固定残業代を導入する際の注意点
2026年07月01日 12:45
毎月の給与に、あらかじめ残業代を含めて支払いたい。
このような相談を受けることがあります。
いわゆる固定残業代やみなし残業代と呼ばれる制度です。
固定残業代は、正しく設計すれば、毎月の給与額をわかりやすくしたり、採用時に給与水準を
示しやすくしたりするメリットがあります。
しかし、運用を間違えると、あとから未払い残業代として大きなトラブルになることがあります。
今回は、固定残業代を導入・運用するときの注意点を解説します。
固定残業代とは
固定残業代とは、一定時間分の時間外労働等に対する割増賃金を、毎月あらかじめ定額で支払う制度です。
例えば、
基本給20万円
固定残業代5万円
固定残業時間30時間分
といった形です。
ここで重要なのは、固定残業代は残業代を払わなくてよくなる制度ではないという点です。
あくまで、一定時間分の残業代を先に支払っているだけです。
「固定残業代込み」とだけ書くのは危険
固定残業代で特に問題になりやすいのが、給与の中身があいまいなケースです。
例えば、
「月給25万円、固定残業代含む」
このような書き方だけでは、何円が基本給で、何円が固定残業代なのか分かりません。
また、何時間分の残業代なのかも不明です。
このような状態では、固定残業代として有効に認められず、会社としては「残業代を払っていたつもり」
でも、あとから未払い残業代を請求されるリスクがあります。
厚生労働省も、求人などで固定残業代を含める場合には、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業時間、
超過分を追加で支払うことなどを明示するよう求めています。
固定残業代で最低限押さえるべきポイント
固定残業代を導入する場合、少なくとも次の点を明確にしておく必要があります。
1つ目は、基本給と固定残業代を明確に分けることです。
「月給25万円」だけではなく、
基本給20万円
固定残業代5万円
というように、通常の賃金部分と残業代部分を区別しておく必要があります。
2つ目は、何時間分の固定残業代なのかを明示することです。
例えば、
固定残業代5万円は、時間外労働30時間分として支給するという形です。
3つ目は、固定残業時間を超えた分は別途支払うことです。
固定残業代を支払っているからといって、何時間働かせても追加の残業代が不要になるわけではありません。
30時間分の固定残業代を支払っている従業員が、実際には40時間残業した場合、超過した10時間分については
追加で割増賃金を支払う必要があります。
就業規則・雇用契約書・給与明細の整合性が重要
固定残業代は、口頭で説明しているだけでは不十分です。
就業規則、雇用契約書、労働条件通知書、給与明細で、内容がきちんと整っているかが重要です。
特に確認したいのは、次のような点です。
固定残業代の金額が明記されているか
何時間分なのか明記されているか
超過分を別途支払うと記載されているか
給与明細で基本給と固定残業代が分かれているか
実際の残業時間を毎月把握しているか
制度として書いていても、実際の運用ができていなければ危険です。
「固定残業代を払っているから勤怠管理は不要」という考え方は誤りです。
固定残業代を導入していても、実際の労働時間の把握は必要です。
固定残業時間の設定にも注意
固定残業時間を何時間に設定するかも重要です。
例えば、月45時間、60時間、80時間といった長時間の固定残業代を設定している場合、会社として
長時間労働を前提にしているように見られる可能性があります。
また、実際の働き方と合っていない固定残業時間を設定すると、従業員とのトラブルにつながります。
固定残業代は、会社にとって便利な制度ではありますが、長時間労働を正当化するための制度ではありません。
よくある危ないケース
次のようなケースは特に注意が必要です。
月給に残業代込みとだけ書いている。
固定残業代の金額が分からない。
何時間分か分からない。
超過分を支払っていない。
給与明細で基本給と固定残業代が分かれていない。
実際の残業時間を管理していない。
最低賃金を下回っている可能性がある。
求人票と雇用契約書の内容が違う。
このような状態のまま運用していると、退職時や労基署調査、従業員とのトラブルをきっかけに問題化する
ことがあります。
特に退職者から未払い残業代を請求されるケースでは、過去にさかのぼって大きな金額になることもあります。
固定残業代は「入れれば安心」ではありません
固定残業代は、制度として認められないものではありません。
しかし、導入するなら、きちんと設計し、書面に落とし込み、毎月の運用まで整える必要があります。
大切なのは、
何円が固定残業代なのか
何時間分なのか
超えた分をどう精算するのか
実際の労働時間を把握しているか
この4点です。
ここがあいまいなままでは、固定残業代を導入しているつもりでも、会社を守る制度にはなりません。
まとめ
固定残業代は、正しく使えば給与設計の一つの方法になります。
しかし、間違った運用をすると、未払い残業代トラブルの原因になります。
「昔からこの形でやっている」
「求人票に残業代込みと書いている」
「給与明細では分けていない」
「超過分を払ったことがない」
このような会社は、一度、雇用契約書・就業規則・給与明細・勤怠管理の内容を確認することをおすすめします。
固定残業代は、入れることよりも、正しく説明できる状態にしておくことが大切です。
当事務所では、固定残業代を含む雇用契約書、就業規則、給与設計、給与計算の確認を行っています。
「今の固定残業代の運用で大丈夫か不安」
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