【障害年金】働いていると障害年金は受給できない?
2026年07月28日 08:22
「会社で働いているから、障害年金は受給できない」
「収入がある人は、障害年金を申請しても不支給になる」
「障害年金を受給したら、仕事を辞めなければならない」
このように思っていませんか。
結論からいうと、働いているという理由だけで、障害年金を受給できなくなるわけではありません。
障害年金は、仕事をしているかどうかだけでなく、病気やけがによって日常生活や労働にどの程度の
制限が生じているかを審査する制度です。
そのため、会社員、パート、アルバイトとして働いている方や、障害者雇用、就労継続支援などを
利用している方でも、障害の状態によっては障害年金を受給できる可能性があります。
ただし、特に精神障害や知的障害などでは、就労している事実だけでなく、仕事内容、勤務状況、
職場で受けている援助や配慮なども認定に影響します。
今回は、働きながら障害年金を申請する場合のポイントについて解説します。
働いていても障害年金は申請できます
障害年金には、「働いている人は請求できない」という要件はありません。
障害基礎年金の場合は、初診日、保険料納付要件、障害の程度などの要件を満たす必要があります。
障害厚生年金についても、厚生年金加入中に初診日があり、保険料納付要件と障害の程度の要件を
満たすことが基本です。日本年金機構が示す受給要件にも、就労していないことは支給要件として
掲げられていません。
したがって、
正社員として在籍している
短時間勤務をしている
パートやアルバイトとして働いている
障害者雇用で勤務している
就労継続支援A型やB型を利用している
休職中である
復職に向けて訓練している
という方でも、障害年金を請求することはできます。
大切なのは、「働いているか、働いていないか」という二者択一ではなく、どのような状態で働いている
のかという点です。
障害年金は「働けるか」だけで決まる制度ではありません
障害年金では、障害の種類に応じた認定基準に基づき、日常生活や労働への影響が審査されます。
日本年金機構は、視覚、聴覚、肢体、精神、神経系統、呼吸器、心疾患、腎疾患など、障害の種類ごとに
認定基準を定めています。
例えば、精神障害の場合には、
一人で食事を準備できるか
清潔を保てるか
金銭や服薬を管理できるか
通院や外出ができるか
他人と適切に意思疎通できるか
状況に応じて判断し、行動できるか
社会生活を安定して送れるか
など、日常生活能力も重要になります。
一方、肢体障害や内部障害などでは、検査数値、身体機能、日常生活動作、治療状況、労働能力などが
確認されます。
仕事をしているという一つの事実だけで、障害の状態すべてを判断することはできません。
働いている場合は、就労の「中身」が確認されます
特に精神障害や知的障害の認定では、就労している場合であっても、仕事の種類や内容、就労状況、
職場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを確認し、日常生活能力を判断する
こととされています。
したがって、「週5日勤務している」「給与を受け取っている」という表面的な情報だけでなく、
実際の勤務状況が重要です。
例えば、次のような事情が確認されます。
一般雇用か障害者雇用か
正社員か短時間勤務か
1日、1週間に何時間働いているか
どのような仕事を担当しているか
業務内容を限定してもらっているか
上司や同僚から援助を受けているか
一人で判断して仕事を進められるか
遅刻、早退、欠勤が多くないか
病気を理由に休職したことがあるか
仕事を終えた後や休日にどのような状態になるか
家族の援助を受けて通勤や勤務を続けていないか
同じ「働いている人」でも、一般の従業員と同じ条件で安定して勤務している人と、多くの配慮や援助を
受けながら何とか勤務を続けている人では、実態が異なります。
職場で受けている配慮を具体的に整理する
働きながら障害年金を申請する場合は、職場で受けている配慮を具体的に整理することが大切です。
例えば、
1日8時間から4時間勤務に短縮してもらっている
残業や休日出勤を免除されている
接客業務や電話対応を外してもらっている
単純作業だけを担当している
業務量やノルマを軽減してもらっている
通院日に休暇を取得している
体調が悪いときは休憩室を利用している
上司が作業手順を毎回確認している
ミスがないか同僚に確認してもらっている
配置転換によって負担の少ない部署に勤務している
家族に起こしてもらい、服薬や出勤準備を手伝ってもらっている
といった事情です。
本人にとっては、それが日常になっているため、「特別な配慮を受けている」という認識がないこともあります。
しかし、その配慮がなければ働き続けることが難しいのであれば、障害状態を判断するうえで重要な情報になります。
一般雇用と障害者雇用ではどう違うのか
障害者雇用で働いていることだけで、障害年金の受給が決まるわけではありません。
障害者雇用であっても、実際には一般雇用に近い勤務をしている場合もあれば、勤務時間、業務内容、
作業速度、対人対応などについて大きな配慮を受けている場合もあります。
反対に、一般雇用で働いていても、会社が病気を理解し、非公式に多くの配慮をしているケースがあります。
したがって、雇用区分の名称だけでなく、
実際に担当している業務
求められている仕事の水準
周囲から受けている援助
勤務の安定性
職場でのコミュニケーション
配慮がなくなった場合に勤務を続けられるか
などを整理する必要があります。
収入があると障害年金は停止されるのか
原則として、一般的な障害基礎年金や障害厚生年金には、給与収入があるという理由だけで直ちに支給が
停止される仕組みはありません。
老齢厚生年金の在職老齢年金のように、給与額に応じて一般的に障害年金が減額される制度ではありません。
ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある障害基礎年金には、本人所得による
支給制限があります。
また、収入そのものによる停止とは別に、働き方や就労状況が障害状態を判断する資料となり、更新時の
等級変更や支給停止に影響する可能性はあります。
「収入があるから受給できない」のではなく、所得制限がある特定のケースと、障害状態の審査に就労状況が
使われるケースを分けて考える必要があります。
仕事を始めたら、すぐに障害年金が止まるのか
障害年金を受給している方が仕事を始めても、それだけで翌月から自動的に支給が停止されるわけではありません。
ただし、障害状態確認届の提出などによる更新時には、現在の症状、日常生活、就労状況などが改めて確認されます。
就職後に症状が改善し、職場の援助をほとんど必要とせず、安定して働けるようになった場合には、等級が変更されたり、障害等級に該当しないとして支給停止になったりする可能性があります。
一方で、就職していても、引き続き日常生活に大きな制限があり、多くの援助や配慮を受けながら働いている場合には、障害年金が継続する可能性があります。
大切なのは、就職したという事実だけではなく、就職後の実際の障害状態です。
診察時に就労状況を医師へ伝える
働きながら障害年金を申請する場合、診察時に就労状況を医師へ正確に伝えることが重要です。
診断書には就労状況を記載する欄がありますが、医師が実際の勤務状況や職場での配慮を詳しく把握していない
ことがあります。
診察では、単に「働いています」と伝えるだけでなく、
週に何日、何時間働いているか
どのような仕事をしているか
職場からどのような配慮を受けているか
欠勤、遅刻、早退がどの程度あるか
仕事中にどのような症状が出るか
帰宅後や休日はどのように過ごしているか
家族からどのような援助を受けているか
まで具体的に伝える必要があります。
「先生に病気のことは分かってもらえている」と思っていても、勤務先での具体的な状況までは伝わっていない
ことがあります。
病歴・就労状況等申立書にも具体的に記載する
障害年金の請求では、病歴・就労状況等申立書を提出します。日本年金機構も、障害年金の請求手続きに
用いる書類として病歴・就労状況等申立書を案内しています。
働いている場合は、単に、
「現在、会社員として勤務している」
「週5日働いている」
と書くだけでは、実態が十分に伝わりません。
例えば、
「週5日の雇用契約で勤務しているが、月に3回程度欠勤している」
「電話対応と接客業務を免除され、書類整理のみ担当している」
「作業手順を覚えられないため、上司が毎日指示を出している」
「帰宅後は何もできず、食事、洗濯、服薬管理を家族に任せている」
など、具体的に記載することが重要です。
障害の程度を判断するうえでは、現時点の日常生活や、どの程度の労働ができるのかという情報が重要になります。
「仕事ができる」と「安定した生活ができる」は同じではありません
障害のある方のなかには、生活のすべての力を仕事に使い、帰宅後や休日はほとんど何もできないという方がいます。
決まった時間に出勤できていても、
朝は家族に何度も起こしてもらっている
食事や服薬を家族に準備してもらっている
帰宅後は着替えることもできず寝込んでいる
休日は一日中横になっている
掃除や洗濯、買い物を家族に任せている
仕事以外の対人関係を保てない
ということがあります。
職場に行けているという一場面だけを見て、「日常生活に問題がない」と判断することはできません。
障害年金の申請では、仕事中の状態だけでなく、仕事を続けるために家庭でどのような援助を受け、
生活全体がどのような状態になっているかを伝えることが大切です。
働いていることを隠して申請してはいけません
「仕事をしていると不利になるのではないか」と考え、就労している事実や収入、勤務状況を隠して
申請することは避けなければなりません。
障害年金の申請では、事実に基づいて現在の状況を正確に伝える必要があります。
大切なのは、働いていることを隠すことではありません。
働いている事実を示したうえで、
どのような仕事をしているか
どの程度の勤務ができているか
どのような配慮や援助を受けているか
病気によって何が制限されているか
を具体的に説明することです。
まとめ
働いているという理由だけで、障害年金を受給できなくなるわけではありません。
障害年金では、病気やけがによる日常生活や労働への影響が、障害の種類ごとの認定基準に基づいて審査されます。
特に働いている方については、
雇用形態
勤務時間
仕事内容
欠勤、遅刻、早退
職場から受けている援助や配慮
勤務の安定性
帰宅後や休日の状態
家族から受けている援助
などを具体的に整理することが重要です。
「正社員だから無理」
「フルタイムで働いているから申請できない」
「収入があるから障害年金は停止される」
と自己判断する必要はありません。
一方で、働いていることが認定にまったく関係しないわけでもありません。実際の就労状況は、障害の程度を
判断する重要な資料の一つです。
当事務所では、現在の勤務状況や職場で受けている配慮、家庭での生活状況などを整理し、診断書や病歴・
就労状況等申立書に障害の実態が適切に反映されるよう、障害年金の申請をサポートしています。
「働いている自分でも対象になるのか知りたい」「職場の配慮をどのように説明すればよいか分からない」
「診断書と実際の勤務状況が合っているか不安」という方は、一人で受給できないと決めつけず、お気軽に
ご相談ください。
※本記事は、障害年金制度の一般的な内容を解説したものです。実際の受給可否や障害等級は、初診日、保険料納付状況、傷病、症状、日常生活、就労状況、診断書その他の提出書類に基づいて個別に判断されます。