しなければなりません。
カレンダーや就業規則の内容が変われば、月平均所定労働時間も変わる可能性があります。
なぜ月平均所定労働時間が重要なのか
月平均所定労働時間は、月給制の従業員について、1時間当たりの賃金額を算出するときに使用されます。
厚生労働省も、月給制の割増賃金について、月給額を「1年間における1か月平均所定労働時間数」で割り、
1時間当たりの賃金額を求める方法を示しています。
つまり、この時間数を間違えていると、残業代の計算に使用する時間単価も間違ってしまう可能性があります。
月平均所定労働時間を間違えると何が起きる?
1.残業代の単価が間違う
月給制の従業員の残業代を計算する場合、まず月給を時間単価に換算します。
例えば、残業代の計算基礎となる賃金が月額24万円の場合、月平均所定労働時間が160時間なら、
24万円 ÷ 160時間 = 1,500円
となります。
一方、本来160時間で計算すべきところを、誤って173時間で設定していた場合は、
24万円 ÷ 173時間 = 約1,387円
となります。
この差額が毎月の残業時間に反映されるため、長期間放置すると未払い残業代が積み上がる
おそれがあります。
従業員が複数いる会社では、1人当たりの差額が小さくても、会社全体では大きな金額になる
ことがあります。
2.最低賃金を下回っていることに気づけない
月給制の従業員が最低賃金以上になっているかを確認する場合も、月給を1か月平均所定労働
時間で割って時間額に換算します。
厚生労働省は、月給制の場合について、次の方法で最低賃金と比較すると案内しています。
月給 ÷ 1か月平均所定労働時間≧ 最低賃金額
したがって、月平均所定労働時間の設定が間違っていると、最低賃金の確認結果まで間違える
可能性があります。
基本給を最低賃金ギリギリに設定している会社は、特に注意が必要です。
単純に総支給額を労働時間で割ればよいわけではありません。
3.固定残業代の設定が崩れる
固定残業代を導入している会社では、
固定残業代はいくらか
何時間分に相当するのか
通常の賃金部分と固定残業代部分が区別されているか
実際の残業代が固定残業代を超えた場合に差額を支払っているか
などを確認する必要があります。
月平均所定労働時間が間違っていれば、1時間当たりの賃金単価も変わります。
その結果、「月5万円で30時間分」と設定していたはずが、実際には30時間分を満たして
いないという問題が起こる可能性があります。
固定残業代は、金額だけを給与明細に記載して終わりではありません。
計算根拠まで確認しておく必要があります。
4.欠勤・遅刻・早退控除の計算が社内ルールと合わない
欠勤や遅刻、早退があった場合の控除方法は、会社の賃金規程や給与規程に基づいて処理します。
ところが、実際の現場では、
就業規則には計算式が書かれていない
給与計算ソフトの初期設定のまま
欠勤控除と遅刻早退控除で異なる単価を使っている
担当者によって計算方法が違う
退職した前任者しか計算根拠を知らない
といったケースがあります。
大切なのは、会社の規程と実際の給与計算方法を一致させることです。
給与計算ソフトが自動で計算してくれていても、その設定が正しいとは限りません。
月平均所定労働時間は、すべての会社で共通の数字ではありません。
1日の所定労働時間、年間休日、会社カレンダーなどによって異なります。
会社ごとに計算しなければならない数字です。
就業規則と会社カレンダーは一致していますか?
月平均所定労働時間を確認する際は、給与計算ソフトだけを見ても分かりません。
少なくとも、次の資料を確認する必要があります。
就業規則
賃金規程
雇用契約書
年間休日カレンダー
勤怠の締日
給与の締日と支払日
給与計算ソフトの設定
固定残業代の計算根拠
例えば、就業規則では土曜日を休日としているのに、年間カレンダーでは出勤日になっている
場合があります。
また、年間休日数を変更したにもかかわらず、給与計算ソフトの月平均所定労働時間を変更
していないケースもあります。
このようなズレは、給与計算担当者が毎月丁寧に計算していても発見できないことがあります。
設定された数字を前提として計算しているからです。
給与計算は「入力作業」ではありません
給与計算というと、「勤怠を入力して、給与ソフトの計算ボタンを押す作業」と思われる
ことがあります。
しかし、実際にはそうではありません。
給与計算には、
労働時間の集計
残業、休日労働、深夜労働の判定
欠勤、遅刻、早退の控除
固定残業代との差額確認
最低賃金の確認
社会保険料の変更
雇用保険料の計算
所得税の計算
入退社や休職、育児休業への対応
など、労働法・社会保険・税務に関係する複数の確認作業があります。
給与ソフトは、入力された設定に従って計算します。
設定そのものが間違っていれば、毎月正確に同じ間違いを繰り返します。
これが給与計算の怖いところです。
給与計算を一度点検してみませんか?
毎月給与を支払えているからといって、計算方法が正しいとは限りません。
特に、次のような会社は一度確認することをおすすめします。
月平均所定労働時間の計算根拠が分からない
給与ソフトを導入時の設定のまま使用している
年間休日を変更した
就業規則を長期間見直していない
固定残業代を導入している
最低賃金に近い従業員がいる
欠勤控除や遅刻早退控除の計算式が曖昧
給与計算を特定の担当者だけが行っている
担当者が退職すると給与計算が止まってしまう
給与計算に毎月多くの時間を取られている
給与計算の間違いは、従業員から指摘されて初めて発覚することも少なくありません。
一度失った給与への信頼を取り戻すのは簡単ではありません。
給与計算の代行・設定確認も承ります
秋山社会保険労務士事務所では、会社ごとの就業規則、賃金規程、雇用契約書、年間カレンダー
などを確認したうえで、給与計算を行っています。
単に給与ソフトへ数字を入力するだけではなく、
月平均所定労働時間の確認
残業代単価の確認
固定残業代の確認
欠勤・遅刻・早退控除の確認
最低賃金の確認
社会保険料・雇用保険料の変更
入退社や育児休業などの手続きとの連携
まで含め、会社の給与計算を継続的にサポートします。
「今の給与計算が合っているか分からない」
「担当者の負担を減らしたい」
「給与計算を安心して任せられる専門家を探している」
という会社様は、お気軽にご相談ください。
給与計算の方法を見直すことは、単なる事務作業の効率化ではありません。
未払い賃金の防止と、従業員から信頼される会社づくりにつながります。
対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問