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正社員だけ賞与・家族手当有り――その待遇差、10月以降も説明できますか

2026年07月19日 08:27

賞与や家族手当は正社員だけに支給している

このような会社は、決して珍しくありません。

正社員とパート・有期契約社員では雇用区分が違うため、待遇が異なるのは当然だと

考えている会社もあるでしょう。

しかし、2026年10月1日から改正される同一労働同一賃金ガイドラインでは、

賞与に関する記載が充実されるほか、家族手当や退職手当、住宅手当などに

ついても考え方が新たに示されます。

会社には、正社員とパート・有期契約社員との待遇差について、これまで以上に具体的な点検が求められます。

「正社員だから支給する」だけでは説明にならない

同一労働同一賃金とは、正社員とパート・有期契約社員の待遇を、すべて同じにしなければならない

制度ではありません。

仕事の内容、責任の程度、配置変更の範囲などに違いがあれば、その違いに応じて待遇に差を

設けることは可能です。

問題になるのは、待遇差の理由が単に、「正社員だから」「昔からそうしているから」

「パートには支給しない決まりだから」という雇用区分だけに基づくものになっている場合です。

ガイドラインは、正社員と非正規雇用労働者との間に存在する待遇差について、どのような差が

不合理となり得るのかを示すものです。ガイドラインに反する待遇差は、不合理と判断される

可能性があります。

賞与は「何のために支給しているか」が重要

賞与については、その名称だけで判断するのではなく、実際の支給目的や算定方法を確認する

必要があります。

賞与には、例えば次のような性質が含まれることがあります。

  • 会社の業績に対する貢献への対価

  • 個人の勤務成績や成果への報償

  • 長期間勤務したことに対する功労報償

  • 毎月の賃金を補う後払い的な賃金

賞与が会社への貢献や勤務成績を反映して支給されるものであるなら、パートや有期契約社員も

一定の貢献をしているにもかかわらず、一律に支給対象から外すことが合理的なのかを検討

しなければなりません。

もちろん、正社員とパート社員とで、責任の重さ、担当業務、転勤や配置転換の範囲、勤務期間などが

異なれば、それに応じて支給額や算定方法に差が生じることはあります。

しかし、その場合も会社には、「正社員にはなぜ支給するのか」「パート社員にはなぜ支給しないのか」

「支給額の差は、どのような違いを反映したものか」を説明できる状態が求められます。

単に就業規則に「賞与は正社員に支給する」と書いてあるだけでは、待遇差の合理性を説明したこと

にはなりません。

家族手当も正社員だけでよいとは限らない

今回の改正では、家族手当に関する考え方も新たに示されます。

家族手当が、扶養家族を持つ従業員の生活を支援し、継続して勤務してもらうことを目的とするもので

あれば、相応に継続的な勤務が見込まれるパート・有期契約社員についても、正社員と同じ目的が当て

はまる可能性があります。

改正内容では、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の

家族手当を支給するという考え方が示されています。

例えば、契約更新を繰り返し、すでに何年も勤務している有期契約社員について、

「有期契約だから家族手当はゼロ」とする取扱いが、本当に合理的なのかは点検が必要です。

一方で、家族手当の支給目的が長期雇用の確保にあり、実際に勤務期間や人材活用の仕組みに明確な違いが

ある場合などは、その事情を踏まえた検討が必要になります。

大切なのは、手当の名称ではなく、支給目的と実態です。

労働者から待遇差の説明を求められることもある

パートタイム・有期雇用労働法では、パート・有期契約社員から正社員との待遇差について説明を求められた場合、

会社はその内容や理由を説明しなければなりません。

2026年10月1日からは、雇入れ時の労働条件明示事項に、待遇差の内容や理由について説明を求めることができる旨が

追加されます。

また、説明方法についても、資料を使用して口頭で説明する方法のほか、必要な説明事項をすべて記載した資料を

交付する方法が示されています。

今後は、従業員から次のように質問される場面も増えるかもしれません。

「同じ仕事をしているのに、なぜ私は賞与の対象外なのですか」「長年勤務しているのに、なぜ家族手当がないのですか」

「正社員との待遇差は、何を基準に決めているのですか」

このとき、経営者や担当者によって説明内容が変わったり、就業規則と実際の取扱いが食い違ったりすると、

労使トラブルにつながりやすくなります。

まず確認したい5つのポイント

2026年10月を迎える前に、会社は少なくとも次の点を確認しておきましょう。

1.正社員だけに支給している手当はないか

賞与、退職金、家族手当、住宅手当、慶弔休暇、福利厚生などを一覧にします。

2.それぞれの待遇の目的を説明できるか

「昔からある制度」という説明では足りません。

何に対する対価なのか、どのような従業員を対象とする制度なのかを整理します。

3.正社員とパート社員の仕事や責任に実際の違いがあるか

規程上の違いだけでなく、実際の仕事内容、責任、転勤、配置転換、昇進の範囲などを確認します。

4.待遇差が実際の違いに見合っているか

仕事や責任に多少の違いがあっても、それを理由に賞与を全額不支給とすることが妥当かどうかは、別途検討が必要です。

5.従業員に説明できる資料があるか

雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、賃金規程、賞与規程などの内容が一致しているか確認します。

手当を急に廃止すればよいわけではない

待遇差に問題がありそうだからといって、正社員の賞与や家族手当を急に廃止すればよいわけではありません。

すでに支給している賃金や手当を減額・廃止することは、労働条件の不利益変更となる可能性があります。

制度を見直す場合は、変更の必要性、従業員が受ける不利益、代替措置、経過措置、労使協議の状況などを踏まえ、

慎重に進める必要があります。

同一労働同一賃金への対応は、単にパート社員へ手当を追加する作業でも、正社員の手当を削る作業でもありません。

会社の賃金制度全体を確認し、それぞれの待遇の目的と支給基準を整理する作業です。

2026年10月までに就業規則と賃金規程の確認を

今回の改正を機に確認すべきなのは、労働条件通知書のひな形だけではありません。

賞与、退職金、家族手当、住宅手当、福利厚生などについて、正社員とパート・有期契約社員の間にどのような

違いがあり、その違いを合理的に説明できるのかを点検する必要があります。

特に、

  • パート社員が正社員とほぼ同じ仕事をしている

  • 契約社員が何年も更新を続けている

  • 賞与や手当の支給目的が規程に書かれていない

  • 待遇差について説明する資料がない

  • 就業規則と実際の運用が一致していない

という会社は、早めの確認が必要です。

秋山社会保険労務士事務所では、正社員とパート・有期契約社員の待遇差を確認し、労働条件通知書、就業規則、

賃金規程、賞与や各種手当の支給基準まで一体的に見直すサポートを行っています。

2026年10月の施行直前になって慌てないためにも、現在の規程と実際の運用を、今のうちに確認しておきましょう。



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