【労務】屋内でアーク溶接作業をしている会社、溶接ヒュームの濃度測定をしていますか?
2026年08月07日 08:17
「アーク溶接の特別教育を受けさせている」
「防じんマスクも着用させている」
「工場には換気扇も設置している」
これだけで、アーク溶接作業の安全衛生対策は十分だと思っていないでしょうか。
屋内で金属アーク溶接等作業を継続して行う場合には、溶接ヒュームの濃度測定や、その結果に基づく
呼吸用保護具の選定など、さまざまな対策が必要です。
溶接ヒュームは特定化学物質です
アーク溶接を行うと、アークの熱によって溶けた金属が蒸気となり、空気中で細かい固体粒子になります。
この煙のように見えるものが「溶接ヒューム」です。
溶接ヒュームは、労働者に神経障害などの健康障害を生じさせるおそれがあることから、2021年4月1日から
特定化学物質として規制されています。
対象となる金属アーク溶接等作業には、一般的なアーク溶接だけでなく、アーク溶断やガウジング
なども含まれます。
「作業環境測定」と「溶接ヒュームの濃度測定」は別物です
ここは実務上、特に注意が必要です。
金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場について求められているのは、一般的な
作業環境測定ではありません。
作業者の身体にサンプラーなどの試料採取機器を装着し、労働者が実際に吸い込む空気中の溶接
ヒューム濃度を確認する個人ばく露測定です。
厚生労働省の資料でも、金属アーク溶接等作業については作業環境測定の実施義務はない一方、個人ばく露
測定による濃度測定が必要とされています。
したがって、単に工場内の一定地点で空気を測定すればよいわけではありません。
どのような場合に濃度測定が必要になる?
金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場では、次のような場合に溶接ヒュームの濃度測定が必要です。
新たに金属アーク溶接等作業を始める場合
溶接方法を変更する場合
溶接材料や母材を変更する場合
作業場所の変更などにより、濃度へ大きな影響が生じる場合
すでに溶接作業を行っていた事業場については、経過措置として2022年3月31日までに1回、測定することと
されていました。
つまり、毎年決まった時期に行う一般的な定期測定ではありませんが、一度測定すれば永久に終わりという
わけでもありません。
溶接方法、材料、母材、作業場所などを変更した場合は、再び測定が必要になる可能性があります。
測定結果が0.05mg/㎥以上なら改善と再測定が必要
個人ばく露測定の結果、空気中のマンガン濃度が0.05mg/㎥以上となった場合には、会社は必要な
改善措置を講じなければなりません。
たとえば、次のような対策です。
換気装置の風量を増加する
局所排気装置や集じん装置を設置する
移動式送風機を使用する
溶接方法を変更する
母材や溶接材料を変更する
溶接ヒュームの発生量を減らす
改善措置を講じた後は、再度測定を行い、濃度を確認する必要があります。
防じんマスクは何でもよいわけではありません
「防じんマスクを着用させているから大丈夫」という考え方も危険です。
継続して金属アーク溶接等作業を行う屋内作業場では、濃度測定の結果から要求防護係数を算定し、
それを上回る指定防護係数を持つ呼吸用保護具を選定する必要があります。
つまり、ホームセンターなどで購入した防じんマスクを、会社が感覚だけで選んで着用させればよい
わけではありません。
測定結果と作業内容に応じた、有効な呼吸用保護具の選定が必要です。
面体を使う場合はフィットテストも必要
面体を有する呼吸用保護具を使用させる場合は、1年以内ごとに1回、フィットテストを行う必要があります。
フィットテストとは、呼吸用保護具が作業者の顔に正しく密着し、漏れなく装着されているかを
確認するものです。
高性能なマスクを用意していても、顔との間に隙間があれば、十分な防護効果を得られません。
マスクを支給しただけで終わらず、正しく装着できているかまで確認する必要があります。
濃度測定以外にも必要な対策があります
溶接ヒューム対策は、濃度測定やマスクの選定だけではありません。
主な確認事項として、次のものがあります。
特定化学物質作業主任者の選任
金属アーク溶接等作業を行わせる場合には、屋内・屋外を問わず、技能講習修了者の中から
特定化学物質作業主任者を選任する必要があります。
作業主任者には、作業方法の決定、労働者の指揮、換気装置の点検、保護具の使用状況の監視などを行わせます。
換気設備の設置
屋内で金属アーク溶接等作業を行う場合は、全体換気装置による換気、または局所排気装置や
プッシュプル型換気装置など、これと同等以上の措置が必要です。
毎日1回以上の清掃
屋内作業場の床などは、粉じんが飛散しない方法により、毎日1回以上清掃する必要があります。
ほうきで乾いた粉じんを舞い上げるような掃除ではなく、水洗いや適切な真空掃除機などによる
方法が必要です。
特殊健康診断の実施
溶接ヒュームを取り扱う作業に常時従事する労働者については、雇入れ時、配置転換時、
その後6か月以内ごとに1回、特定化学物質健康診断を行う必要があります。
また、アーク溶接作業は粉じん作業にも該当するため、対象者にはじん肺健康診断も必要になります。
屋外作業なら何もしなくてよい?
屋外で行う金属アーク溶接等作業については、溶接ヒュームの濃度測定義務はありません。
しかし、屋外であっても有効な呼吸用保護具の使用や、特定化学物質作業主任者の選任などは必要です。
「屋外だから規制対象外」というわけではありません。
まとめ
屋内で金属アーク溶接等作業を継続して行っている会社では、次の事項を確認しましょう。
溶接ヒュームの個人ばく露測定を実施しているか
溶接方法や材料などの変更後に必要な再測定をしているか
測定結果に応じた換気改善を行っているか
有効な呼吸用保護具を選定しているか
1年以内ごとのフィットテストを行っているか
特定化学物質作業主任者を選任しているか
毎日1回以上、適切な方法で清掃しているか
特定化学物質健康診断とじん肺健康診断を実施しているか
アーク溶接の特別教育を受けさせ、防じんマスクを配布しているだけでは、十分な対策とはいえません。
対応地域:全国対応
主な対応地域:尼崎市、西宮市、大阪市、伊丹市、兵庫県、大阪府
対応方法:チャットワーク、メール、オンライン面談、電話、訪問