会社がすべき、熱中症対策
2026年07月13日 11:11
暑い季節になると、屋外の建設現場や警備、配送業務などでは、熱中症への注意が必要になります。
しかし、熱中症が起こるのは屋外だけではありません。
空調が十分に効かない工場や倉庫、厨房、クリーニング工場、介護施設での入浴介助なども、
作業環境によっては熱中症の危険があります。
2025年6月1日から改正労働安全衛生規則が施行され、一定の暑い環境で作業を行わせる会社には、
熱中症の重症化を防ぐための体制整備などが義務付けられました。
「水分を取るように声をかけている」
「体調が悪ければ本人が申し出ることになっている」
これだけでは、十分な対応とはいえません。
会社は、熱中症のおそれがある人を早く見つけ、速やかに対応できる仕組みを整えておく必要があります。
どのような作業が対象になる?
義務化の対象となるのは、次の暑さと作業時間の両方に該当することが見込まれる作業です。
暑さの基準
次のいずれかに該当する場所で行う作業です。
WBGT値が28以上
気温が31度以上
作業時間の基準
さらに、次のいずれかに該当することが見込まれる作業が対象になります。
連続して1時間以上行う作業
1日当たり4時間を超えて行う作業
WBGTとは、気温だけでなく、湿度や日射、照り返しなども考慮した「暑さ指数」です。
気温がそれほど高くなくても、湿度が高い場所や、熱がこもりやすい場所ではWBGT値が
高くなることがあります。
屋内作業でも対象になることがあります
「屋内だから熱中症対策の義務は関係ない」とは限りません。
たとえば、次のような場所では注意が必要です。
空調設備のない工場
熱がこもりやすい倉庫
火を使う厨房
高温になるクリーニング工場
介護施設の浴室や脱衣所
厚手の制服や防護服を着用する作業場所
対象になるかどうかは、屋内か屋外かではなく、実際の作業場所のWBGT値や気温、
作業時間によって判断します。
会社に義務付けられた2つの対策
改正された労働安全衛生規則では、会社に大きく分けて次の2つの対応が求められています。
1.熱中症のおそれがある人を見つける体制を作る
会社は、熱中症の自覚症状がある人や、周囲から見て熱中症の疑いがある人を早く発見できるよう、
報告体制を整えなければなりません。
たとえば、次のような症状が見られた場合です。
めまいや立ちくらみがある
頭痛や吐き気がある
足元がふらついている
呼びかけへの反応がおかしい
普段と比べて動きが鈍い
大量に汗をかいている
反対に、暑いのに汗が出ていない
本人から症状の申し出があった場合だけでなく、周囲の人が異変に気付いた場合にも、
すぐに報告できる仕組みが必要です。
「体調が悪ければ上司に言うこと」と伝えるだけでなく、誰に、どのような方法で連絡するのかを
具体的に決めておきましょう。
現場責任者への電話、社内チャット、無線など、実際の職場で使いやすい方法を決めておくことが大切です。
また、単独作業では異変の発見が遅れることがあります。
定期的な声かけや巡回、複数人で確認し合う体制なども検討しましょう。
2.熱中症が疑われる場合の対応手順を決める
熱中症のおそれがある人が出た場合に、誰が、どのように対応するのかも、あらかじめ決めておく
必要があります。
基本的な対応の流れは、次のようになります。
直ちに作業を中止させる
涼しい場所へ移動させる
衣服を緩め、身体を冷やす
意識や受け答えの状態を確認する
必要に応じて救急車を要請する
医療機関を受診または搬送させる
容体が回復するまで一人にしない
事業場の緊急連絡網や、搬送先となる医療機関の連絡先、所在地なども確認しておきましょう。
熱中症は、初期症状が軽く見えても、短時間で急激に悪化することがあります。
本人が「少し休めば大丈夫」と言っていても、そのまま一人で帰宅させることは避けるべきです。
自力で水分を取れない、意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がおかしいといった場合は、
ためらわず救急車を要請する必要があります。
報告体制と対応手順は従業員への周知が必要
報告体制や対応手順は、作成しただけでは十分ではありません。
対象となる作業を行う従業員に、内容を周知する必要があります。
周知方法としては、次のようなものが考えられます。
作業場所や休憩室への掲示
朝礼やミーティングでの説明
社内メールやチャットでの通知
書面やマニュアルの配布
安全衛生教育や社内研修の実施
現場責任者だけが知っていても、最初に異変を発見する従業員が報告先を知らなければ、
対応が遅れてしまいます。
外国人従業員がいる職場では、やさしい日本語やイラスト、母国語の資料などを使い、
内容が確実に伝わるよう配慮しましょう。
水分補給だけでは十分ではありません
熱中症対策というと、水分や塩分の補給を思い浮かべる方が多いでしょう。
もちろん、水分補給は大切です。
しかし、水分を用意するだけで、会社として必要な対策がすべて終わるわけではありません。
職場では、次のような対策も検討する必要があります。
作業場所のWBGT値を測定する
WBGT値に応じて作業時間を短縮する
暑い時間帯の作業を避ける
休憩の回数を増やす
冷房の効いた休憩場所を確保する
スポットクーラーや送風機を設置する
冷却ベストや通気性のよい作業服を使用する
定期的に従業員の体調を確認する
単独作業をできるだけ避ける
体調不良を申し出やすい雰囲気を作る
特に、採用されたばかりの人や、長期間休んだ後に復帰した人など、暑さに身体が慣れていない人には
注意が必要です。
厚生労働省が2026年3月に策定したガイドラインでも、WBGT値の把握と、その値に応じた作業管理、
作業環境管理、健康管理などを行うことが示されています。
睡眠不足や持病がある人にも注意が必要
同じ作業をしていても、体調によって熱中症のリスクは変わります。
特に、次のような場合は注意が必要です。
睡眠不足
朝食を食べていない
前日に多量の飲酒をしている
発熱や下痢などの体調不良がある
糖尿病や高血圧症などの持病がある
熱中症に影響する可能性のある薬を服用している
会社は、日頃から従業員の健康状態を確認するとともに、体調が悪いときに無理をして働かなくて
よい環境を作ることが大切です。
持病などがある場合は、必要に応じて医師の意見を確認し、作業内容や作業時間を見直すことも
検討しましょう。
2026年の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」でも、WBGT値の把握、重症化防止対策の周知、
糖尿病や高血圧症などがある人への配慮が重点事項とされています。
小さな会社でも対応が必要です
今回の義務について、会社の規模による一律の除外はありません。
従業員が数人の会社であっても、対象となる暑い環境で作業を行わせる場合は、報告体制の整備や
対応手順の作成、従業員への周知が必要です。
「うちは小さな会社だから関係ない」
「これまで熱中症が起きていないから大丈夫」
このように考えるのは危険です。
事故が起きてから対応するのではなく、暑さが本格化する前に社内の体制を整えておきましょう。
対応しなかった場合の罰則
今回の熱中症対策は、会社に努力を求めるだけのものではありません。
対象となる作業があるにもかかわらず、必要な報告体制や対応手順を整備せず、関係する従業員への
周知も行わなかった場合は、労働安全衛生法違反として、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が
科される可能性があります。
また、実際に熱中症による労働災害が発生した場合には、刑事上の責任だけでなく、会社の安全配慮義務
違反として、損害賠償責任を問われる可能性もあります。
「水分補給を呼びかけていた」というだけでは、会社として十分な安全対策を行っていたとは判断
されない可能性があります。
罰則を避けるためだけではなく、従業員の命と健康を守るための安全管理として取り組むことが必要です。
会社が今すぐ確認したいチェックリスト
次の項目を確認してみましょう。
暑くなる作業場所を把握している
作業場所のWBGT値を確認できる
対象となる作業を把握している
熱中症のおそれがある場合の報告先を決めている
報告方法を従業員に伝えている
発生時の対応手順を作成している
緊急連絡先を確認している
搬送先となる医療機関を確認している
従業員に対応手順を周知している
涼しい休憩場所を確保している
定期的に体調を確認している
一人作業を減らす対策を行っている
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