【労務】なぜ「人手不足倒産」に至るのか②従業員との約束、守っていますか?
2026年08月23日 18:35
「求人を出しても応募が来ない」「採用しても、すぐに辞めてしまう」「最近の若い人は長続きしない」
「人が足りなくて現場が回らない」人手不足に悩んでいる会社は少なくありません。
もちろん、少子高齢化や採用競争の激化など、会社だけでは解決できない要因もあります。
しかし、「今は人手不足の時代だから仕方がない」と考える前に、一度確認していただきたいことがあります。
会社は、従業員との約束をきちんと守っていますか?
求人票には、「年次有給休暇を取得しやすい環境です」「育児と仕事を両立できます」「アットホームな職場です」
と書いている。
ところが実際に入社すると、有給休暇は取りにくい。育児休業を取ったら嫌な顔をされ、処遇まで悪くなる。
アットホームどころかパワーハラスメントが横行している。
そんな会社に、まともな感覚を持った人が、「この会社で10年、20年働きたい」と思うでしょうか。
求人票は単なる広告ではありません。
求職者から見れば、会社から示される最初の約束です。
その最初の約束を会社自身が破れば、会社と従業員との信頼関係は入社直後から崩れ始めます。
「年次有給休暇を取得しやすい環境です」――本当に取れますか?
求人票に、「年次有給休暇を取得しやすい職場です」と書いている会社は珍しくありません。
では、本当に取得しやすいでしょうか。
従業員が有給休暇を申請した途端、「その日に休むの?」「今忙しいの分かってるよね?」
「ほかの社員はそんなに取ってないよ」と嫌な顔をする。有給休暇を取るたびに理由を細かく聞く。
休む社員が周囲に申し訳なさそうに謝らなければならない。有給休暇を頻繁に取る社員を、暗黙の
うちに低く評価する。こんな状態になっていないでしょうか。
求人票では、「有給休暇を取得しやすい職場」と書いていた。
ところが入社後は、「有給休暇を申請すること自体がストレスになる職場」だった。
従業員からすれば、「聞いていた話と違う」となるのは当然です。
「育児と仕事を両立できます」――育休を取った途端に扱いが変わっていませんか?
採用ページなどで、「子育て世代活躍中」「育児と仕事を両立できる職場」「育児休業取得実績あり」
などをアピールする会社も増えています。
それ自体は良いことです。
しかし問題は、実際に従業員が制度を利用したときの会社の対応です。
育児休業を申し出た途端、「こんな忙しいときに休むの?」「周りに迷惑がかかるよ」
「復帰しても以前と同じ仕事は任せられない」などと言っていないでしょうか。
育児休業等の申出や取得などを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。
制度だけ立派に作っても、実際に利用した社員が不利益を受けるのであれば、制度が機能しているとは
いえません。
「子育てと仕事を両立できます」と求人票に書くのであれば、本当に安心して育児休業などを利用できる環境を作る。
そこまでやって初めて、会社は従業員との約束を守っていると言えるのではないでしょうか。
「アットホームな職場です」――実際はパワハラが横行していませんか?
求人票で昔からよく見かける言葉があります。「アットホームな職場です」
ところが入社してみると、上司が部下を怒鳴る。みんなの前で人格を否定する。気に入らない社員を無視する。
ミスをした社員を必要以上に追い込む。相談しても、「昔からこの会社はこうだから」で終わる。
これでは「アットホーム」と言われても、従業員は納得しないでしょう。
職場におけるパワーハラスメント防止のため、必要な雇用管理上の措置を講じることは事業主の義務と
なっており、中小企業にも2022年4月から適用されています。
それ以前に、パワハラが横行する会社で、優秀な人材が長く働きたいと思うでしょうか。
「風通しの良い会社です」「社員同士の距離が近いです」「何でも相談できます」求人票に何を書くかより、
実際の職場がそうなっているか。こちらの方がはるかに重要です。
求人票は「人を集めるための宣伝文句」ではありません
応募者を増やしたい。当然です。
そのため、求人票を魅力的にしたいという気持ちは分かります。
しかし、会社を実態以上によく見せて人を集めても、入社すれば実態は分かります。
現在の職業安定法上も、労働者募集に関する情報について虚偽表示や誤解を生じさせる表示は禁止され、
求人情報を正確かつ最新の内容に保つことが求められています。しかし、法律の問題だけではありません。
求職者の立場で考えてください。
求人票を見て、「ここなら働けそうだ」と思った。その会社を信じて応募した。
場合によっては、前の会社を辞めて入社した。それなのに、入社したら話が違った。
これで会社への信頼を維持する方が難しいでしょう。
一度「この会社は信用できない」と思われると厳しい
「有給休暇を取りやすいと言っていたのに違った」「育児を応援すると言っていたのに、育休を取ったら
扱いが変わった」「アットホームと言っていたのに、パワハラだらけだった」
こうしたことが積み重なると、従業員はやがて、「この会社が言うことは信用できない」
と考えるようになります。会社がどれだけ立派な経営理念を掲げても関係ありません。
朝礼で、「社員を大切にします」と話しても関係ありません。実際の行動が伴っていなければ、
「また口だけでしょう」と思われます。信頼は、就業規則を作っただけでは生まれません。
会社が日々の約束を守ることで積み上がっていくものです。
まともな人間は、そんな会社に長く勤めようと思いません
ここは経営者の方に、少し厳しく考えていただきたいところです。
求人票と実態が違う。休みづらい。育児休業を利用したら冷遇される。
パワハラが横行している。頑張っても正しく評価されない。
会社の言うことを信用できない。まともな感覚を持った人が、そんな会社に長く勤めようと思うでしょうか。
特に、仕事のできる社員。向上心のある社員。取引先から評価されている社員。
ほかの会社でも通用する社員。こうした人ほど、「ここで我慢して働き続ける必要はない」と判断できます。
そして会社を辞めます。
会社は、「また一人辞めた」と考えるかもしれません。しかし、問題はそこでは終わりません。
まともな人材が辞め続ければ、サービスクオリティが落ちます
仕事のできる社員が辞める。経験豊富な社員が辞める。新人を指導できる社員が辞める。
顧客から信頼されている社員が辞める。その人たちが持っていたノウハウは、翌日から別の社員へ簡単に
移せるものではありません。人が減ったからといって、仕事まで減るわけではありません。
残った社員に仕事が集中します。経験の浅い社員が難しい案件を担当する。
新人を十分に教育する時間がない。チェックする人がいない。
トラブルが発生しても適切に対応できる人がいない。
忙しすぎて、一件一件の仕事が雑になる。
すると、ミスが増えます。納期が遅れます。顧客対応が悪くなります。商品やサービスの品質が落ちます。
つまり、人材流出はそのまま、会社のサービスクオリティ低下につながる可能性があります。
サービスクオリティが低い会社では、売上も維持できません
顧客からすれば、「人手不足なので仕方ない」「エース社員が辞めたので仕方ない」
という会社内部の事情は関係ありません。
顧客が見るのは、支払ったお金に見合うサービスを受けられるかどうかです。
「以前より対応が遅くなった」「最近ミスが増えた」「前の担当者の方が良かった」
「問い合わせても答えが返ってこない」「サービスの質が落ちた」そう思われれば、顧客は別の会社を探します。
結果、リピーターが減る。紹介が減る。クレームが増える。既存顧客が競合他社へ流れる。
そして売上が低迷します。
つまり、
従業員との約束を守らない
↓
会社への信用を失う
↓
まともな人材・優秀な人材が辞める
↓
残った社員に仕事が集中する
↓
会社全体のサービスクオリティが低下する
↓
顧客が離れる
↓
売上が低迷する
ここまでつながっているのです。
労務問題は、単なる従業員との問題ではありません。
最終的には、会社の売上や利益に直結する経営問題です。
売上が落ちると、さらに人へ投資できなくなります
売上が低迷する。利益が減る。すると会社は経費を削り始めます。昇給を見送る。
賞与を減らす。採用費を削る。教育費を削る。必要な人員補充を行わない。
すると残っている社員の負担は、さらに大きくなります。今まで2人でやっていた仕事を1人でやる。
新人を教育する時間もない。有給休暇を取りにくくなる。残業が増える。
疲弊した社員が、「この会社にいても将来がない」と考える。そしてまた辞める。
つまり、
人材流出
↓
サービスクオリティ低下
↓
顧客離れ
↓
売上低迷
↓
人材へ投資できない
↓
さらに人材流出
という負の循環に入ります。
そして最後には、「仕事はあるのに人がいない」「人がいないから仕事を受けられない」
「サービス品質を維持できない」「売上が落ちて採用する余裕もない」
という状態になる。これが続けば、会社の存続そのものが危うくなります。
人手不足倒産は、突然起こるとは限りません
「人手不足で倒産した」という結果だけを見ると、突然、人が採れなくなって会社が倒産したように
見えるかもしれません。
しかし、その何年も前から原因が積み重なっている場合があります。
求人票と実態が違った。従業員との約束を守らなかった。休みにくい職場だった。
育児と仕事を両立しにくかった。ハラスメントを放置した。仕事のできる社員を正当に評価しなかった。
その結果、まともな社員から辞めていった。会社のサービス品質が落ちた。顧客が離れた。
売上が落ちた。人に投資できなくなった。また社員が辞めた。
そして最後に、「人手不足」という形で経営危機が表面化した。
そんな会社もあるのではないでしょうか。
「最近の若い人はすぐ辞める」で終わらせないでください
社員が辞めるたびに、「最近の若い人は根性がない」「せっかく教えたのに」
「すぐ辞めるから困る」と言う前に、一度会社側も確認してみてください。
その社員との約束を、会社は守っていましたか?求人票と実際の仕事内容は一致していましたか?
説明した給与条件と実際の給与計算は一致していましたか?
「有給休暇を取りやすい」と言いながら、休みにくい雰囲気を作っていませんでしたか?
「育児と仕事を両立できます」と言いながら、制度を利用した社員を冷遇していませんでしたか?
「アットホームな会社」と言いながら、パワハラを放置していませんでしたか?
退職した社員だけに原因を求めても、人手不足は解決しません。
求人票を書き直す前に、会社の中身を直しませんか?
人が集まらない。
そこで、「もっと魅力的な求人票にしよう」と考える。しかし、会社の中身が変わらないまま、
「アットホーム」「有給休暇を取得しやすい」「働きやすい」「子育て世代活躍中」
と書いても意味がありません。
本当に必要なのは、求人票を魅力的に見せることではありません。
求人票に堂々と書ける会社を作ることです。
「有給休暇を取得しやすい」と書きたいなら、本当に取得しやすい会社にする。
「育児と両立できる」と書きたいなら、本当に両立できる会社にする。
「風通しが良い」と書きたいなら、ハラスメントを放置しない。
それが、人を採用し、人を定着させるための本当の対策ではないでしょうか。
「うちの会社、大丈夫かな?」と思ったら――労務健康診断
ここまで読んで、「求人票と実態、本当に合っているだろうか」「就業規則はあるけど、実際の運用は大丈夫だろうか」
「社員が最近よく辞めるのには、何か理由があるのではないか」と思われた経営者の方へ。
秋山社会保険労務士事務所では、会社の労務管理を第三者の立場から点検する「労務健康診断」を行っています。
会社では従業員に健康診断を受けてもらいます。
では、会社そのものの労務管理は健康でしょうか?
労務健康診断では、例えば、
求人票と実際の労働条件にズレがないか
雇用契約書と実際の働き方が一致しているか
就業規則と現場の運用が一致しているか
年次有給休暇の管理・運用に問題がないか
育児・介護休業制度が「規程だけ」になっていないか
ハラスメント対策が実際に機能しているか
労働時間を適切に把握できているか
賃金制度に社員の不公平感を生む問題がないか
一部のエース社員だけに仕事や責任が集中していないか
将来、未払い賃金や労務トラブルにつながる問題がないか
など、会社の労務管理を総合的に確認します。
人が辞めてから原因を探すのではありません。人が辞める前に、原因になり得る問題を見つけるための点検です。
求人広告に何十万円も使う前に。エース社員が退職する前に。サービスクオリティが落ちる前に。
顧客が離れる前に。売上が低迷する前に。一度、自社の労務管理を点検してみませんか。
毎月の「給与」という約束、本当に守れていますか?――給与計算セカンドオピニオン
そして、従業員との約束の中でも、特に重要なのが給与です。
求人票では、「月給○万円」と説明している。
雇用契約書にも給与条件を書いている。就業規則・賃金規程にも計算方法を定めている。
では、実際の給与計算は、本当にその約束どおりでしょうか?
残業代の計算方法は正しいか
割増賃金の基礎に入れるべき賃金を正しく扱っているか
固定残業代を適切に運用しているか
勤怠データと給与計算が一致しているか
欠勤控除の計算方法は規程どおりか
変形労働時間制の残業計算を正しく行えているか
雇用契約書・就業規則・賃金規程と給与計算に矛盾がないか
会社としては、「ずっとこの方法で計算しているから大丈夫」と思っているかもしれません。
しかし、間違った計算方法を何年も続けていれば、未払い賃金も毎月積み上がります。
そして従業員が給与計算に疑問を持った瞬間、
「この会社は、自分が働いた分を正しく扱ってくれているのだろうか」という不信感につながります。
給与計算は、単なる事務作業ではありません。会社と従業員との約束を、毎月確認する業務でもあります。
秋山社会保険労務士事務所では、現在の給与計算を第三者の立場から確認する「給与計算セカンドオピニオン」を
行っています。給与データだけを見るのではなく、
勤怠・雇用契約書・就業規則・賃金規程との整合性まで確認することが重要です。
「給与計算ソフトを使っているから大丈夫」「経理担当者が長年やっているから大丈夫」
「今まで社員から何も言われていないから大丈夫」本当にそうでしょうか。
問題が何年分も積み上がってから発覚する前に、一度確認してみませんか?
「人が来ない」のではなく、「人が残りたくない会社」になっていませんか?
求人票は、求職者との最初の約束です。雇用契約書は、入社するときの約束です。
就業規則は、会社で働くための約束です。そして給与計算は、毎月繰り返される約束です。
会社がその約束を守らなければ、従業員から信用されなくなります。
信用されない会社には、まともな人材・優秀な人材ほど長く残りません。
人材が辞めれば、サービスクオリティが落ちます。サービスクオリティが落ちれば、顧客が離れます。
顧客が離れれば、売上が低迷します。売上が落ちれば、人へ投資できなくなります。
そしてさらに人が辞める。その悪循環の先に、人手不足倒産があります。
人手不足だからと、また求人を出す前に。求人票をさらに魅力的に書き直す前に。
一度、会社の中身そのものを確認してみませんか?
会社全体の労務管理を点検したい会社は、秋山社会保険労務士事務所の「労務健康診断」へ。
現在の給与計算・残業代計算が本当に正しいのか確認したい会社は、「給与計算セカンドオピニオン」へ。
「うちは大丈夫だと思う」ではなく、
「本当に大丈夫なのか」を第三者の目で確認するためのサービスです。
問題が起きてから対応するより、
問題が小さいうちに発見し、改善する方が会社の負担は小さくなります。
人が辞める前に。会社のサービスクオリティが落ちる前に。顧客が離れる前に。売上が低迷する前に。
秋山社会保険労務士事務所の「労務健康診断」「給与計算セカンドオピニオン」で、自社の労務管理を一度点検
してみませんか?
従業員との約束を守れる会社を作ること。
それが、人が長く働きたいと思える会社を作り、サービス品質を守り、会社の売上を守ることにつながります。
対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問
秋山社会保険労務士事務所