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【労務】なぜ人手不足倒産に至るのか③ エース社員に仕事が集中していませんか

2026年08月23日 18:34

会社の中に、「この人がいなかったら回らない」そんな社員はいませんか。

難しい仕事はその人、重要な顧客もその人、新人教育もその人、クレーム対応もその人。

他の社員がミスをすれば、その人がフォローする。

経営者から見れば、非常に頼りになるエース社員です。

しかし、そのエース社員に仕事を集中させ続けることは、単なる労務管理上の問題ではありません。

場合によっては、会社の収益力そのものを失わせ、人手不足倒産につながる経営リスクになります。

仕事ができる社員ほど仕事が増えていませんか

社員によって能力差があるのは当然です。

仕事が早い人・顧客対応が上手な人・専門知識が豊富な人・トラブル対応が得意な人。

会社として、能力の高い社員に重要な仕事を任せること自体は間違っていません。

問題は、「あの人に任せておけば大丈夫」が常態化することです。

新人教育を任せる。他人のミスをフォローさせる。急な欠勤の穴を埋めてもらう。

面倒な顧客を担当させる。クレームがあれば対応してもらう。

さらに通常業務まで大量に抱えている。こうしてエース社員の仕事だけが増えていきます。

一方、仕事が十分にできない社員には、「任せると余計に時間がかかるから」

と簡単な仕事しか与えない。

その結果、仕事ができる社員ほど忙しく、仕事ができない社員ほど負担が軽い会社が出来上がります。

「期待している」は処遇ではありません

会社はエース社員に対して、「頼りにしている」「期待している」「君がいないと困る」と言います。

しかし、それだけでは社員の処遇にはなりません。

仕事量は他の社員より多い。責任も重い。新人教育まで担当する。

クレーム処理もする。残業も増える。それなのに給与はほとんど変わらない。

これでは、仕事ができることが罰ゲームになってしまいます。

頑張れば昇給する会社ではなく、頑張れば仕事が増える会社になっていないでしょうか。

そんな状態を何年も続ければ、エース社員が会社を見限っても不思議ではありません。

本当に怖いのは、エース社員が辞めた後です

エース社員が一人辞める。

会社は、「一人減ったから、一人採用すればいい」と考えるかもしれません。

しかし、そんな単純な話ではありません。

エース社員が担当していた顧客対応・商品やサービスについての知識・現場で蓄積したノウハウ。

新人への教育・他の社員へのフォロー・トラブル対応。

こうしたものまで一緒に会社から失われます。結果として何が起きるでしょうか。

問い合わせへの対応が遅くなる・ミスが増える・納期が遅れる・クレームへの対応力が落ちる。

新人が育たない・顧客への提案力も落ちる。

つまり、会社の商品・サービスのクオリティそのものが低下します。

サービスクオリティが落ちれば、人件費を商品価格に上乗せできません

ここが重要です。

最低賃金は上がります。

採用するためには給与水準も上げなければなりません。社会保険料など会社が負担する人件費もあります。

人手不足の時代に、会社の人件費負担が増えていくこと自体は避けにくいでしょう。

では、その増えた人件費をどこから捻出するのでしょうか。

本来は、商品やサービスの付加価値を高め、価格へ適切に転嫁していく必要があります。

ところが、エース社員が辞めてサービスクオリティが落ちている会社ではどうでしょう。

以前よりミスが多い。納期も遅い。担当者の知識も浅い。顧客対応も悪くなった。

それなのに、「人件費が上がったので値上げします」と顧客に言って、納得してもらえるでしょうか。

むしろ、「サービスが悪くなったのに値段まで上がるのか」と思われかねません。

つまり、サービスクオリティが低下すれば、人件費上昇分を商品・サービス価格へ転嫁する力まで弱くなる

のです。

人件費だけ上がり、売価を上げられない会社

すると会社には、人件費は上がる。採用コストもかかる。

教育コストもかかる。残った社員の残業代も増える。しかし商品価格は上げられない。

という状態が起こります。当然、利益率は下がります。

利益が減れば、昇給できない。賞与を出せない。教育にお金をかけられない。

設備投資もできない。新たな人材を採用できない。

そして、残った優秀な社員にもさらに仕事が集中する。

その社員まで辞める。さらにサービスクオリティが下がる。

さらに価格転嫁できなくなる。こうして会社は悪循環に入っていきます。

人手不足倒産は「求人に人が来なかったから」だけではありません

人手不足倒産という言葉を聞くと、「求人を出しても応募が来なかった会社」をイメージするかもしれません。

しかし、人手不足は突然起こるものではありません。

エース社員に仕事を集中させる。負担に見合った評価をしない。

仕事のできない社員を育成しない。仕事を属人化させる。

そしてエース社員が辞める。サービスクオリティが落ちる。

人件費上昇を価格転嫁できなくなる。利益が減る。

人材への投資ができなくなる。さらに人が辞める。

そして最終的に、人がいない。商品・サービスの品質も維持できない。売価も上げられない。

利益も残らない。というところまで追い込まれる。

これが、人手不足倒産につながる一つの経営構造です。

エース社員が辞めても回る会社を作っていますか

重要なのは、「エース社員を辞めさせない」だけではありません。

その社員が休んでも、育児休業を取っても、介護休業を取っても、退職しても、

一定のサービスクオリティを維持できる会社にしておく必要があります。

そのためには、業務の棚卸し・マニュアル化・教育体制・適正な人員配置。

仕事量と給与のバランス・評価制度・役職と権限。こうしたものを整理していかなければなりません。

会社の競争力を「一人のすごい社員」に依存させてはいけません。

「エース社員が辞めたら困る」と思った会社は、すでに点検が必要です

一度考えてみてください。

御社で最も仕事のできる社員が、明日退職すると言ったらどうなりますか。

顧客対応は維持できますか。新人教育はできますか。納期は守れますか。

今と同じサービスクオリティを維持できますか。その状態で、人件費上昇分を商品価格へ転嫁できますか。

もし、「かなり厳しい」と思ったのであれば、それはすでに労務問題ではなく経営課題です。

秋山社会保険労務士事務所では、就業規則を見るだけではなく、労働時間、賃金、雇用契約、給与計算、

業務分担、実際の社内運用まで確認する労務健康診断を行っています。

また、最低賃金、残業代、各種手当など給与計算に不安がある会社には、給与計算セカンドオピニオン

対応しています。

人手不足になってから求人広告にお金を使い続ける前に。

エース社員から退職届を出される前に。

御社の利益を生み出している人材と、その人材を支える労務構造を一度確認してみませんか。

秋山社会保険労務士事務所までご相談ください。



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