自閉スペクトラム症でも障害年金は受給できる?
2026年07月18日 10:14
自閉スペクトラム症を含む発達障害も、障害年金の対象となり得ます。
ただし、自閉スペクトラム症と診断されていれば、必ず障害年金を受給できるわけではありません。
障害年金では、診断名そのものよりも、
日常生活にどの程度の支障があるか
一人で生活するためにどの程度の支援が必要か
働くうえで、どのような配慮や援助を受けているか
といった実際の生活状況が重要になります。
自閉スペクトラム症とは
自閉スペクトラム症では、対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわり、感覚の過敏さなどが
みられることがあります。
ただし、現れ方や程度は人によって大きく異なります。
例えば、次のような困りごとが続くことがあります。
相手の表情や言葉の意図を読み取れない
曖昧な指示を理解することが難しい
急な予定変更に対応できず、混乱してしまう
音、光、においなどに強い苦痛を感じる
異常なまでの自己ルール、強いこだわりがある
複数の作業を同時に進めることができない
人間関係のトラブルを繰り返してしまう
金銭管理や行政手続きを一人で行えない
家族から声をかけられなければ、食事や入浴ができない
強い疲労や不安から、外出や出勤ができなくなる
外見からは困っているように見えなくても、本人は毎日の生活に強い負担を抱えている場合があります。
障害年金は「病名」だけでは判断されない
精神の障害による障害年金では、日常生活や社会生活にどの程度の制限があるか、継続的な支援がどの程度
必要かなどを踏まえて、障害の程度が判断されます。
そのため、
「自閉スペクトラム症と診断されたから受給できる」「症状が軽いと言われたから申請できない」
と単純に決まるものではありません。
例えば、医療機関では一人で受け答えができていても、実際の生活では家族が、
起床や就寝の声かけをしている
食事を用意している
服薬を管理している
金銭や公共料金を管理している
通院に付き添っている
職場との連絡や調整をしている
というケースがあります。
本人が何とか生活できているように見えても、実際には家族や支援者の継続的な援助によって生活が成り
立っていることがあります。
障害年金の申請では、このような支援の実態を具体的に伝えることが大切です。
発達障害の初診日は「生まれた日」とは限らない
自閉スペクトラム症は、生まれつきの特性と説明されることがあります。
そのため、
「生まれつきなら、初診日は出生日になるのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、発達障害の場合、障害年金上の初診日は、原則としてその症状について初めて医師の診療を
受けた日になります。
幼少期から特性があったとしても、初めて医療機関を受診したのが成人後であれば、その成人後の
受診日が初診日となることがあります。
一方、知的障害と発達障害では初診日の取扱いが異なることがあるため、両方の診断がある場合には
慎重な確認が必要です。
初診日は、加入していた年金制度や、受給できる障害年金の種類に関わる重要な日です。
最初に受診した医療機関が閉院している、カルテが残っていない、受診時期を覚えていないという場合には、
早めに資料を集める必要があります。
障害年金には3つの基本的な要件がある
障害年金を受給するためには、一般に次の要件を確認します。
1.初診日
障害の原因となった症状について、初めて医師の診療を受けた日を確認します。
2.障害の程度
障害認定日や請求時点において、障害年金の等級に該当する程度の生活上の制限があるかを確認します。
3.保険料納付要件
初診日の前日において、一定の保険料納付要件を満たしている必要があります。
ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合には、保険料納付要件は問われません。
「現在の症状が重いから大丈夫」と考えるのではなく、初診日や保険料の状況も早い段階で確認することが重要です。
診断書では日常生活の状態が重要になる
自閉スペクトラム症による障害年金の申請では、通常、精神の障害用の診断書を使用します。
診断書では、症状だけでなく、食事、清潔保持、金銭管理、通院や服薬、対人関係、安全保持、社会生活などに
ついて、どの程度一人で行えるかが確認されます。
ここで注意したいのが、本人や家族が医師に生活上の困りごとを十分に伝えられていないケースです。
診察では、
「変わりありません」「何とか働いています」「大丈夫です」と答えているものの、実際には、
家族が食事を用意しなければ食べない
入浴や着替えを何日もしないことがある
お金を計画的に使えず、家族が管理している
電車の遅延や予定変更でパニックになる
人間関係の悪化によって退職を繰り返している
休日は疲れ果てて寝たきりに近い
家族が会社へ連絡しなければならないことがある
という状態かもしれません。
診察室で落ち着いて話せることと、日常生活を一人で安定して送れることは同じではありません。
診断書を依頼する前に、家庭や職場で起きている具体的な出来事を整理して、医師へ伝えることが大切です。
病歴・就労状況等申立書も重要
障害年金の申請では、診断書だけでなく、病歴・就労状況等申立書も重要な書類です。
自閉スペクトラム症の場合は、現在の状態だけでなく、幼少期から現在までの経過を整理することがあります。
例えば、
幼少期の言葉や集団行動の状況
学校での友人関係や不登校
学習や身の回りのことへの支援
進学や就職で困ったこと
仕事が続かなかった理由
家族が行ってきた援助
現在利用している福祉サービス
職場で受けている配慮
などを、時系列に沿って具体的に記載します。
単に、
「コミュニケーションが苦手です」
「仕事が続きません」
と書くだけでは、生活への影響が伝わりにくいことがあります。
「誰に、何を、どの程度助けてもらっているのか」
「支援がなければ、どのような問題が起こるのか」
まで書くことが重要です。
「一人でできる」の意味を正確に伝える
障害年金の申請で注意したい言葉が、
「一人でできます」
という表現です。
例えば、本人が自分で食事を口に運ぶことはできても、
家族が献立を考えている
買い物や調理は家族がしている
声をかけなければ食事をしない
同じものしか食べられない
という場合があります。
この状態を、単に「食事は一人でできる」と説明すると、実際よりも自立しているように受け取られる可能性があります。
金銭管理についても同様です。
本人がレジで支払いできるとしても、
給料をすぐに使い切る
公共料金を支払えない
通信販売を繰り返してしまう
家族が通帳や現金を管理している
のであれば、安定した金銭管理が一人でできているとは限りません。
できるか、できないかの二択ではなく、助言、声かけ、見守り、代行がどの程度必要なのかを具体的に整理しましょう。
自閉スペクトラム症で申請を考えている方へ
自閉スペクトラム症による障害年金の申請では、診断名だけでなく、日常生活や就労上の困難を具体的に
伝えることが重要です。
特に、
家族の支援がなければ生活が成り立たない
対人関係や環境の変化によって仕事が続かない
働いているものの、多くの配慮を受けている
初診の医療機関や受診時期が分からない
医師に生活上の困りごとを伝えられていない
申立書に何を書けばよいか分からない
という場合は、書類を提出する前に状況を整理することが大切です。
秋山社会保険労務士事務所では、初診日の確認、医療機関への診断書依頼、日常生活状況の整理、病歴・就労状況等申立書の作成など、障害年金の請求手続きをサポートしています。
「自分の状態が障害年金の対象になるか分からない」「働いているため申請できないと思っていた」
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