2026年10月からカスハラ対策が義務化。会社が準備すべきこと
2026年07月15日 09:21
近年、顧客や取引先、施設利用者などからの著しい迷惑行為、いわゆる「カスタマーハラスメント」が
大きな労務問題になっています。
大声で怒鳴られる、長時間にわたり電話対応を求められる、人格を否定される、過度な謝罪を要求される、
SNSへの投稿をちらつかされる。
このような対応を「お客様だから仕方ない」「現場でうまく対応してほしい」と従業員任せにしている会社は、
今後注意が必要です。
2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント対策が事業主の雇用管理上の
措置義務となります。
つまり、カスハラ対策は、単なる接客マナーやクレーム対応の問題ではなく、会社が従業員の就業環境を
守るために取り組むべき労務管理上の課題になるということです。
労働施策総合推進法とは
労働施策総合推進法は、正式には「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の
充実等に関する法律」といいます。
企業の雇用管理や職場環境の整備に関わる法律で、これまでも職場におけるパワーハラスメント防止措置の
根拠法として、実務上重要な法律でした。
今回の改正により、カスタマーハラスメントについても、事業主が防止措置を講じることが義務化されます。
厚生労働省も、令和7年6月11日に公布された改正法により、カスタマーハラスメントや求職者等に対する
セクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務となり、令和8年10月1日に施行されると案内しています。
カスハラとは何か
厚生労働省の資料では、職場におけるカスタマーハラスメントについて、次の3つの要素をすべて満たすものと
されています。
1つ目は、顧客等の言動であること。
2つ目は、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を
超えたものであること。
3つ目は、それにより労働者の就業環境が害されることです。
ここでいう「顧客等」には、商品やサービスを購入するお客様だけでなく、取引先、施設利用者、今後サービスを
利用する可能性がある人なども含まれます。
そのため、飲食店や小売店だけでなく、介護、医療、福祉、運送、建設、士業事務所など、さまざまな業種で
関係してくる問題です。
すべてのクレームがカスハラになるわけではない
注意したいのは、すべてのクレームがカスハラになるわけではないという点です。
商品やサービスに問題があり、通常の範囲で説明や改善を求められることは、会社として誠実に対応すべき
正当な苦情です。
一方で、次のような行為は、カスハラに該当する可能性があります。
・長時間にわたり電話や面談を強要する
・大声で怒鳴る、威圧する
・人格を否定する発言をする
・土下座や過度な謝罪を求める
・正当な理由なく金銭や特別対応を要求する
・SNSへの投稿をちらつかせて不当な要求をする
・担当者個人を執拗に責め続ける
・職場や店舗に居座る
・従業員の個人情報を聞き出そうとする
こうした行為を従業員一人に抱え込ませると、メンタル不調、休職、退職につながるおそれがあります。
中小企業も対象になる
カスハラ対策というと、大企業や大手サービス業だけの話と思われるかもしれません。
しかし、今回の改正は、従業員を雇用する事業主に関係するものです。
小規模な会社であっても、従業員が顧客や取引先、利用者などから著しい迷惑行為を受け、就業環境が
害されるおそれがある場合には、会社として対応を考えておく必要があります。
特に中小企業では、従業員一人が退職するだけでも現場への影響は大きくなります。
「うちは小さい会社だから関係ない」
「うちは接客業だから仕方ない」
「昔からこういうものだ」
このように考えて放置してしまうと、従業員を守れない会社になってしまう可能性があります。
会社が準備すべきこと
カスハラ対策として、会社が準備しておきたいことは大きく分けて次のとおりです。
まず、会社としての基本方針を明確にすることです。
正当なご意見や苦情には誠実に対応する一方で、暴言、威圧、過度な要求、長時間拘束など、
社会通念上許容される範囲を超える言動には、組織として対応するという姿勢を示しておくことが重要です。
次に、相談・報告体制を整備することです。
現場の従業員が一人で判断し、一人で謝り、一人で抱え込む状態は危険です。
誰に報告するのか、どの段階で上司に代わるのか、どのような場合に対応を打ち切るのか、記録を
どう残すのかを決めておく必要があります。
また、対応マニュアルの作成も有効です。
たとえば、暴言があった場合、長時間の電話になった場合、来店者が退去しない場合、SNS投稿を示唆
された場合など、場面ごとの対応方法をあらかじめ決めておくと、現場が迷いにくくなります。
さらに、従業員への周知・教育も欠かせません。
カスハラを受けたときにどう対応するのか、どのように記録するのか、どこに相談するのかを従業員が
知らなければ、ルールを作っても実際には機能しません。
就業規則や服務規律との整合性も確認しておくべきです。
自社の従業員が取引先や他社の従業員に対して、カスハラに当たるような行為をしないよう、社内教育を
行うことも大切です。
施行は2026年10月1日。早めの準備が必要です
カスタマーハラスメント対策の義務化は、2026年10月1日から施行されます。
まだ先の話と思われるかもしれません。
しかし、会社の方針作成、相談窓口の整備、対応マニュアルの作成、従業員への周知、就業規則や
社内規程の確認まで行うことを考えると、直前に慌てて対応するのは現実的ではありません。
特に、介護、医療、福祉、飲食、小売、運送、建設、清掃など、顧客・利用者・取引先と接する場面が
多い会社では、今のうちから自社で起こり得るカスハラの場面を洗い出しておくことが重要です。
「お客様対応」と「従業員を守ること」は両立できる
カスハラ対策は、お客様を軽視するためのものではありません。
正当な意見や苦情には、これまでどおり誠実に対応する必要があります。
しかし、正当な苦情対応と、従業員の人格や安全を犠牲にすることは別問題です。
会社がルールを整えることは、従業員を守るだけでなく、現場が落ち着いて対応できる体制づくり
にもつながります。
人手不足の時代に、真面目に働く従業員を理不尽な対応で失うことは、会社にとって大きな損失です。
2026年10月1日の施行に向けて、カスハラ対策の基本方針、相談体制、対応マニュアル、従業員への
周知を早めに整えておくことをおすすめします。
対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問