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【労務】本当に固定残業代、必要ですか?――使っていない「30時間分」の人件費と社会保険料が経営を圧迫していませんか

2026年08月23日 18:32

給与計算をしていると、気になる賃金設計を見かけることがあります。

実際の残業時間を確認すると、今月は6時間、先月は8時間、多い月でも10時間程度・・・。

それなのに、給与明細を見ると、毎月30時間分の固定残業代を支払っている。

もちろん、固定残業代という制度そのものが悪いわけではありません。

しかし、会社の実際の残業時間が大きく減っているにもかかわらず、何年も前に設定した30時間分、

40時間分の固定残業代をそのまま払い続けているのであれば、一度立ち止まって考えてみてもよい

のではないでしょうか。御社、本当にその固定残業代が必要ですか?

固定残業代は「払っておけば得をする制度」ではありません

固定残業代とは、一定時間分の時間外労働等に対する割増賃金を、あらかじめ固定額として支給する

仕組みです。

例えば、基本給 250,000円・固定残業代 60,000円(30時間分)というような設計です。

実際の残業時間が10時間しかなかったからといって、「20時間余ったので今月は固定残業代を減らします」

というものではありません。

30時間分として毎月60,000円を支給すると定めているのであれば、原則として残業が少ない月でもその

固定額を支給します。

一方で、実際の時間外労働等に対する割増賃金額が固定残業代を超えれば、超過した部分について追加支給が

必要になります。

つまり固定残業代は、残業が少なければ会社が得をして、多ければ労働者が得をする制度ではありません。

会社にとっては、毎月発生する固定的な人件費の一部です。

月10時間も残業していないのに「30時間分」。なぜでしょうか?

私が給与計算を確認していて気になるのは、この部分です。

毎月の残業時間は5時間から10時間程度。それなのに、固定残業代は30時間分。

なぜ30時間なのでしょうか。

制度を導入した当時は、毎月20時間、30時間の残業があったのかもしれません。

しかし、その後、

  • 業務を効率化した

  • 人員配置を見直した

  • システムを導入した

  • 長時間労働を削減した

  • 仕事内容そのものが変わった

ことによって、現在ではほとんど残業が発生していない会社もあります。

それでも賃金制度だけが昔のまま。残業時間は減ったのに、30時間分の固定残業代だけが残り続けている。

こうした状態になっていないでしょうか。

必要性の薄い固定残業代は、人件費を固定的に膨らませます

例えば、従業員10人に対して1人あたり月50,000円の固定残業代を設定しているとします。

単純計算すると、50,000円 × 10人 × 12か月=年間600万円です。

もちろん、固定残業代をなくせば600万円すべてがそのまま会社の利益になる、という意味ではありません。

既存社員の賃金を一方的に引き下げることはできませんし、制度変更には慎重な検討が必要です。

しかし経営者として一度考えてほしいのです。

実際には毎月10時間も残業していないのに、「30時間分の固定残業代」という賃金設計を今後も維持し

続ける必要があるのでしょうか。

給与制度は、一度作れば永久にそのままでよいものではありません。

会社の業務実態が変われば、賃金制度も定期的に見直す必要があります。

人件費だけではありません。社会保険料にも影響します

さらに見落とされやすいのが、社会保険料です。

固定残業代も労働の対償として支給される賃金ですので、原則として社会保険の標準報酬月額を

決める際の「報酬」に含まれます。

つまり、固定残業代によって毎月の報酬額が高くなれば、標準報酬月額の等級によっては、

  • 健康保険料

  • 厚生年金保険料

  • 介護保険料

などの負担にも影響します。しかも社会保険料には会社負担分があります。

必要性の薄い固定残業代を何年も払い続ければ、固定残業代そのものの人件費だけではなく、

それに伴う社会保険料の会社負担まで含めて固定費が膨らむ可能性があります。

「人件費が高い」の原因、本当に社員数だけでしょうか?

経営相談では、「人件費が高くて利益が残らない」「社会保険料が重い」という話がよく出ます。

しかし、そのとき確認したいのが、今の賃金制度そのものが会社の実態に合っているかです。

残業時間は減っている。

ところが固定残業代は昔のまま。

その結果、人件費は高止まりする。社会保険料にも影響する。会社の固定費が下がらない。

利益が圧迫される。それにもかかわらず、「最近、人件費が高いな」とだけ考えていても、根本的な

改善にはつながりません。

社員の給与を単純に下げる話ではなく、そもそもの賃金設計が今の会社に合っているのかを確認する

ことが重要です。

「求人の月給を高く見せるため」の固定残業代になっていませんか?

固定残業代を設定している会社の中には、「求人票の月給を高く見せたい」という理由で導入している

ケースもあります。

例えば、月給300,000円と書いてあっても、内訳を見ると、

基本給 230,000円・固定残業代 70,000円となっている。

当然、適切に明示しているのであれば固定残業代を含めた給与設定そのものが直ちに問題になるわけでは

ありません。

しかし現在の求職者は、給与総額だけではなく、基本給はいくらなのか何時間分の固定残業代が含まれているのか

まで確認しています。

会社としては「月給30万円」に見せたい。ところが求職者からは、「基本給23万円で、しかも30時間や40時間の

固定残業代付きか」と見られている可能性もあります。

採用難の時代に、昔ながらの固定残業代制度が逆に求人上のマイナスになっていないか。

この視点も必要です。

固定残業代を払っていても、勤怠管理は必要です

これもよくある誤解です。

「30時間分の固定残業代を払っているから、30時間までは残業時間を計算しなくてもいい」

ということにはなりません。

実際の労働時間を把握しなければ、固定残業代で不足していないかが分からないからです。

30時間分の固定残業代を支給していても、実際の割増賃金計算額がそれを超えれば、超過分を追加支給しなけれ

ばなりません。

したがって、固定残業代を導入しても、勤怠管理も給与計算も必要です。

「給与計算を楽にするために導入した」つもりが、結局は毎月実労働時間を確認して差額計算をしなければならない。

それなら、本当に固定残業代を採用するメリットがあるのかも考える必要があります。

「○○手当に残業代を含んでいます」は大丈夫ですか?

固定残業代を運用する場合には、通常の賃金部分と固定残業代部分が明確に区分されていることが重要です。

例えば、「営業手当50,000円の中に残業代も含まれています」「役職手当を払っているので残業代はありません」

という説明だけでは、内容を精査する必要があります。固定残業代を設定するのであれば、

  • 固定残業代はいくらなのか

  • 何時間分なのか

  • どの割増賃金に対応しているのか

  • 超過した場合はどう支給するのか

を明確にしておく必要があります。

せっかく毎月固定残業代を支払っているのに、設計や運用を誤っていれば、別途未払い賃金が発生する可能性まで

あります。

30時間分を払っているから「30時間働いてもらわないと損」ではありません

会社によっては、「30時間分の残業代を払っているのだから、30時間までは残業してもらわないと損だ」

という発想になってしまうことがあります。

しかし、固定残業代は、30時間残業させる権利を会社が購入する制度ではありません。

必要のない残業は減らすべきです。30時間分の固定残業代を払っているから30時間働かせる。

これでは制度のために残業を作ることになり、本末転倒です。

会社として考えるべきなのは、固定残業代を使い切ることではなく、不要な残業を減らし、生産性を高めること

ではないでしょうか。

では固定残業代をなくせばいいのか?

ここで、「それなら来月から固定残業代をやめよう」と考える会社もあるかもしれません。

しかし、これは慎重に行う必要があります。

例えば、基本給250,000円・固定残業代50,000円だった人について、

来月から固定残業代をなくして、基本給250,000円だけにする。

これでは月給が50,000円下がります。

賃金は重要な労働条件ですので、会社が簡単に一方的に引き下げてよいものではありません。

固定残業代を廃止・縮小するのであれば、

  • 現在の給与総額をどうするのか

  • 基本給へ組み替えるのか

  • 他の手当とのバランスをどうするのか

  • 実際に残業が発生した場合の計算をどうするのか

  • 既存社員と新規採用者をどうするのか

  • 就業規則・賃金規程をどう変更するのか

  • 雇用契約書・労働条件通知書をどう変更するのか

まで含めて検討する必要があります。

基本給へ組み替える場合も、給与計算まで確認を

例えば、

基本給250,000円・固定残業代50,000円を、基本給300,000円固定残業代なしに変更したとします。

月給総額だけを見れば同じ300,000円です。

しかし基本給など通常の賃金部分が増えれば、その後に時間外労働が発生した場合の割増賃金単価にも

影響する可能性があります。したがって、「総額が同じだから大丈夫」ではありません。

制度変更後に実際の残業代がいくらになるのか。

会社全体の年間人件費はどう変わるのか。

社会保険料の会社負担はどうなるのか。

ここまでシミュレーションして初めて、賃金制度の見直しになります。

「昔からこうしている」で人件費を払い続けていませんか?

給与計算を確認していて、「なぜ固定残業代は30時間なんですか?」と聞くと、「昔からそうなんです」

という回答が返ってくることがあります。

しかし、昔そうだったことと、現在その制度が適切であることは別問題です。

社員数も変わります。業務内容も変わります。残業時間も変わります。

採用環境も変わります。最低賃金も社会保険料も変わります。

会社の状況は変わっているのに、賃金制度だけが10年前、15年前のまま。

その結果、必要性の薄い人件費や社会保険料負担が積み重なり、知らないうちに経営を圧迫している。

そんなことになっていないでしょうか。

固定残業代は「違法かどうか」だけを見る制度ではありません

固定残業代については、

「適法ですか?」「何時間までなら大丈夫ですか?」という相談が多くなりがちです。

しかし経営者が本当に考えるべきなのは、それだけではありません。

適法に運用できているか。そして、そもそも御社に必要なのか。

この2つは別の問題です。

毎月10時間も残業していない会社が30時間分の固定残業代を払い続けているのであれば、

その賃金設計が現在の会社の実態に合っているのか、一度検証してみてもよいでしょう。

固定残業代だけを見るのではなく、基本給、各種手当、実際の残業時間、人件費総額、社会保険料、

求人票、雇用契約書、就業規則、賃金規程、給与計算。

これらを一体として見ることが重要です。

人件費・社会保険料が重いと感じたら、給与制度そのものを確認してみませんか?

「人件費が高い」「社会保険料の負担が重い」だからといって、安易に社員の給与を下げることが解決策で

はありません。

まず確認していただきたいのは、現在の給与制度に、会社の実態と合っていない部分が残っていないか

です。

秋山社会保険労務士事務所では、単に給与計算の数字が合っているかを見るだけではなく、

現在の賃金制度が実際の勤務状況や会社経営に合っているのか

という視点から確認しています。

「実際の残業は少ないのに30時間分の固定残業代を支払っている」

「何年も固定残業時間を見直していない」

「人件費と社会保険料の負担が重くなっている」

「固定残業代を見直したいが、不利益変更にならないか不安」

「給与計算と賃金規程が本当に合っているか分からない」


このような会社様は、秋山社会保険労務士事務所の労務健康診断・給与計算セカンドオピニオンをご活用ください。

固定残業代が適法かどうかだけでなく、人件費・社会保険料まで含めて「今の会社に本当に必要な賃金制度なのか」を確認します。



対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問


秋山社会保険労務士事務所

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