【障害年金】高次脳機能障害の障害年金は「精神」だけで請求するとは限りません
2026年08月06日 08:22
高次脳機能障害による障害年金は、症状の内容に応じて、使用する診断書や認定される
障害の系統が異なります。
高次脳機能障害という病名があるからといって、必ず精神の障害用診断書だけで請求する
わけではありません。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、交通事故による脳外傷などでは、認知機能の障害だけでなく、
失語症や手足の麻痺など、複数の障害が同時に残ることがあります。
そのため、実際に残っている症状を確認したうえで、主に次の三つの系統から請求方法を検討します。
1.記憶障害や遂行機能障害などは「精神の障害」
高次脳機能障害によって、次のような認知障害や人格変化が生じている場合は、主に精神の障害
として審査されます。
新しいことを覚えられない
予定や約束を何度も忘れる
集中力が続かない
作業の手順や段取りを組み立てられない
指示がなければ行動できない
感情を抑えられず、怒りやすくなった
意欲が低下し、自分から行動できない
金銭や服薬を一人で管理できない
社会的に適切な行動を取ることが難しい
このような場合には、原則として精神の障害用診断書を使用します。
高次脳機能障害は、障害年金の認定基準上、「症状性を含む器質性精神障害」に含まれます。
認定では、神経心理学的検査の結果だけでなく、日常生活にどの程度の制限があり、家族などから
どのような援助を受けているかが重要になります。
2.失語症は「音声又は言語機能の障害」
高次脳機能障害に失語症がある場合は、言語機能の障害として審査される可能性があります。
失語症では、単に言葉を発音しにくいという問題だけでなく、次のような症状が生じます。
言いたい言葉が出てこない
相手の話を理解できない
質問に適切に答えられない
文章を読んでも意味を理解できない
文字を書いて意思を伝えることが難しい
会話が成立しにくい
このような症状がある場合は、聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の
障害用診断書を使用します。
記憶障害や遂行機能障害などと失語症の両方がある場合には、精神の障害用診断書に加えて、
言語機能の障害用診断書の提出が必要になることがあります。
3.片麻痺や運動障害は「肢体の障害」
脳梗塞、脳出血、脳外傷などでは、高次脳機能障害とともに、手足の麻痺や運動機能の
障害が残ることがあります。
例えば、次のような症状です。
右半身または左半身に麻痺がある
手に力が入らず、物をつかめない
箸、ボタン、筆記などの細かい動作ができない
杖や装具がなければ歩けない
階段の昇り降りが難しい
一人で立ち上がれない
歩行時にふらつきや転倒がある
着替え、入浴、排せつに介助が必要
上肢や下肢に失調や不随意運動がある
このような肢体機能の障害については、肢体の障害用診断書を使用して請求を検討します。
肢体の障害は、関節の可動域や筋力だけで判断されるものではありません。
食事、着替え、入浴、歩行、立ち上がり、階段昇降などの日常生活動作を、実際に一人でどの
程度行えるかも重要になります。
複数の障害がある場合は、それぞれの診断書を検討します
高次脳機能障害の方には、認知機能障害、失語症、片麻痺などが重なって現れることがあります。
例えば、
記憶障害と右半身麻痺がある
遂行機能障害と失語症がある
感情のコントロール障害、失語症、歩行障害がある
というケースです。
この場合、一つの診断書だけですべての障害を正確に評価することはできません。
症状に応じて、
精神の障害用診断書
言語機能の障害用診断書
肢体の障害用診断書
を組み合わせて提出し、それぞれの障害について認定を受けたうえで、併合認定が行われる可能性があります。
ただし、診断書を多く提出すれば有利になるというものではありません。
どの障害が実際に存在し、どの認定基準に該当する可能性があるのかを整理したうえで、適切な診断書を
選ぶ必要があります。
高次脳機能障害の請求で重要なのは「残っている症状の全体像」です
高次脳機能障害による障害年金を検討する際は、認知機能の問題だけに目を向けてはいけません。
記憶や判断、感情などの障害
話す、聞く、読む、書くなどの言語障害
手足の麻痺や歩行などの肢体障害
のすべてを確認する必要があります。
精神の障害だけで請求した結果、失語症や肢体の障害が十分に評価されないことがないよう、
発症後に残った症状を一つずつ整理することが大切です。
高次脳機能障害の障害年金は、どの診断書を使用するかという請求方針が非常に重要です。
当事務所では、認知機能障害、失語症、肢体の麻痺などの症状を確認し、請求に必要な診断書や
提出書類を検討したうえで、障害年金の申請をサポートしています。