ブログ

固定残業代を導入する際の注意点2

2026年07月02日 08:57

固定残業代の計算で見落としやすい「手当」の扱い

固定残業代を設定するときに、もう一つ注意したいのが、割増賃金の計算基礎にどの手当を含めるかです。

固定残業代は、例えば「30時間分の残業代」として金額を決めます。

しかし、その30時間分を計算するときの1時間単価が間違っていると、固定残業代の金額そのものが不足

していることになります。

つまり、

固定残業代を払っているつもりだったが、実は金額が足りていなかったということが起こります。

原則は「基本給だけ」ではなく、手当も含める

割増賃金の計算基礎は、基本給だけで考えるものではありません。

原則として、毎月支払っている各種手当も、割増賃金の計算基礎に含めて考える必要があります。

例えば、次のような手当は、原則として割増賃金の計算基礎に含めます。

役職手当
職務手当
資格手当
皆勤手当
精勤手当
能力手当
処遇改善手当
固定的に毎月支給している手当

名称が「手当」であっても、毎月の労働の対価として支給しているものは、基本的に割増賃金の基礎に

入ると考えるべきです。

ここを基本給だけで計算してしまうと、残業単価が低くなり、結果として未払い残業代が発生する

可能性があります。

割増賃金の計算基礎から除外できる手当

一方で、法律上、割増賃金の計算基礎から除外できる賃金もあります。

代表的なものは次のとおりです。

家族手当
通勤手当
別居手当
子女教育手当
住宅手当
臨時に支払われた賃金
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

ただし、ここで非常に重要なのは、名前が家族手当、通勤手当、住宅手当なら何でも除外できるわけではない

という点です。

除外できるかどうかは、手当の名称ではなく、実質で判断します。

住宅手当について、賃貸住宅の家賃や持家のローン額など、住宅に必要な費用に応じて

算定されるものが除外対象であり、費用に関係なく一律・定額で支給されるものは該当

しないと説明されています。

「一律支給」の手当は要注意

特に間違いやすいのが、家族手当・通勤手当・住宅手当を一律支給しているケースです。

例えば、

全員に住宅手当1万円を支給
扶養家族の有無に関係なく家族手当1万円を支給
通勤距離や実費に関係なく通勤手当5,000円を支給

このような場合、名称は住宅手当・家族手当・通勤手当であっても、実態としては生活補助や

給与の一部に近く割増賃金の計算基礎から除外できない可能性があります。

つまり、会社としては「住宅手当だから残業単価に入れなくていい」と思っていても、実際には

入れなければならないケースがあります。

ここを誤ると、固定残業代の設定額もズレます。

固定残業代を計算するときの確認ポイント

固定残業代を設定する場合は、次の順番で確認する必要があります。

まず、毎月支給している賃金を洗い出します。

基本給
役職手当
職務手当
資格手当
皆勤手当
調整手当
住宅手当
通勤手当
その他の手当

次に、その中から、法律上、割増賃金の計算基礎から除外できるものを確認します。

そして、除外できない手当を含めたうえで、1時間あたりの賃金単価を計算します。

その単価をもとに、

何時間分の固定残業代にするのか
その時間数に対して金額が足りているのか
超過分を別途支払う仕組みになっているのか

を確認します。

労働局の割増賃金資料でも、時間外労働が1日8時間・週40時間のいずれかを超えた場合に時間外手当が

必要であること、深夜労働の場合は法定内・時間外・休日のいずれであっても深夜手当が必要であること

が示されています。

固定残業代を入れていても、実労働時間の把握と不足分の精算は避けられません。

よくある危ない設計

実務上、次のような固定残業代の設計は危険です。

基本給だけで残業単価を計算している
役職手当や職務手当を計算基礎から外している
一律支給の住宅手当を除外している
一律支給の家族手当を除外している
毎月支給の調整手当を除外している
固定残業代の金額を昔の給与額のまま放置している
最低賃金が上がっても固定残業代を見直していない
手当を増やしたのに固定残業代を再計算していない

特に、給与改定や手当新設をしたときは注意が必要です。

基本給や手当が上がれば、割増賃金の単価も上がる可能性があります。

それにもかかわらず、固定残業代の金額を据え置いていると、固定残業代が不足することがあります。

固定残業代は「金額の根拠」を説明できることが大事

固定残業代を導入する場合、雇用契約書に、

固定残業代5万円
30時間分
超過分は別途支給

と書くだけでは不十分です。

その5万円が、どの賃金を基礎にして計算されたものなのかを説明できる状態にしておく必要があります。

つまり、

割増賃金の基礎に含める手当
除外する手当
1か月平均所定労働時間
1時間単価
固定残業時間数
固定残業代の金額

この計算過程を整理しておくことが重要です。

固定残業代は、見た目の給与額を整えるための制度ではありません。

きちんと計算し、書面に明示し、毎月の労働時間と照らし合わせて運用する制度です。

まとめ

固定残業代を導入するときは、

基本給と固定残業代を分ける。
何時間分か明示する。
超過分を別途支払う。
実際の労働時間を把握する。
割増賃金の計算基礎に含める手当を確認する。

このあたりを必ず確認する必要があります。

特に、役職手当・職務手当・資格手当・皆勤手当・調整手当などを除外して計算している

場合は注意が必要です。

また、家族手当・通勤手当・住宅手当という名称であっても、一律支給している場合には、

割増賃金の計算基礎から除外できない可能性があります。

固定残業代は、正しく設計すれば給与設計の一つとして使えます。

しかし、計算根拠があいまいなまま運用すると、未払い残業代トラブルにつながります。

当事務所では、固定残業代を含む雇用契約書、就業規則、給与計算、手当設計の確認を行っています。

「今の固定残業代の金額で足りているか不安」
「手当を割増賃金の計算に含めるべきか分からない」
「求人票や雇用契約書の固定残業代の書き方を見直したい」

という会社様は、お気軽にご相談ください。



対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問