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【労務】キャリアアップ助成金目的で採用した社員が11か月で退職。その採用、本当に会社のためでしたか?

2026年08月23日 18:32

「キャリアアップ助成金が使えるから、人を採用しよう」そんな採用になっていませんか?

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を後押しする、会社にとって

有益な制度です。

しかし、実務の現場では、ときどき「助成金を活用すること」が目的になってしまっている

会社を見かけます。


本来は、

会社に必要な人材を採用する

育成する

長く働いてもらいたいと判断する

正社員化する

その結果、利用できる助成金があれば活用する
という順番ではないでしょうか。


ところが、

「助成金がもらえる」

「それなら人を採ろう」
となれば、採用そのものの判断が歪んでしまう可能性があります。

助成金を見込んで採用した社員が、11か月で退職

例えば、キャリアアップ助成金の活用を見込んで人を採用したものの、その社員が入社から11か月で

退職したとします。「助成金につながらなかった。残念だった」

これだけで話を終わらせてはいけません。会社にとって、もっと大きな問題があります。

その社員に11か月間支払い続けた人件費です。

仮に月給20万円だったとしましょう。

給与だけでも、20万円×11か月=220万円です。

しかし、会社の負担は220万円だけではありません。

会社負担の社会保険料や労働保険料、通勤手当などもあります。

さらに、

  • 求人広告などの採用コスト

  • 面接に費やした時間

  • 入社手続の事務コスト

  • 給与計算の事務コスト

  • 新入社員を教育した既存社員の人件費

  • 上司や同僚がフォローした時間

  • 退職後に再び人を募集する採用コスト

なども発生します。

つまり会社は、数十万円の助成金を期待する一方で、その何倍ものコストを先に負担しているわけです。

その11か月分の人件費、経営を圧迫していませんでしたか?

ここで、さらに考えていただきたいことがあります。

その社員に支払った11か月分の人件費は、会社にとって無理のない負担だったでしょうか。

例えば、人手不足だから採用したものの、「思ったほど仕事を任せられない」

「既存社員のフォローが必要」「一人で仕事を完結できない」「売上や生産性の向上につながっていない」

という状態だったとします。

その状態で毎月給与を支払い続ければ、人件費は当然、会社の利益や資金繰りを圧迫します。

特に小さな会社では、社員一人分の人件費が経営に与える影響は決して小さくありません。

重要なのは、「その社員にいくら払ったか」だけではありません。

「その人件費に見合う仕事や付加価値を会社にもたらしていたか」まで見る必要があります。

11か月後に退職した社員について、「助成金が取れなくて損をした」と考える前に、

「この11か月間の人件費は、会社の経営にとって適切な投資だったのか」を検証する必要があります。

数十万円を得るために、数百万円を使っていませんか?

助成金は魅力的です。しかし、助成金の金額だけを見てはいけません。

仮に数十万円の助成金が受給できる可能性があったとしても、そのために数百万円規模の人件費を

負担することになります。

もちろん、会社に必要な人材であり、将来的に戦力となるのであれば問題ありません。

人件費は単なる「経費」ではなく、会社の成長のための投資だからです。

しかし、「助成金が出るから採った」という人材が十分に戦力化せず、11か月後に退職したのであれば

どうでしょうか。

会社には人材が残らない。それまで支払った人件費は戻ってこない。

教育に使った時間も戻ってこない。そして、再び求人を出し、新しい社員を一から教育しなければならない。

これでは、助成金を活用した経営というより、助成金に経営判断を引っ張られた採用になってしまいます。

「助成金がなかったとしても、その人を採用しましたか?」

助成金を利用する前に、経営者に一度考えていただきたい質問があります。

「その助成金が一円もなかったとしても、その人を採用しましたか?」

答えが「もちろん採用した」であれば、助成金を活用する意味は大いにあるでしょう。

しかし、「助成金があるから採用した」「助成金があるから多少能力が足りなくても採った」

「助成金があるから予定より一人多く採った」のであれば注意が必要です。

採用判断は、本来、会社にどのような仕事があり、どのような人材が必要で、その人件費を会社が

継続して負担できるのかから考えるものです。

助成金ありきではありません。

正社員化まで「助成金の予定表」で決めていませんか?

同じ問題は正社員化にもあります。

本来、正社員へ転換するかどうかは、

業務遂行能力、勤務態度、責任感、周囲との協調性、会社との適性、将来的に任せたい業務、本人の意思

などを総合的に見て判断するべきものです。

ところが助成金ありきになると、「そろそろ助成金のために正社員にしないと」という発想になってしまう

ことがあります。これは順番が逆です。

助成金のスケジュールが、会社の人事評価制度になってはいけません。

無理な正社員化は、既存社員まで辞めさせる

さらに深刻なのは、既存社員への影響です。

例えば、まだ十分な仕事を任せられない社員を正社員化し、長年会社を支えてきた社員と近い給与水準に

したとします。

既存社員からすれば、「自分は何年も働いて仕事を覚えてきたのに、なぜ入ったばかりの人と給料が

ほとんど変わらないのか」という不満が生まれても不思議ではありません。

その結果、会社のエース社員が退職したらどうでしょう。

新人を一人採用するために、会社にとって本当に必要な社員を失う。

エース社員が辞めれば、残った社員の仕事量が増える。

サービスや製品の品質が低下する。

顧客満足度が落ちる。

そして売上まで低迷する。

数十万円の助成金どころの損失ではありません。

助成金は「採用する理由」ではなく「後押しする制度」

キャリアアップ助成金そのものが悪いわけではありません。

適切に活用すれば、企業の正社員化や処遇改善を支援してくれる有益な制度です。

問題なのは、助成金が会社の採用・人事判断の中心になってしまうことです。

会社に必要な人材を考える。その人材に任せる仕事を考える。会社が負担できる人件費を考える。

教育方法を考える。評価基準を考える。長く働いてもらえる環境を整える。

そのうえで、「この正社員化なら助成金も活用できる」と考える。

この順番ではないでしょうか。

11か月で辞めた理由まで検証してください

そして、社員が11か月で退職したのであれば、「合わなかったから仕方ない」で終わらせてはいけません。

なぜ辞めたのか。採用時の条件に問題はなかったか。仕事内容と求人内容は一致していたか。

教育体制は整っていたか。給与は仕事内容に合っていたか。上司との関係はどうだったか。

仕事が特定の社員に集中していなかったか。評価や昇給の基準は明確だったか。

会社側に改善すべき問題はなかったか。

ここまで振り返らなければ、次に採用した社員も同じように辞める可能性があります。

採用しては辞める。また採用する。また教育する。そしてまた辞める。

この繰り返しこそが、会社の利益を少しずつ削っていきます。

人が辞める会社には「辞める構造」があります

「最近の若い人はすぐ辞める」「いい人が来ない」「募集しても定着しない」そう片付けるのは簡単です。

しかし、人が繰り返し辞める会社には、人が辞めやすくなる労務上の構造が存在していることがあります。

採用・労働条件・賃金設計・教育・評価・就業規則・勤怠管理・給与計算。

これらはすべてつながっています。

助成金だけを切り離して考えても、人材定着の問題は解決しません。

秋山社会保険労務士事務所の「労務健康診断」

秋山社会保険労務士事務所では、単に就業規則があるか、法律違反があるかだけを見るのではなく、

「なぜ人が辞めるのか」「なぜ人を採用しても戦力化できないのか」
「なぜ人件費が経営を圧迫しているのか」「なぜ既存社員に不満がたまるのか」

といった会社の労務構造まで確認する労務健康診断を行っています。

求人・採用、労働条件、賃金設計、就業規則、勤怠管理、給与計算、実際の社内運用などを確認し、

会社の中に潜んでいる問題を整理します。

また、「給与計算が本当に正しいのか確認したい」「手当や残業代の計算方法に不安がある」

「給与制度が複雑になりすぎている」といった会社向けに、給与計算セカンドオピニオンも行っています。

助成金を受給することだけが、会社の利益ではありません。

必要な人を採用し、適切に育成し、長く働いてもらい、その人件費以上の価値を会社にもたらしてもらう。

その結果として活用できる助成金があれば、活用する。

キャリアアップ助成金を検討するときこそ、「助成金はいくらもらえるのか」ではなく、「この採用は本当に

会社の利益につながるのか」から考えてみてはいかがでしょうか。


対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問


秋山社会保険労務士事務所

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