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【労務】基本給を低くして手当を増やす会社が危ない理由

2026年08月23日 18:33

従業員の給与を決める際、

「基本給は低めに設定して、職務手当や調整手当などを上乗せし、総支給額を整えよう」

と考える会社があります。

例えば、月給30万円を支給する場合でも、次のような設計が考えられます。

  • 基本給30万円

  • 基本給20万円+職務手当5万円+調整手当5万円

どちらも総支給額は30万円です。

しかし、基本給を低くし、手当の割合を大きくする賃金設計には、会社側にもさまざまな

デメリットがあります。

1.従業員から「給与を低く見せている」と思われやすい

従業員は、総支給額だけでなく基本給の金額も見ています。

求人票に「月給30万円」と書かれていても、実際には基本給が18万円で、残りが複数の手当という

内容であれば、

「賞与を低く抑えるためではないか」「手当を外して給与を下げるつもりではないか」
「退職金も少なくなるのではないか」と不信感を持たれる可能性があります。

特に最近は、求職者が給与の内訳まで細かく確認する傾向があります。基本給が極端に低い賃金設計は、

採用競争でも不利になりかねません。

2.賞与や退職金が少なくなることがある

会社の賞与規程に、「基本給の2か月分を支給する」

と定めている場合、基本給が低ければ賞与額も少なくなります。

例えば、総支給額が同じ30万円でも、賞与を基本給の2か月分とすると、

  • 基本給30万円の場合:賞与60万円

  • 基本給20万円の場合:賞与40万円

となります。

退職金についても、基本給を基礎として計算する制度であれば、受け取る退職金が少なくなる

可能性があります。

会社としては人件費を抑えられるように見えますが、従業員の定着率や仕事への意欲を低下させる

原因にもなります。

3.手当にすれば残業代が安くなるとは限らない

ここは特に注意が必要です。

割増賃金の計算から除外できるのは、家族手当、通勤手当、住宅手当など、法律で定められた一部の

賃金に限られます。

職務手当、役職手当、資格手当、調整手当などは、原則として残業代を計算する際の基礎賃金に含まれます。

単に「手当」という名前を付けただけで、残業単価から外せるわけではありません。

また、家族手当や住宅手当という名称であっても、家族数や住宅費に関係なく全従業員へ一律に支給

している場合などは、割増賃金の計算から除外できないことがあります。

本来含めるべき手当を除外して残業代を計算していると、未払い残業代が発生するおそれがあります。

4.社会保険料の節約にもならない

基本給を低くして手当を増やしても、原則として社会保険料が安くなるわけではありません。

健康保険や厚生年金保険の標準報酬月額には、基本給だけでなく、役職手当、通勤手当、残業手当など、

労働の対価として継続的に支給される各種手当も含まれます。

そのため、

「基本給を下げて職務手当に振り替えれば、社会保険料を抑えられる」

という考え方は基本的に通用しません。

給与の名称を変えただけでは、社会保険上の報酬額は変わらないのです。

5.会社の都合で簡単に手当を廃止できるわけではない

会社によっては、

「業績が悪くなったら、調整手当をなくせばよい」

と考えることがあります。

しかし、毎月継続して支給され、雇用契約書や就業規則、賃金規程に定められている手当は、

従業員にとって労働条件の一部です。

会社の判断だけで一方的に減額・廃止すると、不利益変更としてトラブルになる可能性があります。

名称を「調整手当」や「特別手当」としていても、会社が自由に取り外せるとは限りません。

手当を廃止・減額できる条件を規程に書いていたとしても、その内容や運用方法に合理性がなければ、

当然に有効になるわけではありません。

6.最低賃金の計算で除外される手当がある

最低賃金を満たしているか確認するときも、総支給額だけを見てはいけません。

通勤手当、家族手当、精皆勤手当、時間外勤務手当などは、最低賃金の計算から除外されます。

そのため、総支給額では最低賃金を上回っているように見えても、対象となる賃金だけで計算

すると最低賃金を下回っているケースがあります。

最低賃金に近い給与水準の会社ほど、基本給と手当の内訳を慎重に確認する必要があります。

7.正社員とパート社員との待遇差を説明しにくくなる

正社員には各種手当を支給し、パート・有期契約社員には支給していない会社もあります。

しかし、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当などに不合理な待遇差を

設けることは禁止されています。待遇差がある場合、会社はその理由を説明できるようにして

おかなければなりません。

手当の種類を増やし過ぎると、

「なぜ正社員だけに支給するのか」「この手当は何の対価なのか」「同じ仕事をするパートには、

なぜ支給されないのか」

という説明が難しくなります。

手当を設ける場合は、名称だけでなく、支給目的、対象者、支給条件を明確にすることが大切です。

8.給与計算が複雑になり、ミスが増える

手当の種類が増えるほど、給与計算も複雑になります。

特に注意が必要なのは、

  • 割増賃金の計算に含める手当

  • 最低賃金の計算に含める手当

  • 社会保険の報酬に含める手当

  • 欠勤控除の対象となる手当

  • 休職中や有給休暇取得時にも支給する手当

などの取扱いです。

それぞれの法律上の扱いが同じとは限りません。

賃金規程に支給条件が書かれておらず、担当者の判断だけで処理していると、従業員ごとに取扱いが

異なったり、未払い賃金が発生したりする原因になります。

手当を設けること自体が悪いわけではない

職務内容、役職、資格、勤務場所などに応じて、合理的な手当を設けること自体に問題はありません。

問題となるのは、

  • 基本給を不自然に低く設定している

  • 手当の支給目的が分からない

  • 支給・不支給の基準が決まっていない

  • 手当を残業代の計算から誤って除外している

  • 会社が自由に手当を廃止できると思っている

といったケースです。

賃金制度は、単に総支給額を合わせればよいものではありません。

基本給と手当のバランス、賞与・退職金との関係、残業代の計算方法、最低賃金、社会保険、

従業員への説明のしやすさまで考えて設計する必要があります。

秋山社会保険労務士事務所では、給与体系の見直し、賃金規程の作成・改訂、残業代計算の確認などに

対応しています。

現在の給与体系に不安がある会社様は、お気軽にご相談ください。


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