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年次有給休暇取得あるある

2026年07月17日 16:59

社員から「明日、年次有給休暇を取りたいです」と言われた瞬間、社内がざわつく。

「急すぎるやろ」「理由は何?」「ほかの日に変えられへんの?」

「忙しい時期に休むなんて非常識や」「うちにはそもそも年次有給休暇はない」

年次有給休暇をめぐっては、毎年のように同じやり取りが繰り返されています。

しかし、会社の“当たり前”が、法律上も当たり前とは限りません。

今回は、職場でよくある年次有給休暇の勘違いやトラブルを紹介します。

あるある1 有給休暇の理由を詳しく聞こうとする

「有給休暇を取る理由は?」「病院なら診察券やおくすり手帳を出して」「旅行で休むのは認められない」

こうした対応をしている会社があります。

しかし、年次有給休暇は、原則として利用目的を問わず取得できる休暇です。

病気の療養、旅行、家族との時間、役所の手続き、何もせず家で寝る。

基本的には、どのように使うかは労働者本人が決めることです。

会社が業務上の引継ぎや連絡先を確認することはありますが、休暇の理由を細かく聞き出し、その内容に

よって取得を認めたり認めなかったりする運用は避けるべきでしょう。

あるある2 前日申請だから自動的に却下する

「有給休暇は1か月前までに申請すること」「前日に言われても認めません」

就業規則に申請期限を設けている会社は少なくありません。

もちろん、会社が業務調整を行うため、社員に早めの申請を求めること自体は理解できます。

ただし、申請期限を過ぎたことだけを理由に、年次有給休暇を一律に認めない運用には注意が必要です。

会社には、事業の正常な運営を妨げる場合に、取得日を別の日へ変更する「時季変更権」があります。

しかし、単に「忙しい」「人手が足りない」「前日の申請だった」というだけで、当然に変更できるもの

ではありません。

個別の業務内容、代替要員の確保、繁忙の程度などを踏まえて判断する必要があります。

あるある3 忙しいから有給休暇は取れないと言う

「今月は繁忙期だから有給禁止」

「退職者が出たから、しばらく休暇は取らないで」

このような話もよくあります。

しかし、人手不足や繁忙期であることだけを理由に、年次有給休暇を全面的に禁止することはできません。

会社が時季変更権を使えるのは、労働者が指定した日に休むことで、事業の正常な運営を妨げる場合です。

しかも、年休自体を消滅させることはできず、別の日に取得できるようにする必要があります。

「忙しいからダメ」ではなく、

  • その日に休まれると具体的に何が止まるのか

  • ほかの社員による対応は本当に不可能なのか

  • 業務量や配置を事前に調整できなかったのか

まで検討する必要があります。

あるある4 退職前の有給休暇を認めない

「辞める人に有給休暇を使わせる必要はない」「引継ぎが終わるまで休ませられない」

「退職日を過ぎてから休んでもらう」退職前の年次有給休暇は、特にトラブルになりやすい場面です。

会社には時季変更権がありますが、変更できるのは雇用関係が続いている期間内に限られます。

退職日より後の日へ変更することはできないため、ほかに変更できる日がなければ、原則として労働者が

指定した日に取得させる必要があります。

引継ぎが必要であれば、退職の申出を受けた段階から、残っている年休日数を確認し、出勤日と休暇日を

早めに調整することが重要です。

退職直前になってから、

「そんなに年次有給休暇が残っているとは知らなかった」では遅いのです。

あるある5 パートには有給休暇がないと思っている

「パートだから有給休暇はありません」「週3日勤務なので対象外です」

これも根強い勘違いです。

年次有給休暇は、正社員だけの制度ではありません。

パートやアルバイトであっても、一定の要件を満たせば年次有給休暇が発生します。

週の所定労働日数が少ない人については、勤務日数に応じた比例付与となります。

雇用契約書に「有給休暇なし」と書いても、法律上の要件を満たしていれば、その記載によって年次有給休暇が

なくなるわけではありません。

「本人から何も言ってこないから付与していない」という運用も危険です。

あるある6 5日取らせたつもりが、実は足りていない

年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者について、会社には、基準日から1年以内に5日取得させる義務が

あります。2019年4月から始まっている制度ですが、現在も管理できていない会社があります。

よくあるのが、次のようなケースです。

  • 付与日ではなく暦年で管理している

  • 前年度の繰越分だけを見ている

  • 半日年休や時間単位年休の集計を間違えている

  • 退職者や育児休業者の扱いを確認していない

  • 本人が取得したと思い込んでいる

  • 管理担当者が途中で交代し、記録が分からなくなっている

12月になってから全社員の残日数を確認し、「この人、まだ2日しか取っていない」と慌てる会社もあります。

年5日の取得義務は、年末にまとめて確認するのではなく、基準日ごとに管理する必要があります。

あるある7 年次有給休暇管理簿がない

「有給休暇は給与ソフトで見られるから大丈夫」「申請書をファイルに入れている」「残日数だけExcelに書いている」

これで管理できていると思っている会社もあります。

しかし、会社には、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成する義務があります。

管理簿には、少なくとも次の事項を記録します。

  • 年次有給休暇の基準日

  • 取得した日付

  • 取得した日数

厚生労働省も、年次有給休暇管理簿を労働者ごとに作成し、保存する必要があると案内しています。

単に現在の残日数が分かるだけでは、いつ付与され、いつ取得したのかを確認できないことがあります。

年5日の取得義務を確実に管理するためにも、管理簿の整備は欠かせません。

あるある8 有給休暇を取った社員を評価で下げる

「休みが多い人は賞与を減らす」

「有給を取ったから皆勤手当はなし」

「繁忙期に休んだので評価を下げる」

このような運用にも注意が必要です。

年次有給休暇を取得したことを理由に、労働者へ不利益な取扱いをすることは、制度の趣旨に反します。

もちろん、人事評価では業績や能力、勤務態度などを評価することがあります。

しかし、年次有給休暇を取得したという事実そのものを、マイナス評価の理由にするのは問題があります。

休暇を取る権利は認めているものの、取得すれば評価が下がる。

これでは、実質的に取得を妨げているのと変わりません。

あるある9 有給休暇は会社が勝手に決められると思っている

「有給が余っているから、暇な日に使ったことにしておこう」

「年末年始の休業日は有給扱いにする」

「仕事がない日は有給を使って休んでもらう」

会社が一方的に年次有給休暇の日を決めることは、原則としてできません。

会社が取得日を指定する制度としては、年5日の時季指定や計画的付与があります。

ただし、いずれも法律上の手続きや条件があります。

特に計画的付与を行う場合は、労使協定が必要です。

会社の都合で休業させた日を、本人の同意なく後から年次有給休暇へ振り替えるような運用は避けなければなりません。

年次有給休暇の問題は「休ませるかどうか」だけではない

年次有給休暇の相談というと、

「休暇を認めるべきか」

という話に集中しがちです。

しかし、実務ではそれ以前に、

  • 付与日数が合っていない

  • 基準日が分からない

  • パートの比例付与ができていない

  • 5日の取得状況を確認していない

  • 申請方法が決まっていない

  • 管理簿が作られていない

  • 就業規則と実際の運用が違う

といった管理上の問題が多く見つかります。

社員から申請があったときだけ対応するのではなく、会社側が日頃から付与日、取得日、残日数を正確に

把握しておく必要があります。

「有給休暇でもめる会社」になる前に

年次有給休暇は、会社にとっては人員配置や業務調整に関わる問題です。

一方、社員にとっては法律で認められた大切な休暇です。

この両者を調整するためには、

「忙しいから取らせない」

「権利だから明日から全部休む」

という極端な対応ではなく、申請ルール、引継ぎ方法、取得状況の管理をあらかじめ整えておく必要があります。

特に、社員数が増えた会社や、パート・アルバイトが多い会社では、社長や担当者の記憶だけで管理することは

困難です。

当事務所では、年次有給休暇の付与日数や基準日の確認、年次有給休暇管理簿の作成、年5日取得義務の管理、

就業規則の見直しなどをサポートしています。




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